表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第十二章 過去へ
413/590

求めるモノは人それぞれ

 セミナスさんの前に、シャインさんが立つ。

 なんだろう。それだけでなんか怖く感じる。

 いうなれば、ラスボス戦というか、宿命のライバルがぶつかり合うような、そんな雰囲気が流れているように感じた。


 まっ、俺の勝手な思い込みだけど。

 何しろ、俺が知る中で、最強の二人なのは間違いない。

 セミナスさんは言うまでもないし、シャインさんも誰かに負ける姿は想像出来ないからだ。


 だからだろうか。

 シャインさんは……それはもうニッコニコだ。

 これから始まる戦いに、胸を躍らせているように見えなくもない。


 そんなシャインさんに向けて、セミナスさんが口を開く。


「正直なところを言えば、あなたに私の課す鍛錬は必要ありません。既に大魔王、魔王と対抗出来るだけの力を有しています。その自覚はあると思いますが?」

「ああ、あるな。今の私なら、本気を出せば渡り合えると思っている。実際、ドラロスからも似たような事を言われた」


 え? そうなの?

 シャインさん、そんなに強かったの?


 なのに、出会って直ぐ俺を追い回していたの?

 思い出すだけで恐怖案件になるから、俺に聞こえないところで言って欲しかった。


「だからといって、私は現状に満足していない」

「………………」

「渡り合える程度じゃ駄目だ。私が求める私の強さは、誰が相手でも何も失わない強さだ。誰からも奪われない強さだ。誰の手も届かない強さだ」


 そう言うシャインさんの表情は、どことなく狂気を孕んでいるように見えた。

 まるで、ひたすらに強さを求める事で、旦那さんの死を乗り越えようと、必死にもがいているように。


「だから私は、相手が誰であれ、なんであれ、圧倒出来るだけの強さが欲しい」

「……私からあなたに何かしらの助言をするのであれば、強さを求める以外の事にも、そろそろ目を向けるべき時が来た、でしょうか」

「………………」


 一瞬だけど、シャインさんが俺を見たような……気のせいかな。


「いえ、わかった上での行動のようですね」

「今は戦いの時代。いや、私の中では、あの時からずっとそうだ。その時代が変わらない限り、私の考えは変わらない」

「その一つの区切りが魔王……いえ、大魔王ですか。存外、不器用なのですね」

「戦いばかりの女だからな」


 ……なんだろう。

 一流は一流を知る、みたいな空気感というか、セミナスさんとシャインさんは、どこかで通じ合っているように見えてきた。


「「それはない(ありません)」」


 二人揃って俺にそう言ってきた。

 息もぴったりだ。


「……まぁ、良いでしょう。絶対に勝てない相手が居るという事を教えてあげます。今の内に、私が上だという事を、あなたの心と体に刻んであげましょう」

「それは無理だな。私がお前に教えてやろうと思っていたんだ。勝てない相手が居るって事を」


 バチィン! と二人の間に火花が散ったような気がする。

 危険な予感がするので、一歩下がった。


 同時に、パァン! と激しく弾けるような音と衝撃によって発生した風によって、体が揺さぶられる。

 見れば、シャインさんが拳を突き出し、その拳をセミナスさんが受けとめていた。

 動きがまったく見えなかったんですけど。


「今のをとめるか……楽しませてくれそうだ」

「お忘れですか? 私は先を読むのですよ」

「そう、だったな!」


 セミナスさんとシャインさんの模擬戦が始まる。

 いや、もう模擬戦ってレベルじゃなかった。

 お互い本気なんじゃないかってくらい、規模が大きい。


 漫画みたいに地面がえぐれたり、衝撃波だけ残して姿が見えなかったりと、明らかに違う世界の人たちの戦いだ。


 というか、こういう戦いって自然災害レベルだけど、大丈夫なんだろうか?

 直ぐ近くには世界樹もあるのに。


 近くに来たドラロスさんに尋ねる。


「これ、大丈夫なんですか?」

「我だって出来るぞ、これくらい」


 そういう事を聞いているんじゃない。

 同じく近くに来た詩夕に尋ねる。


「これ、もう駄目でしょ?」

「僕もこれくらい出来るようにならないと」


 駄目だ、詩夕。そっちに行っちゃ。


 とりあえず、セミナスさんとシャインさんの戦いは、基本的に俺以外には参考になるそうで、全員で観戦する事になった。

 ついでに言うと、一日半くらい続いたあと、ここで決着を着けるのはもったいないという理由で、引き分けで終わる。


     ―――


 セミナスさんの前に、DD、ジースくんたち、それと竜の女王であるミレナさんが並ぶ。


「………………」


 セミナスさんの表情は困惑、というか、面倒そうな表情を浮かべている。


「竜は大魔王軍との戦いには不干渉。なら、あなたたちも鍛える必要はありませんが?」

「いえ、鍛えて欲しい訳ではありません。ですが、不干渉という訳でもありません」


 答えたのは、ミレナさん。

 DDとジースくんたちは、直立不動で待機している。

 竜形態なので辛そうだ。


 でも、解く事は許されていないんだろうな、きっと。


「不干渉ではない、とは? 干渉すると?」

「ええ、干渉します。確かに、これまでは不干渉でした。ですが、状況は刻一刻と変化するモノ。何より、私は知りました。父であるドラロスが秘密裏に協力し、魔王を仕留める事が出来なかった事を」


 仕留めきれなくて……すみません、とドラロスさんが無言で頭を下げていた。


 というか、この会話……なんとなくだけど、竜たちが協力するって事を、俺や詩夕たちに聞かせているような気がする。

 だって、セミナスさんはそういうのを全部知っている訳だし。


 まぁ、今詩夕たちはシャインさんにしごかれているので、聞こえているかどうかはわからないけど。


「なら、その雪辱を晴らすためにも、竜はあなたたちに協力します。ですが、以前と同じように秘密裡の協力です。具体的には、バレないように牽制と殲滅を行うのと」


 ミレナさんがそこで区切って、俺に視線を向ける。


「私とダーリンが人の姿を取り、あなたの護衛として行動を共にします」

「良いでしょう」


 答えたのは、セミナスさん。

 あれ? 俺の意思は?

 いや、助かるっちゃ助かるから、別に断るつもりはないけど。


「話はわかりましたが、なら、そこに並んでいる竜共はなんでしょうか? 鍛えて欲しい訳ではないのですよね?」

「実は、このような相談をするのもどうかと思うのですが……ここで過ごしている内にダーリンたちの耐久力が更に上がったようで、これまでの技では効きづらくなっているのです。なので、効果のある技を知りませんか? もしあるのなら、教えていただきたいのですが?」


 聞く人を間違えて……いや、この場合は正解なのかな?

 それはDDとジースくんたちも実感しているのか、ダラダラと汗を流している。


 セミナスさんは、楽しそうに笑みを浮かべた。


「それは大変興味深い話ですね」


 頑張って生き延びてください、と心の中で、DDとジースくんたちに向けて応援しておいた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