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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第十二章 過去へ
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言うべき時に、言うべき言葉がある

「ところで、セミナスさん」

「はい。なんでしょうか? と問いたいですが、マスター。まずはこうして出会った女性に対して、何か言う事があるのではありませんか?」


 ……え? えっと……。

 セミナスさんがそう問うって事は、実際に何かある訳だ。

 となると、こういう場合に言うべき事は……。


「その姿、セミナスさんそのままです」

「ありがとうございます。ですが、足りません。もう一声」


 もう一声?

 そこら辺は個人の匙加減だと思うんだけど。


「えーと、眼鏡似合ってる」

「そこではありません。もう少し大きく見てください」


 眼鏡はかなり重要だと思うけど。


「ドレス似合ってる?」

「疑問形で言わないように。大きい物を見ろという事ではありません」

「……綺麗です」

「ありがとうございます。マスターに綺麗と言われて、私は非常に満足しました。今はそれで充分です」


 セミナスさんが嬉しそうに一礼する。

 容姿を褒めて欲しかったよう……今は?

 今後があるの? と思っていると、セミナスさんがチラッとエイトたちを見る。


 エイトたちの表情に「?」が浮かぶが、直ぐに「!」へと変わった。


「ご主人様。エイトに対しては何かないのですか?」

「あたいたちも言われたいな」


 エイトたちも同じような事をご所望のようだ。

 というか、今、確実に合図が送られたよね?


 セミナスさんとエイトたちが仲良くなって嬉しいけど、あまり俺を追い詰めないで欲しい。

 でも、日頃助けられている事は確かだ。

 感謝の言葉として言うくらい、なんて事はない。


 ………………。

 ………………。


 あの、なんで二週目に突入するの?

 セミナスさんもしれっと並んでいるし。


「約束では撫でてもらえるはずが、まだ撫でてもらっていません」


 そういえば、そんな約束があったね。


 ………………。

 ………………頑張った。

 いや、頑張るような事じゃないか。

 でも、もう少しボキャブラリーを増やそうと思った。


     ―――


 場が落ち着いたところで、セミナスさんに尋ねる。


「それで、セミナスさん。過去から戻ってきたけど、これからどうするの?」

「これから世界樹のある島に戻り、過去で知った事を説明し、アイオリとエアリーからの手紙を渡してください。そのあとは、来たる大魔王軍との決戦までの数カ月間。そのまま鍛錬を行います。マスターだけではなく、他の者たちにも。何しろ、相手はこの体と同じ神造超生命体。今よりレベルアップしていただかないと通用しません」


 やっぱり、それだけ強いんだ。

 ……ん? あれ?


「通用しないってわかるの?」

「はい。私の力も上がり、大魔王、魔王と同等の体も得ました。故に、全て見通せるのです……と言いたいのですが、残念ですが相手も中々やるようです。以前よりは、かなり明確に相手の事が見えますが、未だ勝利が確定した未来は見えません」


 それは、まぁ……なんとも言えない。


「……それだけ大魔王、魔王は強いって事?」

「いえ、正確に言うのであれば、魔王に関しては大丈夫です。ですが、大魔王は不可能でした。最初ファースト・神造超生命体ハイブリッド・ホムンクルスだからか、それとも別の特殊性が存在しているのか……」


 セミナスさんがとても悔しそうにしている。

 なんというか、これまで言葉だけだった分、表情があるのが新鮮に感じた。


「まだ謎があるって事か。……ところで、セミナスさんの口ぶりだと、俺以外も鍛えるって事? 詩夕たちやアドルさんたちを、大魔王、魔王に通用するくらいまで鍛えるって事?」

「はい。可能です。少々スパルタになるかもしれませんが、強くなるためなら大丈夫です」


 多分、少々じゃないと思う。

 それでも大丈夫だからこそ、そう言っているんだろうけど。


「……ん? という事は、セミナスさんが直接指導を?」

「はい。こうして体を手に入れましたから、マスター以外とも会話が可能になりましたので」


 そういえばそうだ。

 というか、エイトたちとも会話してたね。


 あっ、なんかそう思うと感慨深くなってきた。

 巣立ちの時って感じがして……。


「何やら不本意な気分になってきました」


 セミナスさんが口を尖らせる。

 考えている事が読まれているのかもしれない。

 実際は読まれていないけど。


「こういう時、マスターから離れた事が口惜しいと感じますね。表情だけでは正確に読み取れません」


 大丈夫なようだ。


「時間の問題でしょうが」


 セミナスさんの表情は自信満々だ。

 エイトたちも、その通りだと頷いている。

 案外直ぐそうなりそうで怖い。


 とりあえず、セミナスさんが現れたら、皆が驚くのは間違いないだろうな。

 で、そのあとに鍛錬という名の地獄が始まる気がする。

 頑張って生きていこうと思った。


 そして、目的が決まれば行動を起こすだけ。

 まずは、ゴーイチたちとニセミチくんに確認。


「俺たちはそろそろ行くけど、どうする?」

「自分タチハ、ココニ残リマス」

「コノ研究所ヲ管理スルタメノ存在デスカラ」

「ソレニ、ソモソモ戦闘ガ出来ルヨウニハ造ラレテイマセン」


 ゴーイチたちの返答は単純明快。

 この研究所に残る事を選択。

 まぁ、そうだろうな、とは思っていたけど。


「ゴーイチ、ゴーニ、ゴーサン……また、来るからね。今度は親友たちも連れて」

「「「待ッテルヨ、アッキー!」」」


 ヒシッ! と抱き合って別れの挨拶をする。


「それで、ニセミチくんはどうするの?」

「あっ、自分もここに残ります。そもそも、ゴーイチさんたちと同じく戦闘能力ないですし、メンテナンスをする人も必要でしょうから」

「そっか。わかった」


 ニセミチくんとは握手を交わす。


「マスター。ここは抱き合うところです」

「ご主人様。ここは抱き合うところです」


 こらこら、セミナスさんとエイト。

 どうして同じ事を言うのかな?

 それに、自分とそっくりなのと抱き合うとか、ちょっとしたホラーじゃない?


 ワンたちも、そうだと煽らない。

 期待するような目を向けないように。


「それで、フォー、ファイブ、シックス、セブンはどうするの? 元々ここに居たけど」

「もちろん、ボスに付いて行きますよ。外の世界は刺激がありそうだ」

「お館様とお出掛け~、お散歩~、旅行~」

「お館様と出動~、出勤~、出向~」

「もちろん、大将と共に行きますよ。傍で見ていないと、平気で無茶しそうですし。それに、姉妹たちと離れるのも嫌ですから」


 フォーたちは全員付いて来てくれるようだ。

 それは素直に嬉しい。ありがとう。


「それじゃ、早速向かうけど、忘れ物というか、何か持っていく物はある?」


 その問いに、ファイブ、シックス、セブンは、特に何もないと首を振る。

 しかし、フォーは思い当たる物があるようだ。


「広場に一時保管しているのを全部」

「必要ないから」


 ボスらしく、ピシャリと言い切ってとめた。

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