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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第十二章 過去へ
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今わからなくても、あとあとわかる事もある

 ワンたちは食堂に居たので、エイトと俺にそっくりな男性もそちらに連れて行って合流。

 まずは俺が過去に行ってからの一時間の詳しい話を聞く……前に、ゴーイチたちと感動の再会を果たす。


 ゴーイチたちは変わらぬ姿で、食堂で動いていた。


「ゴ、ゴーイチ! ゴーニ! ゴーサン!」

「「「……アッキー? 本物ノ?」」」


 偽物はそこに居るので、確かに俺が本物だ。

 だってそうだろ! 俺たちの間には、確かな友情キズナがあるんだから!


「ソウ! 本物ノアッキート会ウノハ、久シ振リ!」

「真ナル忠誠ハ、本物ノアッキーニ!」

「本当ニ久シ振リ! ヤット、会エタ!」


 ゴーイチたちも喜びを露わにしている。

 ひしっ! と抱き合って友情キズナを確認。


 すると、エイトが一言。


「……ご主人様がエイトたちとの再会より優先しているような気がします」


 エイトの言葉に、ワンたちがそうだそうだと追随してくる。


「いや、そんな事はないけど?」

「では、それを証明してください」


 そう言って、エイトが両手を広げる。

 そのエイトの後ろに、ワンたちが順番待ちのように一列に並ぶ。


 打ち合わせでもしていたかのように行動が速いな。

 これが姉妹の絆か。


「いや、体感的に、エイトたちは一時間だけだよね? そこまでやるのは過剰じゃない?」

「ご主人様。大切なのは時間ではありません。想いの強さです」


 そう言うエイトの目は真剣そのものだった。

 ワンたちも同様。


 ……これも過去に行った事による影響か。


⦅違います⦆


 全く関係ないらしい。


⦅ちなみにですが、私が体を手にした時も同様の事を求めますので、よろしくお願いします⦆


 え? セミナスさんは俺とずっと一緒だったのに?


⦅関係ありません⦆


 ですよね。

 という訳で、ゴーイチたちと同じように喜びを露わにする。

 まぁ、エイトたちが変になっていなくて、ホッと安堵したという部分もあるしね。


 ただし、それが終わればもう関係ない。

 エイトたちとゴーイチたちに厳しく追及する。


「それで、こいつはなんなの?」


 俺が指差すのは、ふんふんと嬉しそうに頷きながら、先ほどまでの一連の出来事を見ていた俺の偽物。


「それはですね……」


 ………………。

 ………………。

 エイトたちの説明によると、こんな感じだった。


     ―――


 明道が過去へと向かったあと、エイトたちの背後に人が現れた。

 本来であれば、ここに敵は現れない。


 しかし、何事にも絶対はなく、地下研究所に来るまでの間に、自分たち以外の姿は見なかったのだ。

 気配を察したエイトたちは、即座に戦闘態勢に移行しつつ振り返る。


 が、そこに居た者の姿を見て、エイトたちは動きをとめて困惑した。

 何しろ、そこに居たのは、エイトたちの主である明道だったのだ。


 もう戻ってきたのかとエイトたちは思ったのだが、どことなく雰囲気が違う。

 なので、エイト、ワン、ツゥ、スリーは警戒したが、フォー、ファイブ、シックス、セブンは違った。


 明道? に向けて気軽に声をかける。


「なんだ、『ニセミチ』でしたか」

「急に現れるから驚いた!」

「もう少しでお館様とニアミスするところだった」

「これが……確かに似ている」


 エイトたちがフォーたちに視線を向ける。


『……ニセミチ?』


 どういう事ですか? と視線で問うと、フォーがにんまりと笑みを浮かべた。


「彼こそ! この研究所が誇る最高傑作! まぁ、我輩がアレコレ言っても仕方ないし、ここは本人に言ってもらうのが一番でしょ! なので、ほら。自己紹介」

「あっ、はい」


 フォーに催促されて、明道に似た存在がエイトたちの前に立つ。


「どうも、初めまして。自分、皆さんの主であるアキミチ様を模して製作された神造生命体ホムンクルスです。正式名称は『対家事専用完璧系魔導兵器・特化型』。通称は『AKIMICHI』。ですが、これだと本物オリジナルと混同しますので、気軽に『ニセミチ』と呼んでください。造形の女神様たちは、そう呼んでいました。立場的には、皆さんの弟でしょうか?」

