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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第十一章 竜の住み処と世界樹
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過去があって今に続く

 当然だけど、手記はアイオリさんの死で終わっていた。

 残りは何もかかれていない空白のページが続くだけ。


 死の間際の文で、アイオリさんは世界統一国「ルベライノト」がなくなったあとの世界の平和を願っていた。

 でも……そうならなかったんだよね?


⦅はい。残念ですが、時代は再び争いの時代へと移り変わります。ご説明しましょうか?⦆


 そうね。簡単にお願いします。


⦅かしこまりました。アイオリ、エアリーの死後、世界統一国「ルベライノト」は完全になくなり、世界は再び各国へと戻ります。世界統一国「ルベライノト」が建国されるよりも前の状態に戻った、と言った方がわかりやすいでしょうか?⦆


 いや、わかるけど……誰かあとを継ごうとした人とか居なかったの?

 たとえば……アイオリさんか、エアリーさんのお子さんとか?


⦅二人は生涯独身を貫きました。細かいところまでを見れば、そういう相手が居たかもしれませんが、残念ですが子供の存在は確認されていません。恐らく、自分たち亡きあとの諍いを危惧して、という部分が大きいのでしょう⦆


 まぁ、一代限りの国とはいえ、世界統一しているしね。

 そういう事を考えない訳がないか。


⦅ちなみにですが、将来、マスターと私の子供に手を出そうとするのなら、私が黙って⦆


 続きをお願いします。


⦅かしこまりました。他にも何人かは自分が受け継ぐべきだと行動を起こす馬鹿は居ましたが、一番の理由は求心力が大きく違うという事ですが、他にも様々な理由によって、当然認められる事もなく、自然と消えていきました⦆


 やっぱり、そういうのって出てくるんだね。

 名乗ったモノ勝ち、みたいな考えなんだろうか?


⦅そうして、EB同盟も形骸化し、世界の形は魔王が現れる以前へと戻りました。ただ、ある程度復興していたという事もあって、国力に余裕がある国は、国土を広げようと周辺国に向かって攻め入る、という事も起こるようになっていきました⦆


 共通の敵が居なくなったら……今度は人同士で、か。

 世知辛いな。


⦅そして、丁度この頃からです。下大陸において、西部を治める『ビットル王国』。中央下部を治める『ラメゼリア王国』。東部を治める『軍事国ネス』。この三国が、『三大国』と呼ばれるようになったのは⦆


 おぉ。なんというか、知っている国が出てきたな。


⦅そして、大陸歴・六十一年。遂に世界の平和の均衡が大きく崩れ、戦乱の世へと変わります。『軍事国ネス』が『ラメゼリア王国』に侵攻を開始しました⦆


 EB同盟の話し合いで、問題になっているヤツね。


⦅はい。また、この二国間の争いをきっかけとするように、各地で小国間の争いが激化していきます⦆


 それはまた……本当に戦乱の世になっちゃったのか。

 アイオリさんとエアリーさんが知ったら悲しみそうだな。


⦅丁度このくらいの時期ですね。吸血鬼が魔族の国を出て、上大陸に新たな国を興したのは⦆


 アドルさんの事かな。

 ……下大陸の魔族は既に国があるから避難場所として向かう事が出来るけど、上大陸にはそういう国がなくて、上大陸に居る魔族のために、国を興したのかな?


⦅概ねその通りです⦆


 アドルさんとはこれまでの付き合いがあるからね。

 任せてよ。


⦅なるほど………………吸血鬼、消しますか⦆


 いやいやいやいや。

 脈絡ないよね?

 なんでいきなりそんな事に?


⦅マスターの中に吸血鬼との絆を感じました。端的に言って、お茶目な嫉妬です⦆


 いきなり消そうという結論を出すのは、決してお茶目とは言えないと思うんだけど。


⦅マスターの一番は私です⦆


 ………………。

 ………………いや、どちらかと言えば、詩夕や常水の方が。


⦅……それはそれでありですね⦆


 いや、ほら、こういうのは積み重ねだから、やっぱり一緒に居る時間が長いから……ちょっと待って。

 それはどういう意味での肯定なの?


⦅確かに、積み重ねられた時間というのは中々崩せないモノ。今の地位を甘んじて受け入れます。ですが……いずれマスターは知る事になるでしょう。時間さえいただければ、誰が一番になるのかを⦆


 なんだろう。ここ最近で一番ブルッときた。

 震えがとまらないので、とりあえず続きをお願いします。


⦅どうかしました? それこそ、私は何時間でも話題に出来ますが?⦆


 うん。続きをお願い。


⦅そうですか? 仕方ありませんね。そして、この辺りから長い戦乱の世が始まりました。戦争と休戦を何度も繰り返し……同時に各国は復興と疲弊を繰り返す事になります。それは、確実に国力を下げる事になりました⦆


 なんというか、アイオリさんとエアリーさんが居なくなってから、一気に、て感じだね。


⦅それだけ影響力のある二人だった、という事でしょう。そうして、戦乱の時代と平和な時代を繰り返していき、大陸の勢力図は何度も書き換えられるという事が数十年続き……大陸歴・百年。この年、遂に魔王が復活します⦆


 今に繋がり始めたね。


⦅前回と同じく、上大陸北部から侵攻が始まりました。実際に確認した訳ではないので確証はありませんが、恐らく封印された空間からそのまま封印を破って戻ってきたのだと思われます⦆


 なるほど。

 恐らくって言っていたけど、セミナスさんがそう言うなら、そうなんじゃないかな? て気になるな。


⦅ただ、前回と大きく違うのは、魔王は大魔王となり、魔王と呼ばれる存在がその下に居るという事です⦆


 アドルさんの国を滅ぼした、二体の魔王ね。

 その内の一体に遭ったけど……ほんと怖かった。


⦅いえ、魔王はもう一体居ます。魔王は合計三体居ます⦆


 ………………魔王というからには同格だろうし……あんなのがもう一体居るの?


⦅はい。確認されています。そのあとの出来事は現在に直結していますので、簡単に説明します。大魔王軍の出現により、世界は再び一つになろうとしました。『EB同盟』の復活です。しかし、そう上手くいく訳がありません。以前とは違って各国の軋轢が大きかったなど、様々な理由はありますが、上手くいかなかった最大の理由は……⦆


 アイオリさんとエアリーさんが居ない、て事だよね?


⦅その通りです。中心となって立てる者が居ないため、纏まる事が出来なかったのです。また、その頃には既に竜王も代替わりしており、元々前竜王がアイオリとエアリーに対して協力していただけという事もあって竜の協力は得られず⦆


 そっか。

 竜たちが協力していたのは秘密だったし、協力を得ようっていう発想に至らなかったんだろうな。


⦅神々も大魔王に対して危機感を覚え、総力を挙げて参戦しましたが、逆に封印される結果となりました。そこまでの出来事が、大魔王軍が現れてから約十四年間の出来事です。その翌年、この世界の希望となる者たちが召喚されたのです⦆


 詩夕たちの事ね。

 で、今に至ると。


 うんうん。長い話だった。

 ……ん? あれ? セミナスさん?


⦅はい。なんでしょうか?⦆


 そういえば、アイオリさんとエアリーさんが魔王に関する事を調べているみたいな事を言っていたけど、それはどうなったの?

 何も言わないって事は、駄目だったって事?


⦅それに関しては、手記の最後のページをご覧ください⦆


 最後のページ?

 パラパラっとめくって確認。

 一文だけ書かれていた。


 ――『アキミチ。世界を頼む』と。


 ……どういう事? これ。


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[一言] ルベライノト……あ!?今更気づいたわ…
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