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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第十二章 過去へ
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認識の齟齬はいつだってある

 当然タイムはもらえず、というか、言う暇もなくファイブとシックスの攻撃が始まる。


「『魔力を糧に 我願うは 光輝く鉄槌 光拳』」

「『魔力を糧に 我願うは 闇蠢く鉄槌 闇拳』」


 ファイブとシックス、それぞれの手に魔力が集まり、正拳突きのような拳を突き出す。

 すると、ファイブの拳からは魔力で形成されたと思われる白く輝く巨大な拳が飛び出し、シックスの拳からは同じく黒く輝く巨大な拳が飛び出す。

 もちろん、俺に向けて。


 俺は瞬間的に横っ飛びして回避。

 ゴロゴロっと回って立ち上がり、巨大な拳が飛んで行った先を確認。


 当然、エイトたちも回避していて、巨大な拳は謁見の間の門を破壊して、その先にある通路の壁に当たって大きな衝突音を響かせる。

 あとに残るのは、壁にめりこんだような拳の跡。


「………………」


 えーっと……。


「避けられたね」

「まぁ、これくらいは避けてくれないとね」

「じゃあ、次こそ当てないと。もっと大きくする?」

「それとも、数でも増やす?」


 何やら物騒な事を話し合い始める二人。

 危険な予感。

 このままだと、この研究所破壊されるんじゃないだろうか?


 なので、ストップをかける。


「ちょっと待った!」

「待つの?」

「なんで?」

「なんで? えっと……あっ、とりあえず、言いたい事がある」

「「何?」」


 こてんと首を傾げて、聞く体勢を取る二人。

 あっ、聞いてはくれるのか。


「いや、さっき、相応しいかどうか確かめてやる、この拳で、て言っていたよね?」

「「うん。言ったね」」

「いや、なら、話の流れ的に、物理的な方の拳で襲いかかるモノじゃないの?」


 再度、こてんと首を傾げる二人。


「言っている意味がわからない」

「そもそも、わらわたちは魔法使いタイプ」

「物理でなんて、ありえない」

「魔法で攻撃するのが普通」


 ……なるほど。確かにそうだ。

 エイトたち神造生命体ホムンクルスは、魔法使いタイプ。

 魔法で攻撃するのが主体で当然。


 何も間違っていない……はず。


「でも、あの威力はおかしいよね? そこそこの殺傷力があったと思うけど?」

「おかしいところなんてない」

「真剣勝負で、手を抜く方が失礼」


 ……なるほど、とは、もうさすがに思えないんですけど。

 いつの間に真剣勝負になっていたの?

 相応しいかどうかを確かめるだけだよね?


 寧ろ、相手を害するような攻撃とか、必要ないよね?

 そう言おうとする前に、ファイブが納得するように手を打つ。


「なるほど。わかったよ、シックス」

「何が? ファイブ」

「シックスが言った事だよ。手を抜くのが失礼。つまり、様子見なんかせずに、最初から必殺の力でこなかった事を気にしているんだよ」

「なるほどね。そういう事か。納得だよ、ファイブ。確かに、これは失礼にあたる」


 いや、二人だけで結論出して、納得しないで欲しいんだけど。

 それも、間違った方向で。


 寧ろ逆。

 威力が高かった事を言及しているんですけど。

 いきなり殺そうとするなんて、普通に怖い。


 姉妹なんだから、そっちからも何か言ってやってとエイトたちを見るが、何故かファイブとシックスと同じように、そうだったのかと頷いていた。

 そして、さすがです、とでも言いたげなキラキラした目を俺に向けてくる。


 先ほど合流したばかりのフォーや、まだ比較的それほど経っていないスリーならともかく、もうそこそこの付き合いになるだろう、エイト、ワン、ツゥまで一緒に。

 いや、違うよ。違うから。


 どうしてそこで姉妹の絆を見せるのか。

 もっとこう、感動するような場面でお願いしたい。


「じゃあ、全力で」

「全開で」


 ファイブとシックスも、勝手に話を進めないで。

 まだ俺、納得してないから。

 こういう場合は、まず相手方の了承も得るべきじゃない?


