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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第十二章 過去へ
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逃れられない宿命のようだ

「大変! 申し訳ございませんでした~!」


 ボコられたあと、フォーがエイトたちに謝っている。

 そのエイトたちの反応は――。


「エイトたちではなく、ご主人様に迷惑をかけたのですから、ご主人様に謝ってください」


 エイトの言葉に、ワン、ツゥ、スリーは同意するようにうんうんと頷く。

 一応スッキリしているように見える。


 いや、迷惑は迷惑だったけど、別に俺は気にしていないんだけど、と思うのだが、フォーは俺にも謝ってきた。


「本当に申し訳ございません。今の我輩は造形の神を始め、研究所を利用していた神々からの命令が至上であるため、逆らえないのです。もし、なんらかの文句、苦情等々、そう言った事はそちらの神々の方にお願いして、我輩は見逃していただけないでしょうか?」


 ……あれ? もしかしてだけど、自分を造った神々を売った?


「えっと、つまり、その神々の命令があるから、俺やエイトたちの邪魔をするしかなかったって事?」

「はい。全く以ってその通りでございます」

「……悪いのは、命令を出した神々で、フォーは悪くないって事?」

「はい。その答えに直ぐに辿り着くとは、大変素晴らしい慧眼をお持ちで」


 今度はヨイショしだしたな。

 まぁ、実際そうなんだろうな、とは思う。


 何しろ、結界は隠蔽のみで、侵入自体は誰だって出来るのだ。

 ここまで来れる者がそうそう居るとは思えないけど、可能性を表示されれば、決してゼロではなく、絶対とは言い切れないだろう。


 なら、研究所を守る者は必要だ。

 ……手段はアレだったけど。


「……うん。そうだね。フォーは研究所を守らないといけないんだし、今回の事は仕方ない部分もあるから悪くないよ。まぁ、元々そこまで気にしていなかったってのもあるんだけど」

「寛大な処置、ありがとうございます!」


 俺はそれで良いんだけど、問題はエイトたちの方だ。

 出来れば姉妹なので仲良くして欲しいので、確認する。


「エイトたちも、それで良いよね?」

「ご主人様がそれで良いのなら、エイトたちに問題はありません」

「……本当に?」

「はい。もう既に刑は執行したあとですので、わだかまりもございません」


 その通り、とワンたちも頷き、ねー? とフォーと一緒にニッコリと笑みを浮かべ合う。

 ……いや、別に良いんだけどね。

 そもそも、エイトたち姉妹間がギスギスするとは思えないし。


「じゃ。俺たち、先に進むんで」


 エイトたちを伴って、そのまま研究所に向かう。


「いや、いやいやいやいや! 待って待って!」


 フォーが再度俺たちの前に立ち塞がった。


「先に進むのは、我輩を仲間にしてからでは?」

「え?」

「え?」


 首を傾げると、フォーも首を傾げる。

 とりあえず、思い付いた事を言ってみる。


「……何か特定の音楽が流れるとか?」

「意味がわからん……ではなく、姉妹たちは既にマスター登録されているよね?」

「まぁ、してます、ね」


 そこに俺の意思はないけど。


「なら、我輩にもマスター登録をしないと、神々からの命令が優先されるから、ね?」

「いや、でも、エイトたちを起こした時に自動的に登録されていたから、やり方とか知らないんですけど?」

「そんな事はないと思うけど? というか、話は通っていると思っていたけど?」


 ……話? 何の?

 俺の態度で疑問に思ったのか、フォーが恐る恐る尋ねてくる。


「あれ? 我輩の記憶のだと、ワン、ツゥ、スリー、それとエイトを引き連れた人物が、我輩たち姉妹全員のマスターとなって養ってくれるのだと教えられたんだが?」

「……教えられた? 誰に?」

「もちろん。我輩たちを造った神々に」

「え? 何も聞いてないけど?」

「あれ? ん?」


 フォーと共に困惑する。

 未だにそこら辺の神々とは会っていないし……どういう事?


