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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第十二章 過去へ
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初対面なんだから、警戒されて当然

 俺の発言に対して、エアリーさんが値踏みするような視線で俺を見てくる。

 とりあえず、いきなり殺される心配はなくなったかな?

 エアリーさん、強そうだし、俺なんて簡単に殺れるんじゃないだろうか。


⦅それは不可能です。確かに、現時点においてもその強さは一線を画していますが、ASで全て防ぐ事は出来ます。倒す事は難しいですが、必ずやり遂げてみせます⦆


 いや、戦う方向にもっていって欲しい訳じゃないんだけど。

 寧ろ、戦わない方向にもっていって欲しいんだけど。


⦅新しい道具を試す絶好の相手だな、と思っていたのでは?⦆


 それ、最終的に負けるんじゃないかな?

 と思っていると、エアリーさんが口を開く。


「……未来。もしそれが本当なら色々と興味深いけど、その証明は出来るのかしら? もし冗談の類で言ったのなら、その首刎ねてしまおうかしら」


 多分、言っている事に嘘はないんだろうな。

 もし証明出来ずに迂闊な事を言えば、エアリーさんが言った通りの事をしそうだ。

 そう思われる凄み、みたいなのがある。

 有言実行、的な。


 ……なので、俺の安全のためにも、証明はどうすれば良いの?

 エアリーさんは、なんとなくだけど、造形の女神様たちみたいに簡単にはいかないよね?


⦅それこそ問題はありません。余計な小細工は必要ありません。アイオリの手記を見せれば良いのです⦆


 え? 手記?


⦅はい。アイテム袋の中に入っているはずですが?⦆


 いや、確かに入っているよ。

 ドラロスさんに渡そうと思ったけど、今は詩夕たちを鍛えるのを優先するから、そのあとでって言われたから、それまで預かっているつもりで。


 でも、見せて良いの?

 これこそ、未来に対して大きな影響を与えない?


⦅いえ、これは既定路線。アイオリとエアリーは寧ろ協力者のような立場です。きちんと説明すれば、胸の内に秘めていただけます⦆


 ……そうなの?

 なら、とアイテム袋に手を伸ばした時、いつの間にか半透明の剣五本くらいが突き付けられている事に気付く。


 ……身動きが取れない。


「迂闊な行動はその身の破滅に繋がると思いなさい」


 エアリーさんから本気の殺意を感じる。

 というか、この半透明の剣、何? それもいつの間に?


⦅それは魔力で形成された剣です。マスターに話しかけつつ魔力を練り込み、マスターが身動きをした瞬間に無詠唱で発動。どうやら、魔王戦の時よりも魔力の扱いが洗練されているようです⦆


 この状況で冷静な反応!


⦅危険はありません。それに、いざという時が起これば、私がASで撃退します⦆


 いや、エアリーさんは協力者だよね。

 撃退をしてどうする。


 いや、今はエアリーさんの方が優先だ。


「いえ、これは証明するための物を取り出すだけの行為です」

「……」


 エアリーさんは何も言わない。

 最大限の警戒をしたまま、視線だけで先を促す。

 もう一度喉を鳴らして、アイテム袋の中からアイオリさんの手記を取り出して、エアリーさんに見せるように差し出す。


 ………………。

 ………………。

 受け取らない。


 まぁ、警戒している状態で、直に受け取りはしないか。

 仕方ないので、間にある台座の上に置く。


 ………………。

 ………………。

 読まない。見もしない。

 完全に俺をロックオンしたままだ。


 とりあえず、声をかけてみる。


「えっと、それを読んでいただければ証明になるかと」

「この状況であなたから視線を外すのは危険ではないかしら? 私が大声で叫ぶか時間が経てば誰かが入ってくるのだし、そうした方が良いと思わない?」

「いや、それは困ります。未来に与える影響を考慮して、出来るだけ人と関わらないようにしていますので」

「それらしい理由も考えているようね」


 いや、本当の理由なんですけど。


「それじゃあ、何が起こってもエアリーさんが対処出来るように、少し離れましょうか?」

「そう言って逃げるつもり?」


 もう~、警戒心が強いなぁ。


⦅世界を統一した国の女王ですので⦆


 当然の措置だろうけど、これは困った。

 このままだと捕まっちゃいそうだけど、どうしたら良いの?


⦅手記をそのまま見せるのではなく、最後のページをエアリーに見せてください⦆


 最後のページ、ね。

 アイオリさんの、『アキミチ。世界を頼む』のヤツか。


 エアリーさんに断りを入れて、ゆっくりと手記を開いて最後のページを見せる。

 一瞬だけ、エアリーさんの視線が手記に向けられた。

 と思ったら、手記を手に取り、最初から見ていく。

 字に覚えがあったのかな?


 これは……もう動いて大丈夫?

 そろそろ両手を上げておくのもつらいんだけど。


⦅やめておいた方が良いでしょう。魔法剣がオートで反撃するように設定されていますので、迂闊に動かない方が賢明です⦆


 恐ろしい。

 何が恐ろしいって、エアリーさんはそれを俺に教えていないところが恐ろしい。


 もう大丈夫だなって、油断したところをグサリとか……大人って汚い。


⦅致命傷となる部分は避けているようですが、なんの手立てもなく食らえば、それなりのダメージを受けるのは間違いないです⦆


 それだけ警戒している事の証明って事か。

 でも……そろそろ腕がプルプルしてきそう……というところで、エアリーさんが口を開く。


「嘘ではないかもしれないけど……いくつか質問しても?」

「はい。大丈夫です」


 という事で、エアリーさんの質問に答えていく。

 正直、その内容は細かく、手記の内容にはないモノばかりというか、アイオリさんではなく、エアリーさん自身に関する事ばかりだったけど、セミナスさんにかかれば問題ない。


 求められるまま答えていく。

 その結果。


「……当たってはいるんだけど、正直気味悪い」


 引かれた。

 実際、自分で自分の身を守るように抱き締め、俺を見る表情も引いている。


 いや、答えろって言ったのはそっちでしょ。

 それに、いくつもの剣を向けられている状態で間違える、もしくは答えないのは危険だと思うんだけど。


 そこら辺を考慮していただけませんかね?


「……とりあえず、質問も間違っていないし、この手記も本物のようね。少し、興味出てきたわ。話、聞かせてもらおうかしら?」

「はい。じゃあ、この剣を消し」

「このままで」

「……このままで?」

「このままで」


 有無を言わさない迫力がある。

 興味は出たけど、信頼も信用もしていないって事は伝わってきた。

 仕方ない。もってくれよ。俺のプルプル腕。


 セミナスさんに聞きながら、エアリーさんに伝えるべき情報を伝えていく。

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