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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第十二章 過去へ
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まぁ、基準が違うからこうなるよね

 ぼーっと待っていると、扉の向こうからドタドタとたくさんの足音が聞こえてきた。

 漸く来たようだけど、ちょっとお粗末過ぎない?

 隠す気がないのかな?


⦅時間をかけると逃げられると判断して、速度重視にしたようです⦆


 まぁ、わからなくもないけど、速度を重視してもセミナスさんにバレているのが何とも言えない。

 滑稽、とでも言えば良いのか。


⦅扉を開けて中に入ってきた瞬間に、『ばぁーか』と言ってやりましょう⦆


 いや、言わないよ。

 ドアノブがガチャリと動く。

 というか、入ってこようとしているけど、疑いとかないのだろうか?


 そもそも、外で扉を守っているはずの騎士さんたちが居ないというのに。


⦅好都合と解釈したのでしょう。天は我に味方した! とか思っているかもしれませんね。自分に都合よく考えるタイプの可能性が高いです⦆


「騎士も居らず、鍵もかかっていないとは! 天は我に味方したようだ!」


 セミナスさんの言葉のあとに、そんな叫び声が扉の向こうから聞こえてきた。

 実際に言うとは。

 真実は一切味方していない方だけど。


 そして、扉が大きく開けられると、ドカドカと鎧姿の完全武装した者たちが、次々と中に入って来る。

 正確な数はわからないけど、大体二十人くらい。

 ……いや、扉の外まで列は出来ているから、もっと多い。


⦅合計三十三人です⦆


 三十三人っ!

 ……いや、驚いてみたけど、なんか少なくない?


 アイオリさんとエアリーさんを殺害しに来たという割には、全然足りないと思うんだけど。

 普通に返り討ちされそう。


⦅これは擁護する訳ではなく、情報として伝えるだけですが、そもそも今を好機だと思っての行動ですから、事前に準備されていたとしても、そうそう人数を揃えるのは難しいのです。それに、事前に大人数で集まっていると目立ちますし、これでも集まった方です⦆


 そうなんだ。

 でも、それでもアイオリさんとエアリーさんには勝てないよね?


⦅誰がいつアイオリとエアリーが殺害されると言いましたか? 元々、アイオリとエアリーであれば、いえ、どちらか一人だけでも余裕で返り討ちが出来ていました。それでも、首謀者の貴族からすれば精鋭を集めたそうです⦆


 精鋭って言葉が軽く聞こえる。

 と思っていると、集団の中に一人だけ場違いなのが居た。


 誰もが完全武装の中、一人だけ普通の服というか、貴族が着る高級そうな服を身に纏っている、恰幅の良い男性。

 見た目年齢で言えば、四十代か、五十代くらい。


 もしかして……。


⦅はい。あれが、首謀者の貴族です⦆


 なんて不用心な。

 名前は……別に良いか。


 そして、そこで漸く先頭に居る何人かが俺に気付き、抜剣してその切っ先を俺に向けてきた。

 その動きに合わせて、他の者たちも同じように抜剣して身構え、その貴族の男性が口を開く。


「何者だ、貴様。怪しげな仮面を被って」


 確かに仮面は怪しさ満点だけど、それはそちらの行動もそうじゃないの?


「いや、問答は必要ない。この場に居る者は皆殺しだ。やってしまえ」


 貴族の合図で完全武装した者たちが、俺に向かって襲いかかってきた。

 話が早くて助かる。

 そもそも、そちらの事情はセミナスさんが全部暴いているし、わざわざ話す必要はないんだよね。


⦅AS起動⦆


 右腕のASが起動して、六つの球体が浮かび上がったかと思うと、全て丸盾に形成される。

 ……ん? あれ? 前は、三つとか四つじゃなかった?


