案外大丈夫って事はあるよね
空中から確認するだけでも、地上に居る魔物たちの数が多い事がわかる。
下手をすれば1000に届くんじゃないだろうか?
⦅正確には、1639体の魔物が居ます⦆
こういう時は的確だよね、セミナスさん。
⦅私はいつも的確です⦆
でも、魔王と接触した時は――。
⦅マスター、過去を振り返る事も大事ですが、今はただ前を、これからを見てください⦆
いや、話の流れ的には振り返るところだったよね。
⦅そう。神造超生命体の体を手にした今、私はただのスキルではなくなりました。完璧女性。……言うなれば、『世界を』『見通す』『パーフェクト』『ナビ』『スキル』。略して『セミパナス』⦆
………………。
⦅………………⦆
………………えっと、なんかの呪文みたいですね。
⦅語感が悪いので、『セミナス』のままでお願いします⦆
そうですね。そうします。
それで、この中を突っ切るのは不可能なのはわかるし、いざとなれば結界は見えているから、ドラーグさんに真上まで飛んでもらって飛び降りれば良いんだけど……本当に下に居る大魔王軍を殲滅する意味あるの?
エイトたちに、わざわざ危険な事をさせる必要はないんじゃない?
⦅ここに居るのが特に意味がなければ、無視はまだしも殲滅までは求めません⦆
つまり、意味があるの?
⦅はい。簡単に言えば、眼下の大魔王軍は伏兵、援軍の類です。このまま放置、もしくは戦力を残してしまうと、現在上大陸西部で戦闘中のEB同盟に対して、負けはしませんが少なくない打撃が与えられる事になります⦆
そういう事なら、どうにかしたいとは思うけど……最終決断は危険に飛び込むエイトたちだ。
「問題ありません。そもそも、エイトたちからすれば、あの程度は脅威でもなんでもありません」
エイトの証言。
他の皆も同様。
やる気はなくなっていないようだ。
という訳で、エイトたちを信じて任せる事にした。
―――
「それでは、いってまいります」
そう言って、敬礼をしたエイトがドラーグさんから飛び降りた。
同じようにして、ワンたちも。
俺も敬礼を返す。
………………。
………………。
いやいや、待って待って!
地上までまだまだ距離があるんだから、飛び降りちゃ駄目でしょ!
⦅問題ありません⦆
セミナスさんの言う通りになった。
「『指定 空中 固定 八陣』」
セブンが連続して単語を呟いたかと思えば、エイトたちが八角形の形を描くように空中に浮いた。
……いや、浮いたというよりは、空中に立っているように見える。
⦅特化七型が時属性魔法を使用。指定した空中の時をとめ、そこを足場としているのです⦆
サラッとセミナスさんの解説が入るけど、セブンが相当な事をしたと思うのは俺だけだろうか?
そんな事が出来るのなら、人の周囲の時をとめて、身動き出来なくする事も出来るんじゃない?
……そうなったら、さすがのセミナスさんでもどうにも出来ないんじゃないだろうか?
⦅対処方法はいくつかありますので問題ありません。例を挙げるのなら、私なら使用される前にどうとでも料理出来ます⦆
セミナスさんがムッとしたような雰囲気で答える。
確かに、セミナスさんなら出来そうだ。
そして、エイトたちは空中から魔法を展開。
それぞれが得意属性の魔法で、剣や槍、矢や玉などを数多く生み出し、一気に放つ。
物量で押していくようだが、一撃でやられる魔物も居るので威力も高い。
空中から一方的に蹂躙していく。
その様子は、エイトたちを中心にして、花が咲くように爆発していっている。
時折、大魔王軍の反撃として矢が飛んできたり、他にも魔法や槍なんかも飛んできたが、エイトたちの物量はすさまじく、届く前に全て撃ち落されていた。
大魔王軍はみるみる内に数を減らしていく。
というか、圧倒的過ぎない?
⦅マスター。お忘れですか? 汎用型と特化型たちは『対大魔王軍戦用』。つまり、多数相手の殲滅戦に最も力を発揮するのです⦆
なるほど。
これは、このまま一方的にいけそうだな。
あのフォーですら、きちんと風属性の魔法を使用している。
「……くちっ」
フォーが小さくくしゃみをして、魔法が少し乱れた。
……大丈夫かな?
⦅マスターが噂したせいですね⦆
え? 俺のせいなの?
なんかごめん。フォー。
とりあえず、これ以上は触れないでおこう。
このまま見ている内に終わるかな、と思ったのだが。
「数が多くてまだるっこしいな」
「そうですね。このまま一方的なのもつまらないですし、好きなように動いて構わないのでは? 幸いと言うべきか、敵のレベルも低いようですし」
「なら~」
「我先に~」
ワンとツゥの会話に一番早く反応したのは、ファイブとシックスだった。
空中の足場からぴょんと飛び降り、地上で大魔王軍相手に肉弾戦を始める。
「左フック! 左フック!」
「右ストレート!」
鎧姿の鬼のような魔物を相手に、二人で綺麗なワンツーを決めた。
かと思えば、空中に居た時と同じように物量魔法で仕留めていく。
「ボクもボクも~!」
スリーも足場から飛び降りて参戦。
一気に殲滅力が上がる。
楽しそうな笑い声も増量された。
「ずるいぞ! あたいが降りようとしていたのに!」
ワンも降りて、地上ではスリー、ファイブ、シックスを交えた、一方的な格闘戦が始まる。
体動かすの大好き組かな?
一方、空中の方では、エイト、ツゥ、フォー、セブンが変わらず物量魔法で一方的に駆逐していく。
エイトは地上を見下ろす神のように、ツゥは絶対的支配者の風格で、フォーはなんか自分以外の雰囲気に恐れつつ、セブンは地上に降りた子たちを心配するおかんのような、そんな感じを醸し出しながらだけど。
それでも抜けた穴を埋めるように、きっちりと物量魔法の数を増やしているのはさすがだと思う。
とりあえず、大魔王軍はエイトたちに任せても大丈夫そうなので、こちらも行動を開始する。
ドラーグさんにお願いして、結界の真上に移動してもらう。
「えっと……それじゃ、ドラーグさん。いざという時のために、エイトたちのフォローをお願いします」
「任せておけ。孫のように守って、一緒に遊んでくるわ」
そういう感覚なんですね。
でも、ドラーグさんも最強レベルなのは間違いないと思うので、安心して任せられる。
行くよ、セミナスさん。
⦅マスターの生命は私が守ります⦆
頼もしい限りだ。
そして、ドラーグさんから飛び降り、結界内に進入する。




