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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第十三章 大魔王軍戦
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別章 EB同盟 上大陸西部 2

 上大陸西部にある平原にて、EB同盟と大魔王軍の戦いが始まる。

 先に仕掛けたのはEB同盟。

 平原に集っていた大魔王軍に向けて一気に進攻する。


 足並みは、最初は揃っていた。

 歩兵は歩兵の速度で。

 騎馬は騎馬の速度で。


 しかし、大魔王軍に近付くにつれて、EB同盟の中で突出していく存在が二人居た。

 一人は、軍事国ネス所属、棍棒を持つ金髪の女性・シュラ。


 この世界における強者の一人であり、軍事国ネス所属の中では間違いなく最強の存在。

 あまりにも力が強過ぎるために、超硬質棍棒という専用武器でないと、逆に武器の方が壊れてしまうという体質持ち。

 たとえ相手が魔物であっても、個で集を潰せるだけの力を有している。


 そのシュラは馬に乗らず、大魔王軍に向けて大きな土埃を上げながら駆けて行くが、その速度は既に馬を超えていた。


「ハハハハハッ!」


 笑いながらであるため、若干の狂気を感じさせた。

 実際は狂気など一切ない。

 ただ、テンションが上がり過ぎているだけである。


「戦いだ! 戦争だ! 遂に決着の時だ! 大魔王軍!」


 自分で自分の勢いがとめられないと、手に持つ棍棒を振り回す。


「ちょっ! 待ってください! シュラ様! 一人で行くのは危険です!」


 シュラをとめようと声を張り上げたのは軍事国ネスの兵士の一人。

 なんとかシュラについて行こうと、その兵士だけではなく他の兵士も頑張ってはいるのだが、速度が違うために追い付く事は出来ていない。


「大丈夫だ! 問題ない! 任せろ! 私が突破口を開いてやるから、あとに続け!」

「いや、一人だと危険だと言っているんです!」

「案ずるな! こう見えても私は強い! 大魔王軍などボッコボコにしてやる!」

「だから、そうじゃなくて!」


 シュラと兵士のやり取りが聞こえていた兵士たちは思う。

 話、噛み合ってねぇな、と。


 そうこうしている内に、シュラは大魔王軍に肉薄する。

 それなりの距離を短時間で詰める事が出来たのは、シュラの力があればこそ。


 しかし、距離があった事は確か。

 いくら速く着こうとも、相手に時間を与えてしまった事に変わりはない。


 既に、大魔王軍は迎撃態勢を整えていた。

 盾を構え、槍を前に突き出した鎧姿のオークたちが、壁のように横一列で並んでいる。


 ただ、ところどころ抜けがあり、その迎撃態勢が完全に、という訳ではなかったのは、やはりEB同盟が先に仕掛けたからだろう。


 だが、たとえ完全であろうとも、シュラには関係ない。

 良い面であり、悪い面でもあるかもしれないが、実直だからこそ、相手の状態など関係なしに、己の力を最大限に使用出来るのだ。


「い、く、ぜぇ~!」


 シュラが走りながら棍棒を振りかぶる。


「おう……りゃあっ!」


 オークたちが構える槍に当たる前に飛び上がり、そのまま一気に大魔王軍の陣地へ棍棒を叩きつける。

 巨大な土埃が数mは上昇し、棍棒が叩きつけられた地面は広範囲に陥没した。


 棍棒の打撃を直接食らったオークは鎧ごと圧縮するように潰されて絶命。

 直接食らわなくても、近しい場所に居たオークは衝撃で吹き飛んでいき、周囲の味方を巻き込んで死亡、もしくはまともな戦闘行為が取れないような怪我を負う。


 それだけの衝撃となると、当然横一列に並んでいたオークたちは瓦解し、一部に大きな穴が出来てしまう。

 そこに、シュラのあとを追っていた軍事国ネス所属の兵士や騎馬たちが雪崩込み、そこが楔となって、大魔王軍は一気に攻め込まれる事になる。


 このシュラの一撃が、双方において最初の一撃であった。


     ―――


 大魔王軍に向けて突出したもう一人は、ウルトランである。

 宣言が終わるのと同時に駆け出していたのだ。


「ガハハハハハッ! 先手必勝! 一番は我がもらった!」


 ウルトランも馬には乗っていない。

 自前の脚力だけで、馬よりも早く一気に大魔王軍へと迫っていく。


 このまま勢いに乗った一撃を食らわしてやろうと、ウルトランは内心で思うが、そうはいかなかった。

 ウルトランに追い付く者が居たのである。

 それも二人。


 まず一人は、大剣を持つ白髪の犬の獣人・ウルア。

 ウルトランの息子であり、王子。


「今のはずるいですよ。一国を治める王が、抜け駆けするような事を行って良いんですか?」

「大陸歴116年。EB同盟と大魔王軍の激突。その最初の一撃は、獣人国の王・ウルトラン。我はそうして歴史に刻まれたいのだ!」


 欲望丸出し全開の答えに、ウルアは苦笑いを浮かべる。


 そして追走するもう一人。

 鉄扇を持つ銀髪の狐の獣人・フェウル

 ウルトランの娘であり、王女。


「既に大魔王軍との戦いに終止符を打った国の一つ。その王として歴史に残りそうなのに、まだ求めるのですか?」

「当たり前だ! お前たちだって、我が歴史に名を残せば、自慢のパパになるだろう?」

「「………………」」


 ウルアとフェウルは、呆れた視線をウルトランに向ける。

 ウルトランは父親として、敏感に反応する。


「その目はパパに向けていい目ではないな」

「いや、でも、なんか器が小さいです。陛下」

「そうですね。なんか恥ずかしいです。陛下」

「陛下じゃない。パパと呼びなさいと前から言っているだろう」


 そう反応したのがいけなかったのだろう。

 反応した事で少しだけ速度が緩くなり、大魔王軍へ到達する時間が遅くなる。


 それが致命的だった。


 ウルトランたちが向かっていた場所から少し離れた場所で、大きな土埃が舞い上がる。

 シュラの一撃によるモノだった。


「あぁ、あちらは軍事国ネスの方ですね。シュラさんかな?」

「相当の威力がないとあれだけの土埃は起きないから、シュラさんで間違いないと思う」


 ウルアとフェウルは冷静な判断で状況を受けとめる。

 しかし、最初の一撃を狙っていたウルトランは違った。


「ちくしょー! 狙っていたのにー!」


 そう叫びながら、ウルトランが大魔王軍に襲いかかった。

 その姿を見て、ウルアとフェウルは思う。


「「残念でした、陛下」」

「パパって呼びなさい!」


 きっちりと答えつつ、ウルトランは魔物を裂き殺していく。

 次いでウルア、フェウルも参戦し、遅れて獣人国の者たちも戦線に加わっていった。


     ―――


 軍事国ネスと獣人国の様子を見ていた魔族の国の宰相は、魔族の国の王であるロードレイルに進言する。


「出遅れていますよ」

「わ、わかっているから!」


 魔族の国も次いで大魔王軍と戦闘を開始する。


 そして、上大陸西部での戦いが本格化していく。

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― 新着の感想 ―
[一言] ここまでくるとパパ呼びのデレも見たいですねぇ(*´▽`*)
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