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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第十二章 過去へ
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自分は良いんだけど、周囲は駄目って時がある

 フォーが俺とエイトたちの前に立ちはだかった。

 なんかフォーが妙にイキイキしているように見えるのは、きっと気のせいじゃないと思う。


 まぁ、こんなところまで来るような人は居ないだろうし、俺たちが漸く来た事で、テンションが上がったのかもしれない。

 ……今が標準じゃないよね?


 でもまぁ、どっちにしろ――。


「姉とはいえ、ご主人様の邪魔をするというのであれば、容赦はしません。フルボッコです」

「姉として、主の妨げになるなんて悲しいな! どうやら、おしおきが必要なようだ!」

「邪魔するなんて悲しいわ。これは、きちんと躾けないといけないわね。徹底的に」

「ボクたちと戦いたいって事かな? うん、いいよ! もちろん、手加減なんてしないから!」


 なにやらやる気だ。

 一部、殺る気になっているような気がしないでもない。


 これに敏感に反応したのが、フォー。


「いや、ちょ、姉妹みんなやる気なの? ……えっと、五対一はさすがにちょっと反則じゃない? ここは一対一で」

「「「「却下します(だ)(です)(だよ)」」」」


 エイトたちが即否定して、フォーは何やら慌てだした。

 フォーにとって想定外だったのかな?

 なんか怯えているように見えなくもないから、可哀想に思えてくる。

 ちょっとは手加減した方が良いような気になってきた。


 と思ったら、フォーはニヤリと、何やら企みがあるような笑みを浮かべる。


「なーんてね!」


 フォーが白いローブの中から筒状の物を取り出し、その上部に付いているボタンをカチッと押す。

 すると、フォーの横の地面がバカンと開き、そこから巨大な扇風機……いや、人の倍くらいの高さがあるサーキュレーターが出現した。


「これは我輩が発明した、風魔法の風力を増幅する装置『風丸くん』! さぁ! 我輩の強化された風を受けて、吹き飛ばずに進む事が出来るかな! スイッチ・オン!」


 そう叫んで、フォーが再度筒状のスイッチを押し、サーキュレーターの後方に回り込む。

 サーキュレーターの羽が回り出す。


 強風が俺とエイトたちを襲うが、別に進めない訳ではない。

 何がしたいのだろう? と思っていると、サーキュレーターの後ろに回っていたフォーが魔法を唱える。


「『魔力を糧に 我願うは 拒絶する透明な防衛 風壁』」


 言葉通り、風の壁は……現れなかった。

 その代わりといってはなんだけど、強風が勢いを増して一気に大暴風へと変わり、前に進むのが困難になる……というか、まともに立っていられなくなり、数歩下がる。


 数歩で済んだのは、エイトたちが俺を庇うように前に出たから。

 男としてやはり前に出た方が、と思わなくもないが、前に出るのが難しいほどの大暴風だ。

 なので、代わりに後ろから押す。


 そこで、エイトが行動を起こす。


「ご主人様への攻撃は許容出来ません。『魔力を糧に 我願うは 渦巻く障壁 盾風』」


 エイトが魔法で風の盾を生成して突風を防ぐ。

 風を風で相殺しているようだが、それでも増幅されている分、フォーの風の方が強く、幾分か楽にはなったが、それでも気を抜けば吹き飛んでしまいそうだ。


 これは、このまま膠着状態が続くのだろうか?

 ワンの火だと危険だし、ツゥの水は吹き飛んでいきそうだし、スリーの土は礫や砂煙になって危険な予感がする。


 つまり、全属性を使えるエイトだからこそ、風属性魔法で対抗出来ている訳か。

 でも、このままだとジリ貧だろう。


 何しろ、エイトは汎用型であるが故に、特化型にはその属性で勝てないのだ。

 ……あれ? じゃあ、なんで今対抗出来ているんだろう?


⦅特化四型が本気の魔法を使用していないからです。こちらを傷付ける気はないようですが、そう簡単に通すつもりはない、といった感じでしょうか。一種の試練として立ちはだかっているのでしょう⦆


 また面倒な。


⦅特化四型のところまで辿り着けば終わります⦆


 まぁ、物理的な直接戦闘は苦手っぽいしね。

 問題は、この大暴風の中、どうやって前に進めば良いのかだけど………………あれ? 確か、サーキュレーターの風って直線的だったよね?


 ……左右を確認。

 木々は全く揺れていない。


 ……これ、横にずれたらいけるんじゃない?


「エイト、ワン、ツゥ、スリー」


 名を呼び、頭を横に振る。

 それだけで意図が伝わったのか、吹き飛ばされないように気を付けつつ、一緒に横にずれていき……大暴風圏を脱した。


『………………』


 俺とエイトたち、フォー共々、なんとも言えない空気になる。

 いや、空気自体は、直ぐそこでゴーゴーと唸り声を上げているけど。


「……よ、よくぞ見切った! この装置の弱点を!」

「いや、明らかに動揺しているよね!」

「そ、そんな事ない! たとえ横に避けようとも、動かしてしまえば……動かして……」


 フォーが動かそうと引っ張るが、サーキュレーターはビクともしない。

 まぁ……大きいしね。その分、重いだろうしね。

 とてもではないけど、フォーにそんな筋力があるように見えないし、実際動かせていないから、見た目通りの筋力なのだろう。


 それじゃあ、無理だ。

 これで俺たちの勝ちだな、と思って歩を進めると、フォーが不敵に笑い出す。


「ふっ……ふふ……ふはははははっ! これで勝ったと思ったか! だが! 動かせない可能性は既に想定済み! 故に、改善されている! さぁ、首を振れ! 風丸くん!」


 フォーがサーキュレーターに付いていたボタンをポチッと押す。

 すると、羽部分がこちらに向けられるように動き出した。


 再び大暴風に晒される俺とエイトたち。

 なるほど。抜かりはないという事か、と思っていると、大暴風がなくなる。


 ……ん? あれ?

 確認すると、大暴風は俺たちを通り越して更に向こうへ……と思ったら、戻ってきた。

 再び大暴風に晒されるが、それも僅かな時間。


 俺とエイトたちを通り越して、反対側に向かってサーキュレーターの羽部分は動いていく。

 ………………まんま首振り機能かよ!


『………………』


 場に沈黙が流れるが、構わず歩を進める。

 大暴風に晒されている間は足をとめて耐え、なくなれば前へ。


「くっ。丁度良いところでとめないと!」


 一気に近付いて来る俺とエイトたちに焦るフォー。

 そして、俺とエイトたちが大暴風に晒されている時、フォーがサーキュレーターの首振りスイッチを押す。


 ………………。

 ………………。

 サーキュレーターは、特にとまる事なく首振りを続けた。


「とまらない! ……ちょっ、壊れた?」


 フォーが何度もスイッチをカチカチと押すが、サーキュレーターの首振りがとまる事はなかった。

 そんなフォーと目が合う。


「………………」

「………………てへ」


 一気に前へ進み、そう時間がかからない内に、俺とエイトたちはフォーの目の前まで辿り着いた。


「………………」

「………………えへへ。降参します」


 フォーが誤魔化すように笑みを浮かべる。

 いや、俺は別に構わないんだけど……。


「いいえ、折檻します」

「覚悟しろよ」

「フフフフフ……」

「手加減なしだもんね!」


 エイトたちは許す気がないようだ。


「……お、お手柔らかに」


 フォーの叫び声が周囲に響いた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 颯爽とカッコよく登場した知的美人だと思ったのにポンコツかわいいかよ! いいぞもっとやれ!
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