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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第十二章 過去へ
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体力をつけるのは大変です

 俺専用の盾――ASアスが完成したので、とりあえずこの研究所でやるべき事は終えた。

 次の行動へと移ろう。


 ……で、良いんだよね?


⦅はい。この過去において、盾が完成した以上、もうこの研究所に用はありません。依頼した事は、現代に戻る事で意味を成します。現在へと戻る際にまた来る事になりますが、今は次へと向かいましょう⦆


 合ってた。

 というか、また戻ってくるの?

 他の場所で、そのまま現代に戻ると思っていたけど。


⦅出来なくはないですが、その場合、現代のその場所に現れるため、現代で再び世界樹の島まで行く事になりますが? ですので、現代に戻る地点は同じところが望ましいです⦆


 でもそれは、今も同じだと思うけど?

 アイオリさんに会いに行くのは良いけど、どうやってここに戻ってくるの?


⦅製作の神に言ってください⦆


 との事なので、言ってみる。


「……という事なんですけど? なんかそんな手段があるんですか?」

「あるにはあるけど……その前に、何か一言ないのかな?」


 製作の神様がそう返してくる。

 しかし、そう言われても……。


「特にありませんけど?」

「いやいや、あるよね! この状況を見て! 謝罪の言葉を要求する!」

「「そうだそうだ! 謝罪を要求する!」」


 造形の女神様と生命の女神様がワーワーと叫ぶ。

 言われた通り、状況を確認する。


 ……製作の神様だけじゃなく、造形の女神様と生命の女神様も居て、見た目的に土埃に塗れていた。

 で、近くの地面には焼け跡というか、強い何かが当たったかのような破壊跡がある。

 先ほどの魔力ビームが当たった場所だ。


 なるほど。


「つい、手が滑って」

「そっか。手が滑って……なら仕方な……いや、ちょっと待って。手が滑る事があるの?」

「こうしてあった訳ですし、ありますね」


 意図的に、だけど。


「でも、すみませんでした」


 危なかった事は危なかったので、謝っておく。


「「「いや、そう素直に謝られると……」」」


 ならどうしろと?

 謝れと言われて、悪いと思ったから謝ったのに。


「とりあえず、ここに戻ってくる時は、これを使えば戻れるから」


 なんとなくバツが悪いとでも思ったのか、少し慌てた様子で製作の神様が、自身の懐をまさぐったあとにお馴染みとなったボタン付きの円筒を渡してくる。


「これが?」

「そのボタンをポチッと押せば、ここに戻ってくる事が出来るから」

「……本当に?」

「疑う意味がわからない」


 いや、これまでの事を踏まえると、まずは疑ってみるべきだと思うんだけど。


「というか、こんな都合よくある時点でちょっと……」

「そりゃもちろんあるよ。よく考えてみればわかると思うけど?」


 ………………。

 ………………。


「もしかしてだけど、どこかに出かけた場合、ここに簡単に戻ってくるため?」

「「「正解」」」


 造形の女神様たちが親指を立てる。


「なんか知らないけど、偶に呼び出されるんだよね」

「かったるいよな」

「ちゃんとやっているかどうかの確認って……ちゃんとやっていますけど何か!」


 何をしでかすかわからないから、偶に呼び出しているのかもしれない。

 もしくは、放っておくとここに籠りっ放しになるだろうから、それを危惧した神様が呼んでいる、とか。


 ……前者のような気がするけど、出来れば後者であって欲しい。

 で、その帰りに直ぐ戻れるように、俺の手元にあるこれを用意している、と。


 納得しか出来ない。

 でなければ、地下の出入り口をあんな簡略化しないだろうし。


 まぁ、簡単に戻ってくる事が出来るなら、それで充分である。

 となると、大陸に行くのも簡単なの?


⦅そこの神共に頼めば一発です⦆


 という事なので、頼んでみた。


「「「合点承知!」」」


 喜々とした笑みを浮かべる造形の女神様たち。

 何故だろう。

 嫌な予感しかしない。


 ただ、直ぐ出発出来るそうなので、直ぐ……には行かない。

 きちんと挨拶しておかないといけない相手が居る。


 造形の女神様たちに一言断りを入れて、挨拶に向かった。

 この時間なら……食堂だろう。

 実際に食堂でせかせかと動いていた。


「ゴーイチ、ゴーニ、ゴーサン」

「「「アッキー。ドウカシタ?」」」

「ちょっと大陸の方に行ってくるから、挨拶にね」

「「「ソウ。体調ニ気ヲ付ケテ。マタ、会エルヨネ?」」」

「もちろんだよ。ゴーイチ。ゴーニ。ゴーサン」


 相手の存在を確かめるように、それぞれとハグしていった。

 確かな友情が、ここにあると思う。


 そうして挨拶を済ませて、造形の女神様たちのところに戻る。


「じゃあ、早速出発するので、お願いします」

「かしこまりっ!」


 その結果。

 俺は魔力ビームを放った巨大な大砲の筒の中に入れられた。

 どうやら、これで大陸まで打ち出すようだ。


 ………………。

 ………………。


「いやいや、待て待てぇーい!」

「「「何か?」」」


 造形の女神様たちが不思議そうに尋ねてくる。


「何か? じゃない! え? あれ? 俺だけですか? この状況が異様だと思っているのは」

「いや、私たちも異様だと思っているよ」


 造形の女神様の言葉に、製作の神様と生命の女神様もその通りだと頷く。


「頑張れ!」

「ファイトです!」


 しかも応援までされた。


「違う違う違う違う! 応援して欲しい訳じゃなくて! だから、なんでこんな状況なのかの説明を」

「いや、これしかないんだよ」

「船の類は一切ないからね」

「そもそも、船であの海は渡れません」


 聞きたいのは否定の言葉じゃない。


「そんなのわかっているから! というか、皆さん神様なんですから、抱えて空を飛ぶとかで良いじゃないですか!」

「それは無理。重量オーバー」

「人一人抱えて大陸まで飛ぶ体力があるとでも?」

「大陸に着く前に、落としてしまいますね」


 ……本当に?


⦅事実です⦆


 セミナスさんが断言するって事はそうなんだろう。


「だったら、皆さんで順番に運んでもらえば大陸に辿り着くんじゃ?」

「「「順番でそうだけど?」」」


 偶には運動しろ、と言いたい。

 どれだけ体力ないんだよ。

 ……他の方法はないの?


⦅これが最速なのです。他の方法もありますが、色々と間に合わなくなります。マスターの安全は私が保証しますので、お願いします⦆


 ……これで本当に大陸に着くの?

 途中で海に落ちない?


⦅充分な飛距離です⦆


 ……わかった。任せます。


⦅ありがとうございます。では、ASを起動して球体の形をとりますので、その中で大人しくしておいてください。あっ、衝撃は吸収させますので感じないと思いますが、一応お覚悟を⦆


 セミナスさんも起動出来るので、ある意味オートだ。

 ASが俺を包み込むように球体の形となる。

 よりにもよって、こんなのがAS初使用になるとは。


 球体になった事が合図となり、造形の女神様たちが動く音が聞こえる。


「それじゃ、いきますよー!」

「どうぞー」


 聞こえているかわからないけど、返事だけしておく。


「5、4、3、2、1……2、1、発射!」

「なんで今フェイントを入れた!」


 聞こえていたかはわからないけど、とりあえずそう叫んでおいた。

 ちなみに、衝撃とかは一切なかった。

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