「ちょっと待って! さすがに全力全開は不味いんじゃない? ほら、二人の全力全開だと、この研究所だって倒壊するかもしれないし!」


 必死に訴えてみる。

 しかし、ファイブとシックスは、特に気にしていない感じだ。


「形あるモノはいつか壊れる」

「それが早いか遅いかというだけ」


 思い切りが良過ぎる!

 研究所ってそんな簡単に壊して良いモノじゃないでしょ?


「いやいや、これまで居た場所じゃない! もっと大切にした方が」

「馬鹿な神々の秘密の場所がなくなる。それはとっても良い事では?」

「きっと、少しだけ世界が平和になる」


 ……否定は出来ない。

 いや、そう決め付けるのは早計だ。

 何しろ、エイトたちに自らを造り出した神様たちの記憶はあるけど、俺はまだその中の、メインとも呼ぶべき神様たちとは、誰とも会っていないのだから。


⦅いえ、特化型二人が言うように、少しだけ平和になるかもしれません⦆


 早速心を折るような事を言わないで。

 でも、さすがに研究所を破壊するのは不味くない?

 色々世に出ちゃ駄目な物とか、たくさんありそうだけど?


⦅形あるモノは、いつか壊れますから⦆


 セミナスさんは、二人寄りの意見だった。


「じゃあ、いくよ」

「必殺をする以上、これをどうにか出来たら、わらわたちのお館様として認めてあげる」

「そうだね。そうしよう」

「じゃあ、いくよ」


 ファイブとシックスがそう結論付けてきた。

 何故そうサクサクと話を進める。

 少しは俺の意見も聞き届けて欲しいんだけど。


⦅恐らく、今は神共の命令が優先されているのでしょう。これで認められれば、マスターの指示に従うようになります⦆


……そうだろうか?

 疑問に思っている間に、ファイブとシックスの準備は終わる。

 二人はダンスを踊るように向き合って両手を繋ぎ、俺を見ていた。


「「『二つの形は同質の存在 相反する力は混同せず 光と闇は表裏一体 光闇拳クリティカル・パンチ』」」


 二人が手を繋いだまま、拳を前に突き出す。

 その拳から飛び出したのは、先ほどよりもより巨大な拳が一つ。

 形は拳そのものだが、丁度真ん中で分けるように、左が白く、右が黒い。


 だが、何より危険だと感じるのは、やはりその大きさ。

 巨大と表現したが徐々に大きくなっていて、横っ飛びの回避では間に合わない。

 間違いなく食らう。


 ……あれ? 詰んだ?


⦅いいえ、詰んでいません。前方に駆け、体を逸らすように倒れてください⦆


 さすが、セミナスさん。

 言いたい事はわかった。

 大きくなりきる前に回避しようというのだ。


 向かっていくのは怖いが、それしかない。

 セミナスさんの指示通り前に駆け、リンボーダンスのように体を逸らしながら倒れる。


⦅あっ、顔を横向きに⦆


 え? と思いつつ、言われた通り顔を横向きに。

 すると、丁度鼻があった位置辺りを、巨大な拳が通り過ぎていく。

 ……あのままだったら、鼻がもぎ取れていたかもしれない事に背筋が震える。


 だが、巨大な拳を回避する事は出来た。

 多分だけど、ファイブとシックスは、ある程度回避出来る余地を残したと思う。

 無意識か、意図的かはわからないけど。


 ただ、巨大な拳はそのまま大きくなりながら進んでいき……俺が最初の横っ飛びで横壁の方に行っていたという事もあってか、謁見の間の横壁を大きく砕いてそのまま外へと飛び出していった。


 空いた大きな穴から、陽の光が差し込む。

 ……良い天気だ。


「……神々に怒られるかな?」

「大丈夫じゃない? それに、直してくれるよ」

「それもそうだね」


 ファイブとシックスに、反省の色は見えない。

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― 新着の感想 ―
[一言] セミナスさんの「あっ」ほど怖いものはない(´-ω-`)ウンウン
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