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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第三章 ラメゼリア王国編
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これまで要らなかったけど、急に必要になる時ってあるよね

 ……とりあえずわかった事がある。

 ミノタウロス倒したとか、セミナスさんが有能過ぎるとか、シャインさんのしごきに耐えたとか、どこかで調子に乗っていたのかもしれない。

 未だ俺は、まとも以上の装備がなければ、普通の魔物すら倒す事が出来ないのだ。

 バッタすら倒せない。


 脚力には自信が付いたけど。

 やっぱり、この大魔王軍と戦争中の異世界で生き抜くためには、スキル「回避防御術」の熟練度を上げていくしかない。

 まぁ、熟練度とかあるかわからないけど、そこにあるだけでは使いこなす事は出来ないような気がする。

 何より、今のままで神様解放が続けられるとは思えない。

 なので。


「これからも鍛錬をお願いします、インジャオさん」

「良い心掛けだと思うよ。アキミチの生存確率を少しでも上げられるように、自分も出来るだけの事をするよ」

「ありがとうございます」


 インジャオさんと笑みを浮かべ合う。

 まぁ、インジャオさんは骸骨だから、雰囲気でそうかな? と思っただけだけど。

 あっ、歯の隙間に青のり……いや、鉄くずが。

 さっきまで噛んでいたのかな?


「頑張ってね、アキミチ」

「はい! 頑張ります!」


 ウルルさんからの声援に応える。

 その手にはキラキラと輝く鉄の棒があった。

 まだ噛ませるつもりなのかもしれない。

 ……おやつ感覚?


 すると、アドルさんが介入してきた。


「待て待て。そういう事なら、私も協力しようではないか」

「「いえ、結構です」」


 インジャオさんと揃った。

 師弟として、心は一つ。

 というか、そもそもアドルさんの師事はご遠慮して欲しい。

 何故なら――。


「アドルさんの指示はこう……適当というか的外れっぽい感じがするし、そもそも師匠はインジャオさんと決めているので。朝弱いし」

「指導が混在するという事は、そのまま要らぬ混乱を招きやすいですからね。今回は自分に譲って下さいよ。アドル様は朝弱いですし」

「執拗に朝弱いと! そんなに重要!」

「「………………」」


 ………………まぁ、ほら……ね……。

 あっ! そうそう。

 朝から指導して欲しい時に出来ないのは困るから……とか?


「………………ジョギングでもすれば良いではないか」


 健康かっ!

 そんな感じで拗ねるアドルさんを慰めた。

 インジャオさんも、ほら……と、アドルさんから見えない位置で手を小さく振る。


「え? ……あぁ。アドル様。アキミチを鍛えるのは、自分に任せて下さい」


 そうじゃない。


「それに、アドル様には決めて頂きたい事がございます」

「「………………」」


 アドルさんと揃って首を傾げる。


「セミナスさんの指示では、これから南の国に向かうとの事。下大陸での南の国となると、それが示す国はただ一つ。『ラメゼリア王国』。そこで間違いはないでしょうか?」


 インジャオさんが尋ねて来たので、セミナスさんに聞く。

 そうなの?


⦅はい。そうです⦆


「そうみたい」

「それがどうかしたのか?」

「それでしたら、さすがに距離がありますので、この状況ではどこかで馬でも用意しませんと、時間が相当かかると思うのですが?」

「なるほど。確かに、次の目的地がラメゼリア王国となると、インジャオの言う通りだな」


 う~ん……と、アドルさんとインジャオさんが悩み出す。

 ウルルさんは、さすが私の恋人! 良い着眼点です! と、うっとりとした視線をインジャオさんに向けている。

 そんな中、俺は挙手した。


「……どうした? アキミチ」

「歩いて、もしくは走っていけないんですか?」

「いや、いけなくはないが、アキミチのペースに合わせるとなると、インジャオが言ったように相当な時間がかかるぞ。それで起こるであろう何かに間に合うのか?」


⦅間に合いません。ですので、どこかでペースアップを図る予定です⦆


 間に合わないようだ。

 ただ、まるで俺ではなく、アドルさんたちのペースで行けば、そんなにかからずに着くみたいな言い方だったのが気になる。


 ……いや、その通りなんだろうな。

 どう考えても、アドルさんたちやシャインさんクラスの身体能力となると、高過ぎるというか異常だ。

 そんなアドルさんたちのペースに合わせるなんて……今の俺には無理。

 今後はわからないけど……。

 希望を持つのは自由だよね?


