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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第三章 ラメゼリア王国編
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出発して……

 さぁ、エルフの森から出発だ!

 ……と、意気込んでいた時期もありました。


「……ここ、どこ?」

「森の中だ」


 地図を見ながら、アドルさんが簡潔に答えてくれる。

 うん。それは見ればわかるから、今はそういう答えを求めていない。


 未だに森の中を進んでいるのには理由がある。

 それはエルフの集落から出発して直ぐの事。

 俺はセミナスさんに尋ねた。


 それで、一国の危機みたいな事を言っていたけど、これからどう行動すれば良いの? と。


⦅それでしたら、まずは行って頂きたい場所がございますので、そこの吸血鬼に座標を伝えて下さい⦆


 ……セミナスさんが、アドルさんたちを名前で呼ぶ日は来るのだろうか?

 というか、親友たちの事をどう呼び分けるのかがちょっと気になるが、セミナスさんの言うままにアドルさんに伝えると、わかったと移動を開始。

 ……そこまでは良かったのだが、まだ森から一度も出ていない、という訳だ。


「アドルさん、これはどこに向かっているんですか?」

「そうだな。どちらかといえば戻っている。少しばかりだが」

「戻っている?」

「あぁ。下大陸中央側の竜の領域に近付いていると言って良い」


 ふ~ん……。


「……え? いやいや、え?」

「何を驚いている。セミナスさんが示した座標だぞ」


 そう言われても、俺は座標だけじゃ判別出来ないし。

 ……だからかな?

 そう思いながら、俺は後方をチラッと確認する。

 インジャオさんとウルルさんが仲睦ましく連れ立って歩いているが、ウルルさんの方から何やらやる気が感じられた。


 多分だけど、竜の領域近くは手付かずが多そうだから、また良質の鉱石が手に入る……いや、多分じゃなくて絶対手に入れるつもりなのだろう。

 ……それが目的じゃないんだよ?

 インジャオさんがほどほどにね……と言っているような気がする。


「ほどほどにね」


 言った。

 ……なんかこういうのが当たると、ちょっと嬉しい。

 ちっちゃく、よし! と拳を握る。

 ……まぁ、鼻息荒いウルルさんが、それで止まるというか、自重してくれるとは思えないけど。

 せめて、根こそぎではない事を祈る。


 半ば呆れた様子でインジャオさんとウルルさんを見たあと、再度アドルさんに話しかけた。


「でも、竜の領域近くなんですよね? 大丈夫ですか? 襲われません?」

「大丈夫だ。私たちの事を通達したと言っていただろう。無礼でも働かない限りは問題ない。それに、竜の領域近くであり、領域内に入る訳ではないのだ。襲われる事はない」


 アドルさんがそう断言した。

 そういう事なら俺も安心出来る。

 ホッと安堵した。

 それでセミナスさん。指定した場所に着いたら、何をすれば良いの?


⦅草むしりです⦆


 草むしり?

 ………………。

 ………………。

 なるほど。わかった。

 ふふふ……何をすれば良いかわかってしまったよ、セミナスさん。


⦅伺いましょう⦆


 ズバリ! 開拓!


⦅違います。……草むしりだけでその発想になるとは思いませんでした⦆


 いやぁ~。


⦅別に褒めていませんが? 何やら可愛らしく思うので良しとします。これが母性でしょうか⦆


 違うと思います。


⦅では、甘やかすのはやめましょう。……はぁ? 違うって言ってんのに、そんな表情するなんて、マスターは生粋の馬鹿なの? 褒められているとでも思った? 随分と軽い頭をしてんのね。何も考えてなさそうで羨ましいわ。あっ、これ皮肉だから。きちんと理解してる?⦆


 ………………。

 ………………ぐすっ……すんっ。


⦅泣かないで下さい、マスター。冗談ですから。本心ではございません⦆


 ……本当に?

 その割には、結構堂に入っていたと思うけど?


⦅当たり前ではございませんか。何しろ、私はマスターのためだけに生まれたスキル。マスターの全てを肯定するスキルと言っても過言ではございません⦆


 それは言い過ぎじゃない?

 寧ろ、肯定だけするって危険な気もするけど?


⦅やれやれ、マスターを傷付ける事になるとは……慣れない事はしないモノですね。反省が必要です。次の機会は、悲しむ間も与えないようにしませんと⦆


 より恐ろしい方に振り切った!

 というか、さっきもノリノリというか、活き活きとしていたように感じたけど?


⦅まさか! それは心外です、マスター。もうご理解して頂けていると思いますが、私は淑女ですので⦆


 ………………。


⦅………………⦆


 で、草むしりとは? そのままの意味の草むしりなんですか?


⦅正確には、「五色葉」という、上から順に白、赤、青、黄、緑の縦並びの葉を付けている薬草を入手して頂きたいのです⦆


 突っ込まなかったら、さらっとそのまま進むんだ。

 それにしても、なんともファンタジーな植物があるもんだ。

 ……いや、俺にとってはファンタジーでも、こっちの世界の人達からすれば普通の事か。

 それにしても、薬草? それが必要なの?


⦅はい。直ぐに、という訳ではありませんが、後々必要になる物の一つです⦆


 ……必要になる物、複数あるんだ?


⦅はい。目的としている国には真っ直ぐに向かわず、いくつか寄り道をして頂きます。もちろん、間に合うように調整はしますので問題はありません⦆


 ……間に合うように調整という事は、その国で何かが起こる?

 それとも、もう起こっていて、それを解決するために必要な行動を取っていく必要がある、という認識で良いのかな?


⦅そういう解釈で問題ありません。ただ、申し訳ありませんが、今は詳しい内容を告げる事は出来ませんので、そこはご了承下さい。その場その場で説明は行いますが、今マスターが未来を知って行動すると、私の見ている未来予測に変動が起こってしまう可能性がありますので⦆


 前に言っていた、未来は流動ってヤツだね。

 まっ、そういう事なら俺の方も問題はない。

 そもそも、いきなり全部言われても困る。

 絶対に忘れる自信があるので、その都度言って貰った方が助かります。

 わからない時はわからないと聞けば良いだけだし。


⦅相変わらず受け入れるのが早いと言いますか、度量が大きいと言いますか……。マスター……好感度、上げておきましょうか?⦆


 いえ、大丈夫です。


⦅謙虚なのですね。そんな対応も好感度アップです⦆


 どうしろと!

 それって結局のところ、どちらでも何をしても上がる結果になったような気がするんですけど!


⦅まさか!⦆


 台詞は驚いているけど、声が平坦過ぎる!

 選択させておきながら結果は変わらずとは……やはり、セミナスさんは侮れない。


 そんな感じで、進んだ。

 とにかく、すずんだ。

 ……違う、さっきのは噛んだ。


 そうこうしている内に、セミナスさんが指定した場所に辿り着いた。

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