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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第十三章 大魔王軍戦
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なんだかんだ現れるのは居る

 結界を越えると、これまでの例に漏れず黒い神殿があった。

 あの中に、結界の神様が封じられている。


 気持ちとしては早く行ってパパッと片付けて、結界の神様にはアドルさんたちの援護に向かって欲しいけど、まずは一旦落ち着こう。


 焦るとミスる。

 一番の近道が遠回りだった、なんて事も世の中にはあるんだから。

 深呼吸して一拍置く。


 ……セミナスさん。


⦅はい。なんでしょうか?⦆


 まずは、セミナスさんの受けている影響を教えて。

 以前と違うのは、セミナスさんが強化されているという事。

 そこが一番変化しているはずだから、結界の影響でどうなっているのか知りたい。


⦅はい。確認します。………………確認しました。まず、『未来予測』系は軒並み確認出来る時間が延びています。以前は瞬間的でしたが、今は、一分は先を見通す事が可能です⦆


 一分……いや、前が瞬間的だった事と比べると、充分向上している。

 セミナスさんが強化されてなお、それだけの影響を与えるこの結界が異常なのだ。


⦅それには同意見です。それと、ASアスですが、私が起動、それと動作自体は問題ありませんが、反応速度と距離に影響が確認出来ました。無線式ですので仕方ない事ではありますが、若干反応が遅れるのと、距離に制限があります⦆


 ASもか。

 有線式なら違うようだけど、こればっかりは仕方ない。

 距離の制限ってどれくらい?


⦅マスターから離れれば離れるほどに反応速度は落ち、まともに動かせるのは、精々一メートル以内といったところです⦆


 うーん……充分なのか、足りないのか、ちょっと判別が出来ない。

 でも、通常が縦横無尽なのを踏まえると、かなりの影響だというのはわかる。


⦅現在確認出来る影響は、そのくらいです⦆


 そっか。ありがとう。

 気を引き締めるには充分です。


 パチン! と両手で両頬を叩いて気合注入。


 よし、行くぞ!

 黒い神殿に進入する。


     ―――


 黒い神殿内部は、やはり何もない。

 いつも通り殺風景だ。

 あるのは、下に続く階段だけ。


 ……罠の類は?


⦅今のところ見当たりません。ないと判断します⦆


 それでも、油断して良い場所じゃないので、警戒は常にしつつ、ゆっくりと進んでいく。

 セミナスさんの力に制限がかけられている以上、今は慎重過ぎなくらいが丁度良い。


⦅賢明な判断です、マスター⦆


 ありがとう。


 階段を下りると、奥に続く一本道があり、その奥には扉がある。

 壁に穴も空いていないし、床に変な途切れ目もない。

 ここも罠はない?


⦅上と同じく見当たりません。ないと判断します⦆


 そっか。

 となると……この流れは、もしかして戦闘系?


⦅その可能性は否定出来ません⦆


 もしそうなら、出来れば楽な相手でありますように、と願いつつ、扉を開けて中を確認。


 ………………。

 ………………。

 一旦閉じる。


 反対側の階段の方を見る。

 いやいや、さすがに戻るのは駄目だ。


 それに、一旦扉を閉じた訳だし、中が変わっているかもしれない。

 そんな可能性もある。


⦅ありません⦆


 希望を潰さないで。

 それでも、と願いつつ、扉を開けて中を確認。


 ……変わってない。


⦅マスター。こういう場合は不可避ですので、さっさと行って、サクッと終わらせるのが、一番早く終わる対処法です⦆


 それはわかっているんだけど、面倒くさい予感しかないんだよね。

 ……でも、行くしかない。


 意を決して、中に入る。


 入った先は、中央に台座があり、奥に扉があるだけの、それ以外には何もない殺風景な部屋。

 でも、その台座が問題。


 とりあえず、何も考えずに奥の扉に向かう。

 ……開かない。だよね。


 やはり、アレをどうにかしないといけないようだ。

 なので、台座のところまで戻る。


 台座の上には、本が一冊置かれていた。


 やっぱり、黒い表紙で、これまでに二度見た事がある本。

 ……このまま燃やせばクリアになるんじゃないだろうか?


⦅なるほど。良いですね。そうしましょう。ですが、問題があります。火がありません。点ける道具も持っていません⦆


 だよね。わかっている。

 思ってみただけ。

 それに、さすがに人道的にもね。


 ……あっ、このまま開かずに結界の外に放り投げれば良いんじゃない?

 それで脅威は排除したって事で、勝利にならないだろうか?

 脅威かどうかは微妙なラインだけど。


⦅残念ですが、この部屋の外には持ち出せない仕様になっているようです⦆


 用意周到な事で。

 ……もうパッと策は思い付かない。

 やはり、直接対決しかないようだ。


 なので、黒い表紙の本を開く。

 開いたページから黒い煙が立ち昇り、それが筋骨隆々な人型の男性を形作っていく。

 現れたのは、頭に角があり、上半身はムキムキの裸で下半身は腰みのだけの存在。

 足は煙となって黒い本と繋がっていた。


 それと――。


「……ふっ」


 眼鏡装備で、こちらを値踏みするような視線を向けてくる。


「その髪色、表情、体型……兄弟ブラザーか」

「誰が兄弟ブラザーだ。俺は一度たりとも認めていない」

「その態度は好意の裏返しって事か。いい加減素直になれよ、兄弟」

「自分に素直に口を開いているけど」


 なんだろう。

 ちょっとイラッとする。


「まっ、それが兄弟だもんな」


 パチン、とウインクされた。

 マジで殴りたくなる。


⦅確かに、少々ウザ……面倒くさくなっているような気がしないでもありません⦆


 セミナスさんも同じような事を感じているようだ。


「まずは、お決まりの言葉を言わせてもらう。本を開いた愚か者よ。我を倒さぬ限り、ここから出る事は不可能である。我を倒して先に進むか、我に倒されてここで終わるか。さぁ、お前の運命を決めるダイスを振ろうではないか」


 ………………。

 ………………。


「ダイス、あるの?」

「ない」

「……言ってみてかっただけ?」

「言ってみたかっただけ」


 あっ、やっぱ変わってないな。

 眼鏡装備で少しは知的キャラに見えなくもないけど、中身は変わっていないな、これ。


「何故我を残念な者を見るような目で見る。どうやら、その目は節穴のようだ」

「というと?」

「我は前回の敗北で更に悟った。知識と身体。両方揃ってこそ、真の勝利は得られるのだと」

「はぁ」

「あれから勉強も続け、肉体も鍛えた。心技体、全てが揃った我は、まさに至高の存在! そして、この本は初版。我ももう、あとには引けぬ。さぁ、これまで続いた因縁に終止符を打とうではないか!」


 因縁? ……あっただろうか?


 でも、やっぱり変わってないわ、こいつ。

 とりあえず、知的キャラでないのなら、眼鏡を外して欲しい。

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