「いや、ちょっと待て! そうは言うが、あたいたちの知識にそんな存在はないぞ!」


 そこはやはり長女なのか、ワンが最初にそう言う。

 エイト、ツゥ、スリーも同意するように頷いた。


「あぁ、それは仕方ない。元々製作が間に合うかわからなかったそうだし、ニセミチが製作されたのは、エイトが造られたあとだから。研究所の外で眠っていた四人は知らなくて当然さ」


 フォーがそう補足を入れ、ファイブとシックスがその通りだと頷く。


「うちも眠っていたけど知っているのは何故?」


 セブンがそう尋ねる。

 答えるのは、フォー。


「あぁ、それはニセミチも度々ここの掃除をしていたし、セブンは眠っていても周辺の状況を把握していた節があるから、それでじゃないかな? もしくは、研究所で眠らせるから、混乱が少ないように知識だけ残していたか」

「多分、前者のような気がするわ」


 セブンは、そんなモノかと納得した。

 と、そこで、ツゥが気になった事をニセミチに尋ねる。


「戦闘用ではないんですか?」

「はい。炊事洗濯清掃と、家事スキルに特化しています。戦闘は無理ですね。これまでは、封印されるまで造形の女神様たちの支援を行い、そのあとはフォー様たちで、今後は皆さんの支援をしますので、よろしくお願いします」


 そんな挨拶と共に、ニセミチがぺこぺこと頭を下げる。

 明道とは違うその態度に、フォーたちは特に気にしていないようだが、エイトたちの方は困惑した。


 これまで、エイトたちはフォーたちよりも長く明道と接してきたのだ。

 だからこそ、強く違和感を覚えるのも仕方ない。

 何より、明道の偽物を認めても良いのか? と考えてもおかしくなかった。


 だが、そこは抜かりないと言うべきか、造ったのが造形の女神たちである以上、手は既に打たれていた。


 ニセミチが、困惑するエイトたちに向けて口を開く。


「実は、これまで本物オリジナルと接してきた皆さんに、本物オリジナルがどのような人なのかを聞きたかったのです」

「お兄ちゃんの事を?」


 スリーが首を傾げながら尋ねる。


「はい。やはり、自分の元となった人だからでしょうか、どのような人物なのか……それこそ、神様に模された人物なのですから、どれだけ偉大な方なのかを知りたいのです。造形の女神様たちの話では要領を得なくて」


 ぴくり、とエイトたちが反応する。


「どうか、自分に本物オリジナルの事を教えてください」


 そう言ったニセミチが、エイトたちを順々に見ていく。


「ワン姉さん! ツゥ姉さん! スリー姉さん! エイト姉さん!」

『……姉さん』


 エイトたちの心の何かにクリティカルヒットした。


 明道の事を知りたい。

 知りたいなら教えてやろう、という精神が、エイトたちの中で発せられた。


「良いでしょう。ご主人様が如何に素晴らしいか……それこそ、エイトたちをどれだけ愛しているかを教えてあげましょう」


 エイトの宣言に、ワン、ツゥ、スリーから異論は上がらなかった。


 そして、場所を移し、食堂でゴーレムたちと特に何も起こらず合流。

 隣室で、エイトたちは個別に、明道の事をニセミチに語る。


 残りの者たちは、主に、漸くセブンが眠りから覚めた事を話題にしながら、食堂でまったりと過ごしながら。


     ―――


 で、今に至る。

 大体、そんな感じだった。


 なるほど。フォーが最高傑作って言っていたのはコレか。

 それが研究所の修繕もしているみたいな事も言っていたな。


 ……とりあえず、造形の女神様たちには、説教と物理的制裁を与えたい。

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