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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第十三章 大魔王軍戦
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別章 その年は転機の年と呼ばれるようになる

章チェンジします。

 ――大陸歴115年。


 この年は、のちに転機の年と歴史に記される。

 そう記される理由は明白。

 人類が一つになった事の証明である「EB同盟」と、大陸最大の戦争を引き起こした大魔王軍との戦いにおいて、終結へと導いた勇者たちが、異世界から召喚された年だからである。


 勇者たちの功績の一つがEB同盟、その再強化。

 過去。魔王軍を退け、世界を平和に導いたEB同盟だが、一度手にした平和の中で、愚かにも人類同士が争いを始めたのだ。


 人類同士の争いにおいて、その最大規模となったのが、三大国の内の二国――ラメゼリア王国と軍事国ネスの争い。


 その他にも大小の争いは起こり、EB同盟は名ばかりのものとなってしまう。

 そうして時が過ぎ、形骸化していたEB同盟を前の形に、強固な絆の形へと戻った、その大きな一因となったのが、勇者たちなのである。


 勇者たちの尽力によって、この年の終盤――EB同盟は再び一つとなった。


 勇者たちが行ったのは、なんて事はない。

 ただ、舞台を整え、大国の指導者や里の長たちを一か所に集めた。


 ラメゼリア王国・王城。

 話し合いの場として大広間が選択される。

 室内中央には円卓が置かれ、指導者たちが鎮座していた。


 そこで、EB同盟再強化の話し合いが始められる。

 これも転機の一つ。


     ―――


 話し合いの場に集ったのは、まず三大国の王。


 ビットル王国の王・ベオルア。

 ラメゼリア王国の王・ゴルドール。

 軍事国ネスの女王・ガラナ。


 次いで、大国や里の指導者たち。


 エルフの里の長・ラクロ。

 ドワーフ国の王・ドルド。

 獣人国の王・ウルトラン。

 魔族の国の王・ロードレイル。


 主要人物はこの七名。

 他にも、この大広間の中には、各国の王女や王子、護衛など、重要人物たちが揃っていたが、この場の主役は、主要人物七名の方である。


 EB同盟再強化は、この七名に託された。


 最初に口を開いたのは、ビットル王国の王・ベオルア。


「……さて、いつまでも相手を見ていても仕方ありませんし、時間は限られている。なので、早く終わらせるに越した事はない。事前に話は通されていますが、私がこの場の議長として話を進めます。それでも念のために伺いますが、誰も異議は申しませんね?」


 確認するために、ベオルアはこの場に居る者たちを見ていく。

 誰も異議がない事を確認して頷く。


「では、話を進めます。この場の目的はEB同盟を再強化、もしくは再構築を行い、来たる大魔王軍との決戦に向けての話し合いです。その中で最初にやるべきは、ラメゼリア王国と軍事国ネスの和解でしょう」


 ベオルアが、ラメゼリア王国の王・ゴルドールと、軍事国ネスの女王・ガラナを順に見ていき、微笑んだ。


「ただ、実はこれに対しては問題ありません。少なくとも今は……とくくられますが」

「どういう事ですか?」


 ベオルアの言葉に対して、エルフの里の長・ラクロが尋ねる。

 他の者たちもどういう事かと興味があった。


 何しろ、これまで和解の片鱗すら見せなかった二国に対して問題ないと言ったのだから。


「ラクロ殿。なんて事はないのです。私が事前に議長として話が通されていたように、事前に二国から私に話が通っていたのですよ」

「双方から?」

「ええ。それも全く同じ内容のモノが」

「同じ内容ですか?」

「ラメゼリア王国。軍事国ネス。どちらも相手国に対して謝罪して和解したいので、私に間に立って仲裁して欲しい、と」

「それは……話が早いですね」


 ラクロがうんうんと頷き、ゴルドールとガラナを見る。

 同じようにベオルアも二人を見た。


 ベオルアとラクロは同じように少しだけ笑っている。

 まるで、ドッキリなどの謀が上手くいったかのように。


 どうやら、この流れはベオルアとラクロが仕掛けた話の流れなのだと、ゴルドールとガラナだけではなく、他の者たちも気付く。


「やれやれ、まさかバラされる事になるとは」

「ですが……まぁ、その方が早いのは確実、か。何しろ、双方に和解の意思があるのだから」


 ゴルドールとガラナが視線を合わせ、笑みを浮かべる。


「では、ラメゼリア王国は、軍事国ネスに対して謝罪し、和解を求める」

「軍事国ネスは、ラメゼリア王国に対して謝罪し、和解を求める」


 双方共に和解の意思あり。

 いや、和解したという事実がまずあれば良いのだ。


 今この場で、和解条件などは一切決めなかったのには理由がある。

 まずは、大魔王軍との決戦を乗り越えなければ、何を決めようとも意味がないからだ。


 決戦の敗北は、文字通り全て失う。

 国すら残らない。


 何しろ、一時は押し込まれたのだ。

 多大なる犠牲を払って押し返し、どうにか拮抗状態にまで盛り返したが、大魔王軍が脅威である事は一切変わっていない。


 EB同盟が再強化されたとしても、勝てる見込みも保証もなかった。

 けれど、手をこまねいていても待っているのは大魔王軍による蹂躙の破滅のみ。


 だからこそ、一つの国だけではなく、残された全ての国の協力が必要なのだ。

 そして、ベオルアが言った通り、決戦までの時間は残されていない。

 和解したという事実があれば、話を前に持っていける。


 協力して、大魔王軍との決戦にあたれるのだ。


 議長として、ベオルアが宣誓する。


「では、ラメゼリア王国と軍事国ネスの和解をここに宣言する。証人は私だけではなく、この場に居る者たち。ビットル王国、エルフの里、ドワーフの国、獣人国、魔族の国である」

『異議なし』


 和解は成立したと、室内に居る者たち全員が拍手をする。

 当然、当事国である二国。

 ラメゼリア王国は軍事国ネスに向けて。

 軍事国ネスはラメゼリア王国に向けて。


 僅かな間だけ、室内は明るい祝福に包まれた。


 それをとめたのは、ベオルア。

 円卓をコツコツと叩き、この場に居る者たちの視線を自分に向けさせる。


「では、議長として、話を進めさせていただく」


 祝福の雰囲気は一気に霧散し、重厚なモノへと変化する。


「来たる大魔王軍との決戦について……」


 そこから直ぐに始められたのが、大魔王軍に対する話し合い。

 これが時間を食った。


 次の進攻に全てをかける以上、出し惜しみは一切ない。

 まさに、死力を尽くした総力戦となる。

 だが、それは大魔王軍も同様。


 だからこそ、入念な準備が必要なのだ。

 けれど、それは大魔王軍にも言える事。


 時間をかければかけるだけ、相手にも相応の準備が整ってしまう。

 どちらが先に戦いの火蓋が切るのか。

 時間との勝負でもあった。


 そうしてつつがなく話し合いは進められ……終わると同時に指導者たちはそれぞれ自国や里に戻り、大魔王軍との決戦の準備を始める。

 全ての準備が整うまでに、数か月を要した。


 そして、大陸歴116年。

 EB同盟対大魔王軍の決戦の火蓋が切って落とされる。

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