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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第十二章 過去へ
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満足するかどうかは当人次第

 その部屋には元々認識阻害がかけられていて、セミナスさんの体があるそうだ、と慌てているフォー、ファイブ、シックスに伝える。


「なるほど。認識阻害。……そういえば、時々造形の女神たちの姿が見えなくなる時があったけど、そういう事か」

「ずるいー! ずるいー! 秘密の場所なんて許せない!」

「粛清! 制裁! 粛清! 制裁!」


 フォーは納得しているのだが、ファイブとシックスはご立腹のようだ。

 なんで認識阻害なんかを?


⦅恐らくですが、特化七型のようにちょっかいをかけられて、その事に対して私の怒りを買わないようにするためかと⦆


 ……セブンのように?

 ……あぁ、フォー、ファイブ、シックスのちょっかいの事か。

 ペシペシ叩かれたりしないようにって事ね。


 確かに、フォーたちならしそうだ。

 フォーはなんとかして起こそうとするか、事情を知っていれば魔改造しそうだし、ファイブとシックスはセブンと同じように「起きなさーい!」とペシペシ叩きそうだ。


 ちなみにだけど、もしそういう事が起こっていたら?


⦅特化型たちは対大魔王戦に必要な戦力ですから何もしません。ですが、ある意味で造形の女神共は特化型、汎用型の親のようなモノですから、その責任は取っていただきます⦆


 その責任は重そうだ。

 きっと、造形の女神様たちの勘が働いたのかもしれない。

 セミナスさんの体に、迂闊に手を出されると自分たちの身が危険だと。


 だからこその認識阻害で、時の神様に戻す時間を伝えた時に一緒に居たから、その時間で認識阻害が解けるように設定した、という可能性が濃厚かな。


⦅同意見です⦆


 セミナスさんがそう思うって事は、確定だろうな、この考え。


 という訳で、早速その部屋に、エイトたち共に向かう事にした。

 場所に関しては、フォーたちに案内してもらう。

 ニセミチくんは俺との話も一区切りついたので、ゴーイチたちの様子を見に行くようだ。


 セミナスさんも待ちきれないだろうし、さっさと行こう。


⦅正しい判断です。ご褒美に、マスターには私の体を自由に弄る権利を差し上げます⦆


 いや、大丈夫です。

 必要ありません。


⦅ここはこうなって……あそこはああなって……と、好きに確認していただいて構いません。マスターには造形の女神共に詳細を伝えてもらいましたので、ある程度想像は出来ているかもしれませんが、やはりそこは聞くのと見るのでは、見るのと体験するのとでは大きく違いますので、心の赴くまま、欲望のままに弄っていただいて構いません。これもマスターにとって糧となるでしょう⦆


 いえ、大丈夫です。


⦅ですが、私の体は眠ったままですよ? 今なら誰も見ていませんので、好きなだけ触り放題ですが?⦆


 セミナスさん当人がガッツリ見ていますが?


⦅マスターがどこを触るかによって、性癖を知る事が出来ると思いまして⦆


 思いまして、じゃない。

 セミナスさんとそんな話をしている内に、目的の部屋に辿り着く。


 場所は、前に見かけた造形の女神様たちの個室の近く。

 近いのは……多分、移動距離が長いと面倒だからとか、そんな理由な気がする。


 でも確かに、研究所に来た時に通った通路なのに、この部屋の存在には気付かなかった。

 認識阻害……すごいな。


⦅私は気付いていましたが?⦆


 でしょうね。

 なら、教えてくれてもよかったんじゃない?


⦅あの段階で体を手に入れても使用する時がありません。まず、私の意思が体に移ったままだと、共に過去に行く事は出来ません。また、私の意思が体に移った場合、マスターに不利益な問題が発生するため、過去の出来事に関しては意味がなかったのです⦆


 不利益? どんな?


⦅私の意思が体にある場合、私の意思でASが起動しません。もちろん、マスターの意思での起動は出来ますが、私はマスターの中に共に居ないと起動出来ないようです。当然、起動後のASを動かす事も出来ません⦆


 それは……確かに不利益だ。

 でも、セミナスさんが体を手にする事で、大魔王にも対抗出来るそうだから、利益の方が大きいと思う。


 それに、やっぱりというか、ここまで一緒に居たんだから、セミナスさんが居てこそ、俺は本領を発揮出来るって事だね。


⦅……今の言葉はグッときました。心の記憶メモリーに深く刻んでおきます。マスターは私なしでは生きられなくなった、と⦆


 なんか曲解してません?


 という訳で、まずはセミナスさんの体を手に入れよう。

 ……言葉にすると酷いな、これ。


⦅心は既に手に入れていますからね⦆


 それには何も答えず、部屋の扉に近付く。

 扉は鉄扉だった。

 何人も入れさせないという意思の強さを感じる。


⦅いえ、見せかけです。そういう風に塗っているだけの木製です⦆


 やっぱり造形の女神様たちという事か。

 鉄の重みなんか一切感じずに、扉を開く事が出来た。

 室内は、地下の秘密研究所に近い雰囲気。


 四角い部屋の壁際は机と器具のような道具に埋め尽くされていて、中央にはセブンが眠っていたのと似たような台座がある。


 その台座の上で、一人の女性が横たわっていた。


⦅ふむ。きちんと仕上げられているか確認したいので近付いてください⦆


 わかった。

 というか、エイトたちが、わー! と中に入って室内にある物を弄り出した。

 いや、正確には、スリーより下の子たちが、だろうか。

 ワンとツゥは年長者っぽく、スリーたちの行動を見守っている。


 出来れば落ち着かせて欲しいんだけど……まぁ、それは俺にも無理だから諦めよう。

 それに、なんだかんだと言うべきか、セミナスさんの体に何かをしようとはしていないし。


 なので、セミナスさんが言うように、近付いて確認する。


 横たわっている女性の外見は、俺より少し上、二十代くらい。

 黒の長髪で、長い前髪で右片目が隠れているが、それでも芸術品のような美しい顔立ちが損なわれる事はなかった。


 何より、眼鏡をつけていて、非常によく似合っている。


 体付きの方は均整が取れていて、煌びやかな黒いドレスを身に纏っていた。

 気になるのは、その近くに置かれている、先端に大きな宝石が付けられた黒い錫杖。


 それを合わせた姿を想像すると……どこかの女王か王女のようだ。

 しかも、威圧……じゃなくて威厳がありそう。


 ……どうなんですか? セミナスさん。


⦅問題ありません。注文通りです⦆


 どうやら満足したようだ。

 きっとこの事を知れば、造形の女神様たちはホッと胸を撫で下ろすのは間違いない。

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― 新着の感想 ―
[一言] アキミチくんの性癖が見事に反映されてますねぇ…(*´▽`*)
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