 親友たちなら……う~ん、いや無理か……でも、シャインさんが向かった訳だし、それぐらいは軽く出来るくらい鍛えられるかもしれない。

 シャインさんだし。

 DDも協力してそうだし。


 ……頑張れ。俺も頑張る。

 という訳で、どうペースアップするつもりなの?


⦅秘密です⦆


 そう言われると、余計に気になるんですけど?


⦅正確にはいくつか候補がありますので、現在どれにするか絞っています⦆


 へぇ~、いくつかあるんだ。

 たとえば?


⦅そこの吸血鬼たちにおんぶして貰います。ただ、この方法ですと、マスターが風圧に耐えられず落ちます。ロープで繋ぎ合わせた場合、落ちた事に気付かれずにそのまま引き摺られます⦆


 却下で。

 というか死ぬよね? それ。

 気付いて! アドルさん、気付いて!

 ……あっ、それだったら抱えて貰うのは?


⦅……噂が立ちます⦆


 うぅ~ん。事実と違う噂が立つのは困るな。

 俺が無事に辿り着く方法はないの?


⦅現在検索中です⦆


 見つかると良いな。

 このままじゃ埒が明かないので、アドルさんたちに別の事を聞く。


「間に合わないみたいです。というか、魔法があるんですから、それで移動とか?」

「どういったものを期待しているのかはわからんが、そういった魔法はこの世界にはない」

「空に浮くくらいは出来ると思うけど、長距離移動となると……聞いた事はないかな」

「そもそも、浮き続けるだけでも魔力を消費し続けますからねぇ……移動するなんて無理だと思うけど?」


 アドルさん、インジャオさん、ウルルさんから否定が入る。

 ………………。

 ………………。

 いやいや、待て待て。

 これはアレだ……チャンスではないだろうか?


 ここでバーン! と移動に関する魔法を開発して、異世界魔法界隈に革命を巻き起こす、という展開を………………親友たちがしそうな気がする。


 俺には無理。

 だって、どうしたら良いとか、全然思い付かないし。

 ……待てよ。ここでセミナスさんに――。


⦅無用な混乱が起こります。また、空は竜の領域と言っても過言ではありませんので、無闇に飛べば撃ち落とされます⦆


 怖っ!

 でも、出来ないと言わないのがセミナスさんっぽいし……実際やろうと思えば出来るんだろうけど、無用な混乱が起こるのは嫌だな。


 となると、馬を手に入れるという事に落ち着くのはわかる……わかるが。

 再度、俺は高々と挙手する。


「どうした? アキミチ」

「乗馬経験ありません。馬、乗れません」


 アドルさんたちから呆れたような視線……は向けられなかった。

 寧ろ、優しい笑みを浮かべている。

 アドルさんが、俺の両肩にぽんと手を置く。


「わかってた」


 ですよね~!

 だって仕方ないじゃないか。

 普通、乗馬の経験なんてない、と思うし。


 ただ、練習しようにもここでは馬が居ないので、まずは森を抜ける事にする。

 そこから近隣の村か町を捜し、馬を手に入れる事が出来れば、そこで練習をしてみる事になった。

 まぁ、もし駄目だったら、アドルさんの後ろにでも乗せて貰おうと思う。

 ……というか。


「野生の馬じゃ駄目なんですか? 居ないとか?」

「捜せば見つかるかもしれんが……そもそも、馬具類は一切持っておらん。必要ではなかったからな」


 うん。だろうなって思った。

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