⦅可能性の話ですが、これから向かう過去で話を聞く事になるかと思われます⦆


 ……つまり、過去で造形の神を筆頭とした、エイトたちを造った神々に出会うって事?


⦅はい。元々会う予定……いえ、会う必要がありましたので⦆


 いやだなぁ……でも、セミナスさんが会う必要があるって言う事は、これはもう確定しているも同然。

 ……文句の一つや二つは考えておくか。


「うん。わかった。多分、これから聞く話なんだと思う」


 それに、フォーはエイトたちの姉妹だ。

 離れ離れにする意味はない。

 俺の了承に、フォーが嬉しそうにキラキラと輝く笑みを浮かべる。


「それで、そのマスター登録は……ちょっと待って」

「詠唱するだけでOK!」

「待ってって言ったよね!」


 どうして直ぐ答えを言うかな。

 というか、やっぱり詠唱なのか。

 意地でも詠唱文を言わせたいという、エイトたちを造った神々の意思の強さを感じる。


 ……他の方法はないの?


⦅残念ですが、ございません⦆


 本当に残念に思っている?


⦅………………⦆


 その沈黙は肯定とみなすから。

 でもまぁ、話はわかった。


「……詠唱、か」

「あれ? 詠唱文はわかる……よね?」


 フォーが不安そうに尋ねてくる。

 ……セミナスさん。


⦅もちろん、把握しております。では早速お教えします⦆


 拒否というか、躊躇いがないなぁ。

 俺の心は若干拒絶しているというのに。


 いや、希望を捨てるのは早い。

 もしかしたら、という可能性でまともな文面かもしれないのだから。


⦅まず、始まりはこれまでと同様で、『我が心に刻み誓うは、紳士淑女のオリハルコンの掟』です⦆


 もう既に慣れた。

 ある意味、一番まともな文と思えるようになってる。


⦅次は、『クールな理系女子に上から物言われるのも好きだけど、ポンコツ理系女子も捨てがたい』⦆


 つまり、フォーはポンコツ系って事?

 ……否定は出来ない、かな。


⦅次いで、『見ていてハラハラするというか、放っておけなくて』⦆


 放っておけないとかは個人というか、相手をどう思っているかによると思うんだけど。


⦅その次は、『なんか可愛いんだよな~。慰めたくなるというか』⦆


 まぁ、慰めたくはなる……か?


⦅最後は、『というか、慰めながら……ね?』です⦆


 ね? じゃねぇよ!

 最後の最後で欲望全開じゃねぇか!


 ……これ、このあとも続くのかな?

 元気がなくなるけど、さっさと終わらせよう。


「……じゃあ、今から詠唱します」

「よろしく!」


 あと、念のため、エイトたちに言っておく。


「詠唱だからな。俺の思いとかじゃないから」

「当然、理解しております。ご主人様」


 うんうんと頷くエイトたち。

 ここはいつも物分かりが良いんだけどな。


 そう思いつつ、詠唱する。

 ………………。

 ………………。


「『というか、慰めながら……ね?』」

「なるほど。見えました。エイトは、ドジっ子メイドになれば良いのですね」

「慰めたくなる感じ……あたいにそんなのあるか? う~……わからん」

「つまり、庇護欲を駆り立てるような行動を取れば………………くっ。私のプライドりが」

「よくわかんないけど、ボクに構えば良いと思うよ!」


 だから、何故そのまま俺の意思として受けとめるのか。

 詠唱文だって、言ってんのに。


 一方、フォーは――。


「詠唱を確認しました。声紋によるマスター登録をしました。同時にマスターの魔力波形も登録しました。条件オールクリア。『対大魔王軍戦用殲滅系魔導兵器・特化型』……『フォー』。現状の最優先命令を全て破棄し、マスターからの命令のみを受け付けます」


 俺を真っ直ぐ見ながら親指を立ててくる。


「養って……お世話になります!」


 養われる気満々って事はわかった。

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