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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第十二章 過去へ
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たった一言で終わる話もある

 造形の女神様たちが、俺に無断で俺に模した家事専用の神造生命体ホムンクルスを造っていた。

 その事に対して何かしらの制裁をしたいと思っていると。


⦅かしこまりました。まずは、過去で与えた道具類と、その道具類によって開発された運動器具ダイエットマシーンが各部屋にありますので、それらを破壊、もしくは神共が使えないように没収する事を提案します⦆


 セミナスさんがそう言ってきた。

 有効なのは間違いない。

 とりあえず、破壊は俺に向かないので、没収しようと思う。


 それでも足りないような気がするが、目の前に居ない以上、今はこれが限界だ。

 いや、待てよ。

 もう一度過去に戻って――。


⦅時の神が封印されていて、特化七型の溜め込んでいた魔力が亡くなった以上、現状で時間移動は不可能です⦆


 手段がないか。

 非常に残念だ。


 それにしても……なるほどね。

 あの時、造形の女神様たちがジロジロと俺を見ていたのは、この神造生命体を造るためだったのか。


⦅はい⦆


 で、セミナスさんも知っていた、と。

 これってかなりの影響だと思うけど?


⦅悪い影響ではありませんので、スルーしました。それに、見分けがつかないくらいの精巧な出来栄えを。どうやら認めるしかないようです。造形の女神たちの腕前を⦆


 確かに精巧だけど、別に認めなくても良いと思うよ。


⦅造形の女神たちには、『公式』の名を授けます⦆


 いや、授けないでください。

 俺は認めていません。


 しかし、こうなると、この俺を模した神造生命体――ニセミチはどうすれば良いんだ?

 どうしたものかと思っていると、ゴーイチたちが話しかけてくる。


「アッキー。ニセミチハ悪クナイ。悪イノハ、勝手ニアッキーヲ模シタ、ココノ神様タチノ方」

「ソレニ、ニセミチハ、ワタシタチノメンテナンスモ、シッカリ行ッテクレル!」

「ニセミチガ居タ事デ、ワタシタチ寂シクナカッタ! アッキーニ似テイルカラ!」

「ゴーイチたち……」


 ニセミチの弁護を行うゴーイチたち。

 多分、俺がどういう判断をするのかわからず、最悪破棄される可能性もあると考えての行動だろう。


 現に、ニセミチはゴーイチたちの陰に隠れて、不安そうに俺を見ている。

 俺にそこまでの権限があるとでも思っているんだろうか?


⦅ありますよ⦆


 あるの?


⦅はい。この場に居る者たちの忠誠はマスターに集められています。つまり、実質ここのトップのようなモノです⦆


 いや、ここのトップは嫌だな。

 色々と面倒が多そうだし、変な責任も負わされそうだ。

 フォーや造形の女神様たちの造ったモノに対して、毎日色んなところで謝罪する未来が見える。


⦅否定はしません⦆


 してください。

 でもまぁ、言いたい事はなんとなくわかる。

 つまり、ニセミチの処遇は俺の意思次第って事なのね。


 そうなると……。


「わかった。俺が特に何かするような事はしない。別に問題行動を起こしている訳でもなさそうだし。ゴーイチたちのメンテナンスに関しては、素直に感謝しかないしね」

「……いいんですか? 自分の存在を認めてくれるんですか?」


 ニセミチが不安そうに尋ねてくる。


「いや、認めるとか認めないとかじゃなくて、現に一つの生命として存在しているんだから、俺がどうこう言う事じゃないでしょ?」

「いえ、そんな事はありません!」


 その言葉を表現するように、ニコイチは両手を握って顔を振る。


⦅普通に「認める」と言えば、それで納得しますので、話が終わります⦆


 それはそれで俺はなんか嫌なんだけど……まぁ、それで丸く収まるのなら仕方ない。


「わかった。認める」

「ありがとうございます!」


 嬉しそうにそう答えたニセミチは、エイトたち、ゴーイチたちを交えて、「ばんざーい! ばんざーい!」と喜びを表現した。

 俺としては、自分とそっくりなのが、そういう行動を取ると少し複雑な気持ちになる。


 ただ、そんなニセミチに、俺は大事な事を伝えないといけない。


「ところでニセミチくん」

「はい。呼び捨てでも構いませんよ」

「う~ん……いや、どことなく「くん」付けの方が合いそうだから、「くん」付けでいくよ。じゃなくて、一つ言いたい事があるんだけど、いいかな?」

「はい。なんですか?」


 ニセミチが聞く体勢になったので、しっかりと言う。


「俺に関するエイトたちの発言は、全て消去で」

「わかりました!」

『えっ!』


 ニセミチくんはかしこまりましたと敬礼する一方、エイトたちは驚きの表情を浮かべる。

 いや、それはそうでしょ。

 少しだけ聞こえていたけど、あれは妄想の類だったよね?


「あっ、ゴーイチたちから聞いていたら、そっちは大丈夫だから」

「わかりました!」


 馬鹿な! とエイトたちがゴーイチたちを見て、ゴーイチたちはハイタッチしていた。

 ゴーイチたちなら、きちんと伝えていると確信している。


「それでは、やはり本物オリジナルからも色々と聞きたいのですが……構わないですか?」


 ニセミチくんが恐る恐る尋ねてくる。


⦅お答えしましょう⦆


 いや、セミナスさんが答えるんじゃないから。

 食堂という事もあって、ニセミチくんと対面に座って、尋ねられる質問を丁寧に答えていく。

 その間、エイトたちとゴーイチたちは自由にさせておいた。


     ―――


 食堂でニセミチくんからの質問に答えていると、エイトたちの姿がない事に気付く。

 自由にさせていたので、多分研究所内を見物しているんだろうなと思う。

 特に、エイト、ワン、ツゥ、スリーは研究所の外に居たから、ここでの記憶がないか、薄いだろうし。


 ちなみにゴーイチたちは、そろそろ食事の準備をしないと、とキッチンに行っている。


 そうして質問に答えつつ、偶にセミナスさんが変な回答を挟んでそれを華麗にスルーしていると、ドタドタと走る音がいくつも聞こえてきた。

 どんどん大きくなっていくので、こちらに近付いて来ているのがわかる。


「大変大変! ボス! 大変! なんか我輩の知らない部屋があるんだけど!」

「知らなーい! 知らなーい!」

「記憶になーい! 記憶になーい!」


 フォー、ファイブ、シックスが駆け込んできた。

 次いで、エイトたちも。


 ……というか、知らない部屋?

 それを俺に聞かれても困るんだけど。


⦅あっ⦆


 あっ?

 ……どうやら、心当たりがあるようですね? セミナスさん。


⦅はい。念のため確認したところ、強力な認識阻害の魔法がかけられていて、その効果が切れたようです⦆


 ……そんな魔法がかけられている部屋とか、危険な予感しかしない。


⦅そのような事はありません。私の体が安置されている部屋なのですから⦆


 危険な予感は、あながち間違っていないような気がする。

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