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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第十二章 過去へ
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いくらでも寝れそうな時ってない?

 ゴーイチたちから、時の神様が届けられたと教えられたので、見に行こうと……ちょっと待った。


「……届けられた?」


 こういう場合、来たって言うんじゃないの?

 あっ、そういえば、ずっと寝ているんだっけ。

 起こす事が出来ずに、そのまま運んできたって事かな?


 というか、起きてないって事は、起こさないといけないの?

 なんか面倒な事になる?


⦅いえ、大丈夫です。問題ありません。既に起こす方法は確立されていますので。そのための準備も行われているようです⦆


 という事らしいので、早速見に行く。

 ゴーイチたちの案内で向かった先は……食堂だった。

 ……なんで?


⦅準備がしやすいからでしょう⦆


 ……準備。そう、準備。

 何か手伝った方が良い?


⦅いえ、大丈夫です。生命の女神が行っていますし、そろそろ終わる頃でしょう⦆


 そうなんだ。

 なら、まずは時の神様を見に行くか、と食堂に入る。


 マナーの問題とか色々言いたい事はあるが、長テーブルの上で眠っている男性が居た。

 とりあえず、造形の女神様と製作の神様が居たので尋ねる。


「この男性が?」

「そう。時の神」

「寝てばっかりのヤツ」


 言質が取れてしまったので、確認。


 先にポンポンが付いている三角帽子を被り、ゆったりとしたパジャマを着ている。

 三角帽子から飛び出している髪色は白色で、眠っているので確証は得られないが、端正な顔立ちの、二十代くらいの男性。


 細身で、ものすごく綺麗な姿勢で眠っている。

 ちなみに裸足。


「……これが?」

「「そう」」

「というか、テーブルの上で寝させて良いんですか? 食事を取るところでしょ?」

「ふっふっふっ。その辺は抜かりないわ。私たちが食事で普段使っているテーブルはあっち。このテーブルは特に使っていないから」

「でも、テーブルの上ですよね?」

「仕方ないんだよ、アキミチ。この研究所内で自分たち以外の人を寝させるところとなると、この食堂のテーブルか、実験台しかないから。当人が構わないなら、床に寝させるけどね」


 長テーブルの上は、まだマシな部類だったのか。

 寧ろ、この研究所内だと精一杯の歓待の部類じゃないだろうか?

 それが、長テーブルの上って……。


 いや、深くは考えまい。

 別にここで永住する訳じゃないしね。

 寧ろ、永住する事になるのなら、セミナスさんに頼んで大改革するよ。


⦅お望みでしたら行いますが? もちろん、未来に帰ってからですが⦆


 いえ、大丈夫です。

 永住した場合って思ったでしょ。


⦅ですから、ここをマスターの統括地とする意味も込めて、です⦆


 いえ、要りません。

 ここを造形の女神様たちから奪うとなると、造形の女神様たちを野に放つ事になりかねない。

 それは危険な気がする。


⦅正しい判断かと⦆


 よりにもよってセミナスさんのお墨付きをもらえるとは。

 本当に危険だったようだ。


 と、そこで生命の女神様が食堂に入って来る。

 その手には、洗濯バサミと、哺乳瓶が握られていた。


 指の間から見える哺乳瓶の中身がおかしい。

 青い……いや、緑色も交ざっている感じ。


 どう見えても、まともなモノには見えない。

 この流れで言えば、アレを時の神様に飲ませるんだよね?

 哺乳瓶というだけでも、絵面的にアウトなのに。


⦅マスターは飲まないようにしてください⦆


 セミナスさんから注意されるが、元々飲む気は一切ない。

 というか、洗濯バサミは何?


「それじゃ、早速起こしますね」


 生命の女神様がニッコリと笑って、洗濯バサミで時の神様の鼻をつまむ。

 時の神様は無抵抗というか、反応すらない。

 鼻……痛くないのかな?


 そう思っていると、造形の女神様と製作の神様が時の神様を物理的に押さえる。

 追加で、ゴーイチたちも同じように押さえ始めた。

 えっと……なんとなく想像が出来るけど、暴れるのかな?


 全員がしっかりと押さえているのを確認すると、生命の女神様が流れるような動きで時の神様の口に哺乳瓶の先を差し込む。


「えっと、生命の女神様。それは?」

「時の神を起こすための劇薬ドリンクです」

「それって……中身は?」

「ぶち込んだ物が多過ぎてコレと言った特定の物を挙げるのは難しいですね」

「………………ちなみにだけど、味は?」

「苦くて、辛くて、不味い。そんな飲み物です」


 言い切ると同時に、生命の女神様が哺乳瓶をグッと一気に握る。

 中身が一気に押し出されて、時の神様の口の中へ。

 時の神様の喉がゴクリと動いたかと思うと、カッ! と目が見開かれた。


「不味い! 不味い! 不味い! 腐る! 舌が腐る! 流したい! 口の中を洗い流したい!」


 時の神様が暴れようと、口元に手を持っていこうとするが、完全に押さえつけられているため、バンバンとテーブルを叩くようにしか動かせていない。


「大丈夫! 体に悪いモノではないから!」


 生命の女神様がそう説得して、哺乳瓶を更に強く握って中身を押し出す。


「死ぬ! 死ぬ! 死ぬ!」


 時の神様の動きが更に激しくなるが、押さえつけている力の方が強いようだ。

 というよりは、ゴーイチたちが完全に押さえ込んでいる。

 造形の女神様と製作の神様は、寧ろ邪魔なんじゃないだろうか?


 と思っていると、急に静かになった。

 もう誰も時の神様を押さえつけていない。

 生命の女神様も、哺乳瓶を回収している。


 けれど、時の神様は一切動かなかった。

 誰もその事に触れない。

 ただただ黙している。


「まさか……勢い余って? 殺神事件に?」


 犯人……いや、犯神は、生命の女神様。

 凶器は、あの哺乳瓶の液体かな。


 そんな俺の呟きに、造形の女神様と製作の神様、それとゴーイチたちの視線が、生命の女神様に向けられる。


「え? いや、ちょっ! なんで私が殺した事になるんですか! 殺していませんよ! というか、これが正しい手順である事は、あなたたちならわかりますよね?」


 生命の女神様が自ら行った弁護に、そうだった! とみんなが手を打つ。

 どういう事なのか、説明して欲しいんだけど。


「今は眠っているのではありません。気絶しているのです。少しすれば起きますので、その時にアキミチを未来に送り帰すようにお願いすれば良いのです」


 生命の女神様が、そう説明してくれる。

 なるほど。一旦気絶を挟んだ訳か。

 まぁ、よくわからないけど。


 とりあえず、これで少しすれば起きるそうなので、このまま待つ事にした。

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