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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第十一章 竜の住み処と世界樹
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今から、これからへ

 えっと、セミナスさん。


⦅はい。おはようからおやすみまで……いえ、眠っている最中でも片時もマスターの暮らしを見つめるセミナスです⦆


 うん。怖い。

 それは人としてやっちゃいけないから。


⦅ですがマスター。在宅勤務の夫婦となれば、自然とそういう形になると思いますが?⦆


 そんな四六時中は一緒に居ないと思うけど?

 そもそも、細かい事を言えば、トイレやお風呂は別なんだし。


⦅一緒に、というのもあると思いますが?⦆


 そりゃお風呂はね。偶には……とか、あるかもしれな……ちょっと待って。

 主語がなかったけど、トイレは別だよね?


⦅それで、何をお聞きしたいのですか?⦆


 答えないのは肯定しているのと同義だからね!

 それで聞きたい事は、どうしてアイオリさんの手記に、俺の名前があるのかな?

 しかも、「世界を頼む」なんて重くて物騒な内容だし。


 ……いや、待てよ。


⦅はい。待ちます⦆


 これは誰か別の人が書いたんじゃない?

 しかも最近。

 ……ドッキリとか?


 なんか、ごめんね。

 そういうの見破っちゃうんだよね、俺。

 俺を驚かせようとしたのに、ごめん。


⦅その一文にそのような意図はございません⦆


 ふふん。甘い甘い。

 見破られちゃうと、まずは否定してみせるんだよね。

 セミナスさんの心の動揺が手に取るようにわかるよ。


⦅動揺していませんが?⦆


 でもね、セミナスさん。

 こういうのは筆跡鑑定をすれば一発で……一発で………………同じ方が書いた字に見えるな。

 それに、インクの欠け具合とか、ここ最近書いたようにも見えない。


 もちろん、プロじゃないから断定は出来ないけど、手記の前半部分に書かれている字とそっくり。

 ほら、ここの癖っぽい払いとか。


⦅同じ人物が書いていますので⦆


 ………………。

 ………………。

 ふっ。なるほどな。


 俺は全て理解したよ、セミナスさん。

 元々アイオリさんとは別の人が書いた、とか?


⦅いえ、全てアイオリ本人です⦆


 ………………。

 ………………。

 つまり、なんだ。


 俺は勝手に変な推理に固執して披露していた、と?

 柔軟な思考が出来ていなかった、と?


⦅いえ、寧ろ柔軟な思考による発想だと思いますが、そうですね。……どちらかといえば……はい。もしくは、YES⦆


 その選択肢は、「はい」か「YES」の二択しかない選択肢だよね?


⦅はい。もしくは、YES⦆


 同じ選択肢!

 まぁ、良いけどね。別に。

 バレているのは、セミナスさんだけだろうし。


⦅それは……どうでしょうか?⦆


 どういう事?


⦅顔をお上げください⦆


 言われた通り、顔を上げる。

 広がる視界の中では、世界樹の近くで様々な戦いが行われていた。

 模擬戦だけど。


 実際、俺は数日かけて手記を読んでいた。

 寝泊まりというか、宿泊場所に関しては野宿? かと思ったのだが、ドラロスさんが土と周囲いの木を利用して、あっという間に家を造った。


 竜だけが使える特別な魔法らしい。

 前竜王。意外と器用なのかもしれない。


 ただ、それでも問題はあった。

 それは寝る場所。

 普通に男女別で良いと思うのだが、一部が反発。


 俺と希望者(俺の希望ではなく自薦)、男性、女性。

 という謎仕様になりかけたが、なんとか男女別で押し通した。

 意味がわからない。


 そうしてこの数日間、みんなはそれぞれ強くなるために、模擬戦を繰り返している。

 シャインさんは、相変わらずドラロスさんとやり合っていた。

 ドラロスさんは時折ミアさんと交代しているけど。

 それでも、手記を読んだあとだと……なんかこう、感慨深い。


 詩夕たちは、仲間内でやり合っているか、アドルさん、もしくはDD含む竜たちとやり合って、お互いに鍛え合っている感じだろうか。

 時折、現竜王であるミレナさんが現れて、蜘蛛の子を散らしたように逃げているけど。

 ……あっ、DDが捕まった。合掌。


 ドラーグさんは、そんな様子を見ながら、のんびりお茶をすすっている。

 頑張れ、若者たちよ。とか思っていそうだ。

 実際は、外は久し振りだ、ヒャッホー! とこの島中を飛び回ったあとの休憩中だけど。


 インジャオさんとウルルさんは、まだ戻ってきていない。

 まぁ、心配はしていないけど。


 そして、エイトたちは――。


「やはり、見当違いの事を考えていたようです」

「だな。だからこそ、あたいたちは、そこを踏まえて更に踏み込んだ部分を考えないといけない」

「ですね」

「そうだね!」


 何やら話し合っている。


「エイトが、将来美人系ではなく可愛い系になると思っていたに一票。正解は可愛くて美人ですが」

「主は意外とマニアックなところがあるからな。意外と、あたいのこのサラシが左巻きか右巻きかで悩んでいるかに一票。正解は……あ、主に確認してもらうか」

「さすがお姉様。的確ですね。ですが、私はアキミチ様が眼鏡に並々ならない興味を抱いているのを知っています。ですので、ここは私たちに合う眼鏡もデザインに悩んでいたに一票。ちなみに私は全て似合います」

「みんな、違うよ。お兄ちゃんは、僕を撫でるか抱っこするかで悩んでいたんだよ。正解は、抱っこしながら撫でる!」

「「「それです(だ)!」」」


 うん。全部違う。

 いや、ツゥの眼鏡案は……なんでもないです。

 それに、特に最後のは下手をすれば事案だから、提案する事自体やめようか。


 という感じの舌戦を繰り広げていた。

 時折、天乃と水連が参加していたような気がしたんだけど……きっと気のせいだな。

 でも……題材は別のになりませんか?

 下手に突っ込むと巻き込まれるから何も言えないけど。


 とまぁ、周囲はそんな感じなのだが……今は何人かが、というよりは詩夕たちとエイトたちが、俺の表情から何かを読み取ろうとしているように見ていた。

 顔を上げたら、サッと逸らされたけど。


 ……バレてる?

 口に出てた訳じゃないよね?

 ああいうのって無意識にでちゃうから、防ぎようがないんだけど。


 ……迂闊に聞いた時の返答が怖いので、触れないでおこう。


 それで、セミナスさん。

 これを書いたのがアイオリさんだとして……どうしてここに俺の名前があるの?


⦅この世界の平和を、マスターに託したのです⦆


 いや、託されても……そもそも会った事もないのに?

 というか、もう亡くなっている人から……待てよ。

 もしかして、生きて――。


⦅いえ、生きていません。それに、仮に生きていたとしても、手記に名が記されている事の説明にはなりませんが?⦆


 確かに。

 じゃあ、どういう事?


⦅簡単な事です。マスターはこれから会うのです。過去へと跳び、アイオリに⦆


 ……え?


⦅そして、そこでアイオリ本人から聞いてください。魔王……大魔王について⦆


 ……え?


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