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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第十二章 過去へ
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簡単に言えば、泥仕合のようなモノ

 思いのほか、時の神様は直ぐに目覚めた。

 ババッ! と立ち上がり、周囲の様子を窺い出す。

 突然の事でこちらも反応が遅れた事は謝るけど、とりあえず長テーブルの上から下りて欲しい。


 少しだけ沈黙が流れると、時の神様が口を開く。


「起きたら見知らぬ場所……異世界転移かっ!」


 おっと、いきなり変な事を言い出したな。

 いや、この状況なら仕方ないのか?

 寝て起きたら知らない場所って事は、そう考えてもおかしくない。


 には、ならないな。

 えっと、一応確認だけど、本物だよね?


⦅はい。目の前に居るのが時の神です⦆


 ……どうしよう。

 会話は成り立つんだろうか?


 二の足を踏んでいると、造形の女神様が声をかける。


「何馬鹿な事を言ってんの。ここは私たちの研究所の食堂よ」


 造形の女神様たちは呆れた感じで時の神様を見ているが、俺からすればどっちもどっちという感想しか出てこない。

 時の神様が造形の女神様を見る。


「……はて? 俺の知っている顔に似ているな。それに言葉が通じる。……そうか! 世界を渡った際に、『言語理解』系のスキルを得たのか!」


 駄目だ。現実が見えていない。

 まだ眠っているんじゃないだろうか?

 造形の女神様たちは、んな訳あるか、みたいな表情で時の神様を見ている。


 そして、造形の女神様たちは諦めた。

 面倒だとでも思ったのだろう。

 この場から出て行こうとしたので、俺は急いで立ち塞がる。


 しかし、相手は三柱。

 人数的に不利なので、ゴーイチたちに援護を求めると……ゴーイチたちは直ぐに造形の女神様たちを物理的に取り押さえた。


「「「痛い痛い痛い!」」」

「「「暴レルト余計痛イデスヨ」」」


 あえて痛くしているような気がする。

 どことなくストレスを発散しているように見えなくもない。


「というか、ちょっと待って! 優しくして! というか、なんでゴーレムたちが私たちを取り押さえるのよ!」

「そ、そうだ! お前たちの主は俺たちのはずだ! ギブギブ!」

「離しなさい! ……ちょっ、全然言う事を聞かない! タイム! タイム!」

「「「真ナル忠誠ハ、アッキーニ捧ゲテイマス」」」


 あっ、それを言っちゃうと。


「「「何ぃっ!」」」


 造形の女神様たちが俺を睨む。


「一体いつの間に! そういえば、おかしいと思っていた! つい先日だって野菜を残しただけで説教かましてきたし!」

「俺たちの目を盗んで、まさかゴーレムたちを手中に収めるとは!」

「裏切りです! 背信行為です!」

「いや、俺はゴーイチたちのメンテナンスをしただけだから。寧ろ、普段からきちんと造形の女神様たちがメンテナンスをしていれば、こうはならなかったと思いますけど」


 俺がそう説明すると、造形の女神様たちは露骨に視線を逸らす。


「いや、まぁ……ね。ほら」

「俺たちも忙しくて? みたいな」

「気にはかけていたんですよ? その、本当に……」


 なら、俺の目を見て言って欲しい。

 と、そこで、笑い声が周囲に響く。


「あはははははっ! ゴーレムに裏切られるとかっ! 造形の女神たち、面白過ぎる!」


 時の神様である。

 それはもう全力で笑っていたのだが、そこで気付く。


「あはは……はは………………はっ! まさか、本当に造形の女神たちなのか! いや、ゴーレムに謀反を起こされるとか、本物じゃないとあり得ない! という事は……異世界転移していないのかっ!」


 気付いた事は嬉しいが、ものすごくショックを受けている。

 異世界転移したいのだろうか?

 まぁ、俺はしたけど。


 ただ、時の神様の笑いを許せない方たちが居た。


「放せ! 放して! 殴る! 時の神を殴る!」

「許せない! あいつ、この状況を見て笑いやがった!」

「時の神と話し合いを求めます! 物理的な話し合いを!」


 造形の女神様たちが、俺に懇願してくる。

 ゴーイチたちも、どうします? と俺に目線で窺ってきた。


「別に構いませんけど……勝てるんですか?」


 多分だけど、物理的に強くない神様たちですよね?


「大丈夫。私たちも大して強くないけど」

「それは時の神も同じ」

「寝てばっかりですから」


 なるほど。

 という訳で、ゴーイチたちにお願いして、造形の女神様たちを解放してもらう。

 解放された瞬間、造形の女神様たちは飛び上がって、時の神様に襲いかかった。


 人数差もあるので、優勢なのは造形の女神様たちだが、時の神様も頑張っている。

 とりあえず、終わるのを待つか。

 ゴーイチたちと、のんびりと待った。


     ―――


「話は聞いた。未来に帰るために俺の力が必要だそうだな。わかった。協力しよう」


 造形の女神様たちとの戦いが終わった時の神様が、俺に向けてそう言う。

 どうやら、造形の女神様たちが戦いながら説明してくれたようだ。


 ありがとう。

 そこは感謝の言葉を伝えます。


 ただ、そう言う時の神様は寝そべったまま。

 造形の女神様たちも同様。

 決着としては、引き分けだろうか。


「くそぉ……周辺環境がよくなって、引きこもっていなければ」

「新しい道具を使うのが楽しくて、運動を怠っていなければ」

「ダイエットで体力が落ちていなければ」


 どうやら、最近得たモノも結果に影響していたらしい。

 それがなければ?


⦅引き分けです⦆


 関係なかったっぽい。

 でしょうね、と思ってはいたけど。


 だからこそ、ここで思うべきは、時の神様が意外と強かった、という事だろう。


「睡眠学習……いや、VRで鍛えたような感じかな」


 夢の中で鍛えました、という事らしい。

 本当に? と疑ってしまいそうだが、実際に人数差を覆して引き分けた訳だし、否定もしづらい。


「それで、協力してくれるそうですけど、いつぐらいに可能ですか?」

「別に今からでも……いや、少し休憩したら、かな?」

「ですよね」


 相当無理したんだろうな。

 手足、ぷるぷる震えているし。

 それは造形の女神様たちも同様だけど。


 なので、一旦休憩を入れる。

 その間に、俺は別れの挨拶を交わしておいた。


「……未来で、会おうね」

「「「アッキー!」」」


 ゴーイチたちと抱き合う。

 造形の女神様たちも何か言いたそうだが、今は口を開くのもつらそうだ。

 代わりに、親指を立ててきた、と思ったら口を開く。


「……今後のために性癖を」

「そのまま眠れ」


 未来に戻って直ぐ会えない事に対して、何も思わなくなった。

 まだ封印されている神様たちだし、そのまま封印させておいた方が世界のためになるんじゃないかと考えてしまう。


 まぁ、大魔王との事がどうにかならない限り、解放はしないかな。

 直接的な戦力に数えられないし。


 そして、時の神様の体力が回復した頃には造形の女神様たちも復活し、出来る事なら過去に来た時と同じ場所の方が良いと時の神様が言うので、地下研究所へと向かう。


 セミナスさんに教えてもらった戻る時間を伝え、造形の女神様たちとゴーイチたちに見守られながら、未来へと帰される。


「『瞼に映し出される回顧 心に刻まれる追憶 地に足つける過去 時空移動タイムスリップ』」


 時の神様の詠唱が終わると同時に、視界がぐにゃりと歪む。

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