人によっては心に届くと思う行動
「どうして助けてくれなかったのか、説明を要求する! それと、謝罪も!」
「そうだ! そうだ! 神を見捨てるとは、言語道断! もう少し敬う気持ちを持つべきだ!」
ゴーイチたちからのお叱りから解放された瞬間から、造形の女神様と製作の神様が俺に詰め寄って文句を言ってくる。
……どうして俺に言いにくるの?
リビングというか待合室っぽいところで、ぼーっと外を眺めていただけなのに。
いや、確かに助けなかったのは間違い。
けどそれは――。
「でも、自業自得でしょ?」
「今はそういう問題じゃないの!」
「そうだ! そこを議題にしている訳じゃない!」
いや、それが発端で、一番というか唯一の原因だと思うんだけど。
「それじゃあ、何を言いたいんですか?」
「なんて言うの……こう……大事に扱われたい、みたいな」
「もっと気にして欲しいし、気にかけて欲しい……優しくされたい」
………………。
………………。
とりあえず、頭を撫でてみる。
「……でへへ」
「……ふへへ」
なんか満足そうな表情を浮かべている。
これで良いのか? と思うのだが、よくない方が居た。
⦅私ですらまだナデナデしてもらっていないのに……それをこんな駄神たちに……駄神如きが。許せません。少々調子に乗せ過ぎたようですね。そういう行いは、誰を敵に回すのかを、身を以って教えなければいけません。これも……私の務め!⦆
いや、そんな務めはなかったと思いますけど?
というか、過剰に反応し過ぎじゃないかな?
⦅では、私が体を手に入れたら、ナデナデしていただけますか?⦆
……なんの理由もなしに?
⦅わかりました。造形の女神と製作の神が泣いて謝るようにしましょう。もちろん、泣いて謝っても私は許しません⦆
待って待って、ちょっと待って。
わかった。わかったから。
撫でるから、それは一旦ストップで。
⦅ありがとうございます。その……マスターなら、頭だけではなく、好きなところを撫でても構いませんので⦆
どういうデレかた?
とりあえず、妙な約束をさせられた事だけはわかった。
一方、撫でられ続けていた造形の女神様と製作の神様は――。
「復活! ナデナデから愛情を感じました! 私、今、輝いている!」
勝手な愛情を感じないでください。
それと、輝いていると思うのは、そこの窓から漏れる陽の光の影響だと思います。
「なんだろう……久し振りに頭を撫でられると……なんか、泣きそう……」
そう言った製作の神様の目の辺りから、一筋の水が流れる。
……深くは聞かない。
それもきっと、優しくするって事だ。
⦅そうですね。これ以上、何かするのが少し可哀想に思えてきました。現状維持とします⦆
うん。そうしてあげてください。
ただ、造形の女神様、製作の神様ときて、この女神様を忘れてはいけない。
「生命の女神様は、何やらご満悦ですね?」
造形の女神様と製作の神様が俺のところに駆け込んで来て、生命の女神様が来ない訳がない。
当然一緒に来ていたのだが、生命の女神様だけはのほほんとでも言うように佇んでいたのだ。
「わかりますか? そうなんです。実はあの方法を教えてもらってから実践していまして……数百グラム落ちたんです」
嬉しそうに言う生命の女神様。
それは誤差じゃ? とは言えなかった。
いや、言わなかった。
減ったと実感する事で自信となり、これからも頑張っていく活力となって、本当に減っていくのだ。
それを邪魔するのは無粋というモノ。
だから、俺がここで言うべき言葉は――。
「頑張ってください」
「はい! 頑張ります!」
これで良いのである。
というか、こっちも神様たちに言うべき事があるんだった。
「えっと、それでですね、用事も済みましたので、そろそろ未来に戻ろうと思っているんですけど」
「「「お疲れ様でーす。お元気でー」」」
三柱揃って一礼する。
いやいや、早い早い。
それに、別にそこまで仲良くなったとは思わないけど、もう少し別れを惜しんで欲しいというか、そういう仕草を少しぐらい見せてくれも良いんじゃないだろうか?
と、思っていたら――。
「ちょっと待って」
造形の女神様から待ったが入る。
もしかして、お土産でも渡してくれるのだろうか?
いや、なんか悪いね。
そう思っていたんだけど、どうも違うようだ。
造形の女神様が、製作の神様と生命の女神様にコソコソと内緒話を行い、どこかに移動する訳でもなく、ただただ俺をジッと見てくる。
……え? 何これ?
しかも、俺を中心とした円を描くように、少しずつ移動していく。
どういう事?
⦅このままでお願いします⦆
いや、まぁ、セミナスさんがそう言うなら、そうするけど……出来れば、神様たちのこの謎の行動の意味を知りたい。
⦅この行動による結果が実を結ぶのは、未来での事です⦆
未来に戻ればわかるって事かな?
そういうしている内に、造形の女神様たちが一周し、そこで謎の行動は終わった。
「「「ふぅ~……」」」
満足げな雰囲気と共に。
本当に意味がわからん。
「「「じゃ、改めてお元気で」」」
「いや、まだ帰りませんよ。というか、帰れませんよ」
「「「どういう事?」」」
「どういう事も何も、帰るためには時の神様にお願いしないといけないみたいなんで、皆さんに呼んで来て欲しいんです」
「「「………………あぁ!」」」
納得したように、三柱揃って手をポンと打つ。
「じゃあ、連絡を取りますね」
「起きてんの? あいつ」
「さぁ? 起きている方が珍しいですし。まぁ、眠っていれば、その状態で輸送してもらえば、あとはアキミチが起こすのでは?」
「「それもそうか」」
……なんだろう。
妙に手馴れているというか、さらっと俺に任せてきたな。
まぁ、別に構わないんだけど。
そして連絡を取ってもらったのだが……やはりと言うべきか、眠っているそうだ。
で、俺の事を明かす訳にもいかないので、どうにかこうにか理由を付けてもらって、輸送してもらう事になったのだが、着くまでに数日かかるそうだ。
まぁ、数日待つくらいなら問題ない。
時の神様が着くまでの数日間。
ゴーイチたちと親睦を深め、なにかと絡んでくる造形の女神様たちは、セミナスさんの指示通りに対応した。
……というか、セミナスさん指示通りって、適当にあしらっているように見えるんだけど?
⦅その通りですが、何か?⦆
いや、大丈夫なの?
⦅問題ありません。それに、そうでもしないと調子に乗せ過ぎてしまいますので⦆
そういう事なら仕方ない。
造形の女神様たちが調子に乗ると、エイトたちがどうなるかわからないしね。




