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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第十三章 大魔王軍戦
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なんか続く時があるよね

 思い切って言ってみる。


「とりあえず、似合ってないから眼鏡外してくれない?」

「何を言う。今の我には似合っているだろう? もし、ベスト眼鏡リストなんて表彰モノのイベントがあれば、間違いなく我が受賞、そして殿堂入りだと思わないか?」

「思いません」


 その発言……眼鏡を殴って壊してやろうか。

 だが、相手は余裕の表情だ。


「ふっ。以前までの我であれば、体も心も紙装甲であったが故に、眼鏡を外して項垂れていたかもしれない。だがしかし、今の我は断る。これは、我が更なる知力を身に付けた事の証明なのだから」


 そう思っているだけじゃないだろうか?

 どうにも怪しい。

 だって、前回もなんだかんだ自信満々だったけど、見事に打ち砕かれていたし。


「その顔……信じていないな? ならば証明しようではないか。我と勝負だ。兄弟ブラザーが勝てば、この部屋の先に行けるだけではなく、我は眼鏡を外そう」

「よし。そういう事ならさっさとやろう。……えっと、『ボーノ』」

「………………」

「どうした? 早くや」

「『ウーノ』だ」

「……ん? え?」

「だから、我の名は『ウーノ』だと言っている!」


 ………………。

 なんというか、ほら、前会った時から結構経っているからさ、ね。

 こっちはたくさんの竜と知り合ったり、遠い島行ったり、エイトたち勢揃いしたり、過去に行ったりして、慌ただしかったからさ。


 別に忘れようとして忘れた訳じゃなくて、間違えようとして間違えた訳じゃなくて……えっと……。


「なんか、ごめんなさい」

「許そう」


 許してくれるんだ。

 次からは間違えないように気を付けよう。

 ……いや、終止符を打つとか言っていたし、これで最後かもしれないのか。


 ………………。

 ………………。

 でも、今度こそ憶えておこう。

 ウーノ。ワスレナイ。


「それで、勝負内容はなんなの?」

「勝負内容は、知力を用い、身体能力……主に反射神経を使い、心を強く持たないといけないモノだ」


 ウーノが真顔でそう説明する。

 なんか、すごそうな感じがした。

 思わず、ごくりと喉が鳴る。


「……それは、どんな勝負?」

「『あっちむいてホイ』だ」

「……馬鹿にしてんのか?」

「いや、本気だ」


 そうか。本気か。

 いや、確かに、言っていた内容に沿った感じはする。


 相手が何を出して、どちらを向くか考えないといけないし、反射神経も確かに大事だろう。

 指先がどっちを向くかを察する事だって出来るかもしれない。

 もちろん、勝負事である以上、心を強く持たないと。

 ジャンケンに負けても終わりじゃなく、当てられなければ次だ、と諦めない心を保ち続けないといけない。


 そう考えると、何やらすごい勝負のような気になってくる……ような……いや、ならないかな。

 やっぱり、あっちむいてホイだし。


 いや、待てよ。


「勝負のルールを教えてもらえるか?」

「良いだろう。勝負であるからこそ、公平は期さねばならない」


 ここは異世界。

 もしかすると、俺が知っているのと違う可能性だってある。


 ………………。

 ………………。

 全く一緒だった。


 本当に普通のあっちむいてホイである。


「……本当にこれで終わりにするの?」

「そうだな。この勝負が終われば、兄弟の絆も終わるかもしれないな。所詮は人と魔物。相反する存在なのかもしれない」


 いや、なんか言い出しているけど、そういう意味で言ったんじゃない。

 この勝負を本当にするのか? て意味なんだけど。

 正直言えば、ショボい。


 これで終わらせて良いのか、本当に不安になるような勝負方法だ。

 でも、提示された以上はやるしかない。


 早々に終わらせよう。


⦅自信満々ですね、マスター⦆


 まぁ、ね。


⦅もしや、これまであっちむいてホイにおいて、負け知らずとかですか?⦆


 いや、普通に負けた事あるけど。

 トータルで考えれば……半々じゃない?


