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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第十二章 過去へ
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雰囲気に流されるべきか、よく考えて

 謁見の間に入る。

 ここもこれまでと同様で、掃除が行き届いていて綺麗そのもの。

 造りも、謁見の間と呼ぶに相応しい、荘厳な造りだった。


 廊下とは質が違う絨毯が敷かれ、その先の数段高くなっている場所に玉座が置かれている。

 でも、その玉座は空席なので目を引かない。


 その代わりといってはなんだけど、玉座を挟むように立っている二人が居た。

 どちらも、見た目でいえば中学生くらいだろうか。


 一人は、白髪を肩口で切り揃え、可愛らしい顔立ちに、年齢相応の体型に着ている服装は白を基調としたゴスロリ。

 一人は、黒髪を肩口で切り揃え、可愛らしい顔立ちに、年齢相応の体型に着ている服装は黒を基調としたゴスロリ。


 ただ、この二人の最大の特徴は、そっくり……というよりは、瓜二つだという事。

 その違いは、髪や服が白と黒で色が違うという事くらいしか見当たらない。


「……双子?」

「正解」


 俺の疑問に、フォーがその通りだと答える。

 すると、こちらが二人を見ていたように、二人もこちらを見ていた。


「あれ~? フォーがこんなところにまで誰か連れて来ているよ?」

「負けて案内させられたのかな?」

「仕方ないんじゃない? 普段は出来る女だけど、偶にポンコツ化するし」

「そうだね。今回もそうなのかも? 造った物が故障したんじゃないかな?」


 的確な分析を行っていた。

 俺はフォーを見る。

 フォーは誰とも視線を合わさないように、どこか遠くを見ていた。


 天井があるから、空は見えないぞ。

 耳まで真っ赤になっているから、恥ずかしいのかもしれない。


 でも、俺はあの二人の言葉で、やっぱりポンコツ化する時があるんだな、と思っていた事が当たって、ちょっと嬉しかった。

 しかし、フォーは違う。


 何しろ、俺だけじゃなく、姉妹たちの前でバラされたのだ。

 フォーが叫ぶように、二人に向けて口を開く。


「ちょっと! ファイブもシックスも、根拠のないデタラメを言うのはやめなさい!」

「根拠? 根拠ならあるよ」

「広場にたっくさん」

「………………」


 明確な答えに、フォーが黙ってしまう。

 まぁ、事実だし、仕方ない。


「ち、違うよ。あれは故障したんじゃなくて、ちょっと失敗しただけだから! それに、いずれ再利用するつもりだから問題なし!」

「証拠隠滅?」

「闇に葬る?」

「違うから!」


 フォーが即座に否定。

 なんだろう。

 きっと、普段からこんな会話をしているんだろうなって感じが伝わってくる。


 ただ、雰囲気は険悪なモノではなく、寧ろ逆で、仲が良いからこその掛け合いのように見えた。


「それよりも、ファイブとシックスも、こちらの方たちにきちんと挨拶しなさい。男性は我輩たちのボスで、女性たちは姉妹なのだから」


 フォーの紹介で、二人がこちらに視線を向ける。


「あっ、そういう事。本物の方だったのね」

「なるほどね。今日がその日だったのか」


 ……ん? なんか引っかかる言い方だな。

 どういう事?


⦅恐らくですが、マスターが過去に行って接触した神共から、いつかマスターがここに来るという事を聞かされていたのでしょう⦆


 あっ、そういう事。

 確かにそれなら、事前に知っていてもおかしくはないか。


 引っかかるのはそれだけじゃなかったような……と思った時、二人は玉座がある場所から下りて、こちらに近付いて来る。


「それじゃ、まずは自己紹介だね」

「そうだね。挨拶は大事」


 二人は俺たちと対峙するような位置でとまる。

 先に動いたのは、白い方。

 変身するようなポーズを取りながら、口を開く。


「わちきの名は、『ファイブ』。対大魔王軍戦用殲滅系魔導兵器・特化型。司る属性は『光』。心に降り注ぐ希望の光は邪悪を排する無敵の盾」


 次いで動くのは、黒い方。

 白い方の変身ポーズの左右対称のようなポーズを取る。


「わらわの名は、『シックス』。対大魔王軍戦用殲滅系魔導兵器・特化型。司る属性は『闇』。全てを塗り潰す絶望の闇は数多を穿つ最強の矛」


 そして、二人は少しだけ重なるようにくるりと回り――。


「「二人は、神造生命体ホムンクルス!」」


 うん。そうだね。

 というか、この場には、俺以外の全員がそうだ。

 そう思って周囲を確認すると、エイトたちも二人と同じポーズを取っていた。


 ………………瞬間的に気に入ったからといって、ここまで同じポーズを取るのは難しいと思う。

 となると、これはエイトたちの中に組み込まれた動きなのかもしれない。

 つまり、作為的……神様たちの仕業だろう。


 そう思うと同時に、この心に宿るのは……ちょっとした疎外感。

 今からでも遅くないかな?

 俺も同じようなポーズを取ろうとした時、二人が動く。


 二人は背中を合わせ、ファイブが左腕を前に、シックスが右腕を前に出して、ビシッ! と俺を指差した。


「わちきたちを従える存在として相応しいかどうか」

「わらわたちが確かめてやるよ」

「「……この、拳で」」


 そう言って、二人は構えを取る。

 ここも同じく、左右対称。


 ……なんだろう。

 ちょっとカッコいいと思ってしまった。

 いや、見てて心のどこかが燃えてくるというか。


 ……仕方ない、か。

 俺は数歩前に出て、右半身を前に出すようなポーズを取る。


「良いだろう。認めさせてやろうじゃないか。俺という存在を」

⦅ヒュー、ヒュー⦆


 セミナスさんに茶化されて、瞬時に冷静になる。

 ……は、恥ずかしい。


⦅マスター。別に茶化していません。本気です⦆


 何故だろう。

 なお、たちが悪いと思ってしまうのは。


⦅その証拠に、後方を確認してください⦆


 言われた通り、後方確認。

 ……エイトたちがキラキラとした目で俺を見ていた。


「ご主人様がこれまでで一番輝いています」

「あたいたちは認めてるぜ! 主の事を!」

「今のアキミチ様の姿を、心に刻んでおきましょう」

「カッコいいよ! お兄ちゃん!」

「なるほど。これが我輩たちのボスか。頼もしい」


 まさかの大絶賛である。

 やめて! もう冷静になった俺としては、恥ずかしい事だから!


「では、エイトたちはもう少し離れていましょう」

「そうだな。主の邪魔をしちゃいけない」

「じっくりと観戦させていただきましょう」

「頑張れー! お兄ちゃん!」

「今後の参考にさせてもらうよ」


 そう言って、エイトたちが少し下がっていく。

 ああ、待って待って!

 そんなサクサクと話を進めないで!


 みんな一緒に――。


「それじゃ」

「行くよ!」


 え? 待って!

 落ち着く時間が欲しいから、タイムを! 一旦休憩を!

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[一言] 「ブラックサンダー!」 「ホワイトサンダー!」 「ホムンクルスの美しき魂が!」 「邪悪な心を打ち砕く!」 「「ホムンクルス・マーブルスクリュー!!」」
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