⦅『勇者』と『賢者』スキルを得た事で、私の力が上がったのです。それと、マスターは魔力消費を抑えるために、基本は回避でお願いします⦆


 あっ、本当に上がったんだね。

 それと、元々回避主体でいくつもりだから問題ない。

 ASの方はセミナスさん用と緊急時って決めているから。


⦅マスターの回避能力は既に高いですので、今後ASを存分に活用するためにも、魔力増幅の方に重きを置いた方が良いかもしれません。今の内に予定スケジュールを組んでおきます⦆


 え? 今から?

 絶賛襲われ中なのに? と思っていたが、そこはセミナスさんである。


 既にセミナスさんの操る丸盾は動いていて、一番接近していた者に綺麗なワンツーを決めていた。

 かなりの威力だったのか、被っていた兜が凹み、相手は気絶して倒れる。

 破壊力も充分なようだ。


⦅では、存分に試していきましょうか。相手はたくさん居ますし、色々試せそうで助かります⦆


 楽しそうな声である。

 実際、俺が余裕で襲撃者の攻撃を回避している間、セミナスさんは色々と試していた。


 シールドバッシュの要領で相手を吹き飛ばしたり、アッパーカットというかそのまま持ち上げて天井から落とし、初回実験のビームを跳ね返したように相手の攻撃を何度も盾に当てて上手く誘導して他の者へ、あえて攻撃を受ける事で強度の確認と、全て行動パターンを変えて試している。


 強度の確認に関しては、盾の形を変えて調べているようだ。

 そこで気付いたのは、丸盾とか小さい盾は球体一個、長方形のような大きな盾になると球体二個が必要な事である。

 どうやら、サイズに合わせた球体の数……つまり必要量があるようだ。


 あれ? でも、空間拡張的なので、見た目以上の量があるんじゃないの?


⦅その効果は腕輪の方だけです。取り出した方には適応されません⦆


 なるほど。

 納得したところで、セミナスさんの検証は更に続く。


 丸盾を回転させて剣や盾だけじゃなく身に付けている物全て斬って丸裸にしたと思えば、ワンツーをフェイントにして三枚目の盾が下から金的を繰り出したり、長方形の盾を振って転ばせたかと思うと頭上から丸盾が落ちてきてトドメを与えたりと、緻密な動きや連携を取る事が多くなってきた。


 そんな感じの蹂躙と呼べそうな事態が続き、偶に俺の方にも襲撃者が来るんだけど、当然攻撃を当てる事も出来ずに、セミナスさんの操るASによってやられる。

 本当に、俺がASを使うまでもない。


 なんというか、大した事ない感じ?


⦅全体的な質は低いです。そもそも、最年長があの貴族というだけで、こうなる事はわかっていました⦆


 そうなの?


⦅はい。今は魔王が封印されて数十年が経ち、平和を謳歌してきた時代。世界が統一されていますから、国家間の戦争という大きな戦いも起きていません。戦争時の精鋭と、平和時の精鋭では、基準となる強さに差があるのは明白でしょう⦆


 だから、一方的に蹂躙されているのか。

 アイオリさんやエアリーさんなら一人でも余裕っていうのもよくわかる。


 なので、そうなってくると――。


「ひ、ひいいいいいい」

「やめろやめろやめろ」

「来るな来るな来るな」


 襲撃者たちはあっという間に混乱した。

 いや、恐慌状態ってヤツかな。


 中には逃げ出そうとする者も居たんだけど、そこはセミナスさんが逃がす訳がない。


⦅私からは逃げられません⦆


 三角形の盾がブーメランのように動いて、逃げ出す者を倒していた。

 逃げ出した者に向けて言ったセリフだけど、何故か俺もゾクッと寒気が……。


 気が付けば、首謀者の貴族もいつの間にか倒されて……いや、これは逃げ出す襲撃者に踏まれまくって気絶してるな。

 ……とりあえず、あっという間に襲撃者たちは鎮圧された。


 あとの事は、アイオリさんとエアリーさんに任せよう。

 それで、満足出来た?


⦅やはり質の悪さは否めません。現代に戻り次第、竜共を相手に色々検証したいと思います⦆


 セミナスさんの検証はとまらない。

 とりあえず、アイオリさんとエアリーさんに、終わりましたと伝えに行くか。

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