 でもまぁ、負けないよ。

 なんといっても、こちらは経験者。

 これまでの場数が違う。


⦅マスター。場数は関係ない勝負だと思いますが? 寧ろ、運要素が絡んできます。それでこれまでの戦歴が半々となると……⦆


 え? 駄目なの?


⦅駄目という訳ではありませんが……⦆


 大丈夫大丈夫。

 経験者に任せなさい。


「それじゃ、早速やろうか! 時間がもったいないし」

「何やら急ぎの用でもあるようだな。良いだろう。こういうのは勢いも大切だ。……いくぞ」

「来い!」

「「じゃーんけーん……ぽいっ!」」


 俺、チョキ。

 ウーノ、チョキ。


「「あいこで、しょ」」


 俺、パー。

 ウーノ、パー。


「「あいこで……」」


     ―――


 このあと、十回あいこが続く。


     ―――


「タイム」

「良いだろう」


 じゃんけんを一旦中止して、一呼吸入れる。

 あっちむいてホイなのに、あっちむいてまでいけなかった。


 というか、二人でやっているのに、どうしてここまであいこが続くの。

 普通はどこかでどっちが負けても良いはずなのに。


⦅……それだけ相性が良いという事では?⦆


 その事実は認められない。

 それに、ここで一旦とめた事で、流れは変わったのだ。

 今度は直ぐどちらかが負けるはず。


「いくぞ! ウーノ!」

「来い! 兄弟!」

「「じゃーんけーん……」」


     ―――


 このあと、再び十回あいこが続く。


     ―――


「「なんでだよっ!」」


 俺とウーノは変わらないこの状況にそう叫ぶ。

 駄目だ。抜け出せそうにない、このスパイラル。


 ……どうしたものか。


「もう一度だ! ……我は、グーを出す」


 ウーノがそう言う。

 なるほど。事前申請する事で、場を乱す訳か。

 それなら、あいこ以外の結末になるはず。


 というか、三分の一の選択で出しているのに、どうしてあいこばっかり……。

 セミナスさんが言うように、似ているというのか。

 見た目ではなく、本質的な部分が……いや、そんなはずはない。


「いくぞ!」

「来い! ウーノ!」

「「じゃーんけーん……」」


 きっとウーノは、グーを出すと聞いた俺がパーを出すと判断して、チョキを出してくるはずだ。

 なので、俺はカウンターとしてグーを出そうと――。


⦅あっ⦆


 セミナスさんの呟きにビックリして、チョキを出してしまう。

 ……どうして邪魔したの、セミナスさん。


⦅邪魔とは心外です。結果をよく見てください⦆


 俺、チョキ。

 ウーノ。パー。


 どうやら、更に俺のカウンターを読んで、パーを出してきたようだ。


⦅いえ、そこの本は何も考えていません。今の一戦においては、無の境地でした⦆


 それはそれですごいと思う。

 でも、俺は勝った……そう、勝ったんだ!


「いよっしゃー!」


 喜びを表現する。

 本当に嬉しい。


「じゃあ、勝ったし、先に行かせてもらうから」

「いや、兄弟。これ、あっちむいてホイだから」

「……あっ。えっと、じゃあ、あっちむいて」

「いやいや、待って待って。流れ断ち切ったあとにするの? 単独で?」

「でも、勝ったし」

「いや、そうだけど、普通は勝って、あっちむいて……なのに、今は勝って、喜んで、あっちむいて……になっているから、流れがおかしい。これちょっと仕切り直し案件じゃない?」


 ええ~……まぁ、言いたい事はわかるけど。


「………………わかった。でも、貸し一な」

「それで構わない。じゃあ、最初から」


 あいこが十回続いた。

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