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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第三章 ラメゼリア王国編
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こういうのって案外直ぐ

 辿り着いた場所は、森の中だった。

 いや、森から出ていないんだから、当然である。

 緑豊かな森の中に、目的の物が生い茂っていた。


 ――五色葉。


 五色の葉を持つ薬草。

 それが豊富に生い茂っている。

 ……白、黒、赤、緑、紫。

 ……赤、青、緑、黄、橙。

 ……桃、赤、青、黒、緑。

 ………………。

 ………………。

 思っていたよりも、たくさんあるみたい。

 これは予想外だけど………………えっと、コレで良いのかな?


 手近にあるのを摘まむ。


⦅違います⦆


 違うみたいだ。

 良かったね。これからも大地と一緒だよ。

 大地と引き離す前で良かった。

 やっぱり、これだけ相思相愛の関係を崩すのは心苦しいからね。


「それで、どの色並びの五色葉が必要なんだ?」

「え? アドルさん。この薬草の事、知っているんですか?」

「知っているも何も、当たり前の事……あぁ、アキミチは異世界から来たんだったな。薬草として五色葉は、この世界では有名で当たり前のモノだ。色の並びで効能が違い、中には強い毒や酷い怪我にも通用するのがあると言われている」

「……言われている? 随分と曖昧なんですね」

「仕方ないだろう。種類が豊富過ぎて、全てを把握するのが難しいのだ。世界中至るところに群生しているが、地域性が存在しているようだし、未だに新しい色並びが誕生している、とまで言われている」


 やれやれと肩をすくめるアドルさん。

 五色葉が群生している方に視線を向ける。

 ……確かに、と思った。

 ザッと見ただけでも、同じ色並びはないように見える。

 ………………。

 ………………いや、ある……いや、ない……。


 わからん!

 なんか見ているだけで目がチカチカしてくる。

 同じ漢字を見過ぎて、これが本当に正しいのかわからなくなった……ような感覚が……。

 とりあえず、眉間を揉んでおく。


 ……で、セミナスさん。

 何色の並びが必要なの?


⦅最初に言ったはずですが?⦆


 ………………。

 ………………。

 心の中で頭を下げる。


⦅仕方ありませんね。ここで無駄な時間をかけても仕方ありませんし。上から順に、白、赤、青、黄、緑の五色葉を捜して下さい⦆


 ……えっと、セミナスさんなら、どこにあるのかわかるんじゃ?


⦅申し訳ございません。本来なら『未来予測』の結果で場所を割り出す事も出来るのですが、この場は何かしらの時の乱れが発生しているのか、上手く働かないのです。原因となる要因として考えられるのは……いえ、不確定のままで言うべき事でありません。今は五色葉捜索を優先します。この場にあるのは間違いありませんので、宜しくお願いします⦆


 わ、わかった。

 セミナスさんでも確定出来ない事がある、というのが驚きだ。

 驚きと共に怖さもある。

 攻撃の才能が一切なく、「回避防御術」しか通用しない俺にとって、セミナスさんは正に生命線と言っても良い。

 そう考えると、セミナスさんの力が及ばない状況って……危険が一杯?

 なら、慎重に動いた方が良いかも。


 ………………。

 ………………。

 いや、駄目だ。こんな考え方は駄目だ。

 セミナスさんに頼った行動だと、自分が駄目になってしまう。

 確かにセミナスさんの指示は的確だけど、実際に動くのは俺なんだ。

 俺がしっかりしないと、セミナスさんの破格の力も意味はない。


 頑張れ、俺!


 よし! とやる気を漲らせ、アドルさんたちに必要な五色葉の色並びを教え、早速捜しに行こうと第一歩目を踏み出、あっと危ない。

 こんな足元にも五色葉が。

 危うく踏み潰すところだった。

 いくら白、赤、青、黄、緑並びで必要ないとはいえ、自然は大事にしないと。

 自分が必要なくても、誰かは必要なのかもしれないしね。


 ………………。

 ………………ん?

