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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第十二章 過去へ
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ぶらりと散歩すると気持ちいい

 セミナスさんの指示により、まずは盾の完成をしてもらう事になった。

 といっても、直ぐ出来る訳ではないらしく、数日ここで足止めである。


 ………………。

 ………………。


「セミナスさんからの言葉を伝える。もしサボりや手抜きが発覚すれば、具体的な事は言わないが、マジで後悔させます、との事」

「「「誠心誠意やらせていただきます! 女王陛下!」」」


 造形の女神様たちが見事な敬礼と共にそう答える。

 逆らう意思は既に存在しないようだ。

 既に恐ろしさを感じている辺り、色々と敏感なのかもしれない。


 でも、気持ちはわかる。

 特に、具体的な事を言わないって辺りが、余計に怖さを感じさせた。


 そうして、造形の女神様たちは盾の完成に向けて動くのだが、そうなると……俺は暇になる。

 手伝いは……さすがに無理。専門外過ぎる。

 なので、まずはこの研究所をブラブラ散歩する事にした。


 考えてみれば、研究所内を一直線で進んできたから、内部がどうなっているのか知らないんだよね。

 研究所と言うくらいだし、きっと面白そうなのがあるはず。


 という訳で、まずは入口の門から。

 かけられている看板には、「わたしとぼくの秘密研究所」と書かれている。

 現代と変わらず、か。


 いや、多少かもしれないけど……なんか看板が真新しい気がする。

 ……ここに傷を残したら、現代にも残っているんだろうか。


⦅修繕される未来が見えます⦆


 造形の女神様たちが、看板に傷が付いた! とか騒ぎ出しそうだな。

 とりあえず、何もせずに中へ。

 城に着くまでの間に広場が見えたが、現代のような歴史はない。

 綺麗な更地だ。


 つまり、あの歴史と呼ばれる失敗作の惨状は、フォーが一人で起こした事なのか。


⦅いえ、多少なりとも、神共も関わっているようです⦆


 これから、という事か。

 ……柵を設置して、ゴミ捨て禁止、という看板を立てると効果ある?


⦅……いえ、効果はないようです。これはゴミではないからセーフ、という理論武装によって、結果としては同じ事になります⦆


 それは理論武装じゃなくて、屁理屈だと思うんだけど。

 でもまぁ、何を言っても変わらないんだろうな、と思う。

 うんうん、と一人で納得して、城……じゃなくて研究所に入る。


 現代だとほぼ一直線に進んだから、今回は色々と寄り道していく。

 といっても、やっぱり研究所というよりは、城内の雰囲気だ。

 武器庫や宝物庫っぽいのなど、城であればあるような設備もある中……変な部屋があった。


 まず、広い。

 外観が城である事を踏まえると……ダンスホールとか、それぐらいの広さがある。多分。

 多分と思えるのは、物が色々と散乱しているから。


 特に、服が多いだろうか?

 奥の方に舞台のような高台があるので、衣装かもしれない。

 衣装じゃなくて椅子が並んでいたら、まんま演劇場のようだ。


 そこで、ふと、足元に落ちている物に気付く。

 それは、一冊の本。台本。


 タイトルは「ダブル勇者物語」。脚本は製作の神様のようだ。

 どうやら、最終決戦を題材にして、そこに製作の神様独自のアレンジを加えているっぽい。

 出演の方は、アイオリ役:製作の神様、エアリー役:生命の女神様、魔王役:造形の女神様。


 魔王が造形の女神様か……強さ云々ではなく、なんかしぶとそうだ。

 よくわからない理論で色んな攻撃を防ぎそう。

 勇者二人が、魔王と対峙した場面を見てみる。


     ―――


 魔王「フハハハハハッ! 一人では勝てないと、二人で来たか!」

 アイオリ「いいや、それは違うぜ、魔王。俺たちは」

 エアリー「二人で勇者だから」


 アイオリとエアリー。背中合わせで立ち、ポーズを取る。


 アイオリ&エアリー「「勇者装着ブレイブチェンジ」」


 アイオリとエアリー。神剣、神盾、神杖を装備。


     ―――


 これはノンフィクション?


⦅いいえ、フィクションです⦆


 ………………。

 ………………。

 う~ん。よし。見なかった事にしよう。


 この台本には気付きませんでした、というように、台本を元の位置に戻す。

 これで大丈夫。


 他には何かないだろうか? と見て回っていると、変なのが居た。

 場所は、たくさんの椅子と大きな机が並んでいて、その机の上に皿やナイフが並んでいるので、食堂だと思われるところ。


 その準備を行っているのが……人ではなかったのだ。

 四角い台に付けられたキャタピラがキュラキュラと音を奏でて動き、その台の上には小型ゴーレムのような上半身がくっ付いている。


 大きさは俺の背丈の三分の一くらいで、あと特徴的なのは、両手が「C」の形に、目は楕円形で口が円筒のように飛び出している事だろうか。


 そんな珍妙な存在が、三体。

 どこからか湯気が立ち昇る温かい食事を持ってきて、食事の準備を始めている。

 そういえば、そろそろそんな時間か。


 そう思っていると、その存在の一体から声がかけられる。


「マダ食事ノ準備ハ出来テイマセン」


 そう言って食事の準備に戻ろうとした存在は、綺麗に二度見して驚きを露わにする。

 ……まぁ、実際に表情は動いていないので、そう見えるってだけだけど。


 ただ、その反応は劇的だった。


「登録サレテイナイ者ノ侵入ヲ確認! 登録サレテイナイ者ノ侵入ヲ確認!」


 叫ぶようなその声に残りのそれも反応して、俺はあっという間に取り囲まれる。


「侵入者ヲ排除! 侵入者ヲ排除!」


 Cの形の手をカチカチ打ち合わせながら、俺の周囲をぐるぐる回って威嚇してきた。

 なんだろう。ちょっと可愛いと思う感覚がある。

 ……というか、喋っている!


⦅ここの神共が造り出した、家事全般を行う補助ゴーレムのような存在です⦆


 ゴーレム? これがゴーレムなの?


⦅ゴーレムです。あの神共は本当に腕だけは確かですので、身の回りの世話をやらせるために、このゴーレムを造り出したのです⦆


 断言する事で納得させようとしていない?

 でも、とりあえず今は、この取り囲まれている状況をどうにかして欲しいんだけど?


⦅優しく接してあげてください。それで解決します⦆


 そうなの?

 意味がわからないけど、とりあえず……。


「こんな風に、いつも頑張っているんだね。お疲れ様」

「「「………………」」」


 三体の動きがピタッととまり……俺の足にヒシッと抱き着いて……わんわんと泣き始めた。

 え? 泣くの、このゴーレムたち。

 見た目と違ってかなりのクオリティじゃないかと思うけど、このままだと埒が明かないので、屈んでゴーレムたちの背中を撫でながら慰めた。


 あの神様たちの世話となると……相当大変なのかもしれない。

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