 白……赤……青……黄……緑……。


 ………………。

 ………………こ、これだぁ~!


 いや、え? いやいや、え? ええ? えええ?

 待て待て待て待て。

 ここは冷静になるべき時だ。

 大丈夫。まだ時間がある。


 これで間違えていたら恥ずかしいから、きちんと確認しないと。

 だって、こんないきなりある訳ない! 見つかる訳ない!

 きっと罠だ……よく見れば色並びが違うとか……そう、アレだ。


 白は白でも、スノーホワイトとか。

 赤は赤でも、ワインレッドとか。

 青は青でも、コバルトブルーとか。

 黄は黄でも、レモンイエローとか。

 緑は緑でも、モスグリーンとか。

 なんかパッと見はそうだけど、よく見ると微妙に違うとか、そういう可能性だってある。


 ………………。

 ………………うん。合ってる……ように見える。


⦅それです⦆


 セミナスさんのお墨付き。間違いない。


「こ、これだぁ~!」


 摘み取って高々と掲げ、高らかに宣言!


「「「えええええ……」」」


 アドルさんたちから驚きの声が上がる。

 それもそうだろう。

 捜して欲しいと頼んだ途端に見つけたのだから。


⦅っ! 直ぐに引っ込めて下さい!⦆

「えっ?」


 咄嗟に反応出来なかった。

 高々と掲げていたのがいけなかったのだろう。

 五色葉がかっさらわれた。


「ギチィッ」


 突然現れたトノサマバッタのような魔物に。


「「「「えええええっ!」」」」


 アドルさんたちと共に驚きの声を上げる。

 トノサマバッタのような魔物……いや、もうトノサマバッタだった。

 正し巨大。俺と対峙出来るくらいに巨大。

 昆虫が人サイズになると……普通に怖い。

 口? と思われる部分に五色葉を咥えたまま、逃げ出した。


「お、追えぇ~!」

「「「おおおおおっ!」」」


 アドルさんのかけ声と共に、全員で一気に駆け出す。

 くっ! 木々が邪魔で上手く捕まえられない!


 走りながら思う。

 俺は馬鹿だ! 本当に大馬鹿だ!

 しっかりしなきゃと思った矢先に、セミナスさんの言葉に咄嗟の反応が遅れるなんて!

 だけど、反省はあとだ!

 まだ挽回出来る!

 さすがに倒せるとは思えないけど、奪い返す事は可能なはずだ。

 倒すのはアドルさんたちに任せよう。


 トノサマバッタが逃げながら五色葉を食べようと、口? を動かす。


「やめろ、こらっ!」


 咄嗟に掴んだ石を投げる。

 当たるとは思えないけど、牽制にはなるはずだ。


「ギチ!」


 当たった。

 もしかして、異世界転移でコントロールが身に付いたのかもしれない。

 それはそれで微妙だけど。


「………………」

「………………」


 石が当たった衝撃で五色葉を落としたトノサマバッタと目が合う。

 ロックオン! て感じ。


「ギチィ!」


 本能が訴えるままに回れ右してダッシュ!


「うおおおぉぉぉっ!」

⦅右、左、左、右、右……⦆


 バッタンバッタンと地響きを響かせながら、トノサマバッタが追いかけて来る。

 セミナスさんの指示通りに木々をかわしながら逃走を図るが、怖い怖い! 超怖い!

 無理無理! ほんと無理!

 ちょっ! アドルさん! インジャオさん! ウルルさん!


「よし! 五色葉を取り返したぞ!」

「やりましたね、アドル様」

「でも、この五色葉をどう使うのでしょうか?」

「「……さぁ?」」


 それは俺も気になる……じゃない!

 今、気にする事はそっちじゃない!

 俺! 俺を! トノサマバッタに追われている俺を気にして下さい!


 アドルさん達が状況に気付くまで逃走は続き、どうにかそっちの方に誘導する事で、インジャオさんが難なくとどめを差した。


「「「ごめんごめん」」」


 地団駄を踏みながら抗議しておいた。

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