えぇと、まぁ……良いんじゃないかな?
DDとジースくんたち、シャインさんとグロリアさんが、ビットル王国に向けて飛び立っていった。
振り続けていた手を下ろす俺の胸中にあったのは、ただただ大丈夫だろうか? という心配だけ。
う~ん………………不安で胸が一杯。
もちろん、DDたちやシャインさんたちの事を心配している……訳ではなく、親友たちの方だ。
なんだかんだと、DDは竜である。
そう竜である。
おっきな蜥蜴ではない。
しかも、そこにシャインさんも加わっている状態。
変に暴れていないだろうか?
なんというか、こう……出会い頭に自分の力を見せ付けて主導権を握るために、なんかそこら辺の魔物とかを蹂躙していきそうな……。
⦅………………⦆
こういう時になんか言いそうなセミナスさんが黙っているのも、不安を加速させている。
……でもまぁ、なんだかんだと大丈夫そうな気がしないでもない。
何しろ、対応するのは親友たちなのだ。
俺とは違ってコミュニケーション能力も高いし、上手く付き合っていけると思う。
だから、DDやジースくんたち、シャインさんに関しては大丈夫だ。
良い人たち? だとわかってくれるはず!
問題なのはグロリアさんだ。
セミナスさんが、わざわざ同行させて下さいと言うくらいなのだから、ビットル王国で何かが起こると推測出来る。
……個別のイベントとか?
ただ、それが一体なんなのか……楽しみにと言っていたから、悪い事ではないと思うんだけど。
はっ! まさか親友たちの誰かと!
……いや、でもなぁ……う~ん。
………………。
………………まぁ、良いか。
セミナスさんも教えてくれないし、どういう事になったかは、会った時に聞けば良いや。
そんな事を考えていると、インジャオさんとウルルさんがこちらに来るのが見えた。
「おや? 準備を終えている間に、もう行ってしまわれたようですね」
「ちょっと時間がかかってしまいましたね」
このタイミングで来るとか、確実に狙って来たよね?
そんな二人に、俺とアドルさんはジト目を向ける。
「おーおー、インジャオさんとウルルさんじゃないですか! 今頃登場ですか? 二人でイチャイチャして満足ですか? こっちは色々と大変だったというのに」
「そうだな。DDたちの相手をこちらに任せっ放しにして、二人はずっと自分たちの世界に引き籠っていたようだしな」
俺に続いて、アドルさんもそんな事を言い出す。
……思い返せば、俺はシャインさんの相手をずっとしていた。
その間、DDやジースくんたちとの触れ合いはそれほどない。
………………。
………………そうか。
アドルさんが、DDやジースくんたちの相手をしていたのか。
DDの性格から考えて、間違いなくダンス三昧だったに違いない。
それは大変だろう。
もの凄く大変だったろう。
それなのに、俺だけ頑張ったみたいな風にして、ごめんよ。
マラソン中に謀って、ごめんよ。
アメンボ。
わかってくれたか、とアドルさんから視線を向けられ、俺はわかったよと頷く。
アドルさんと心が繋がった気がした。
ふっふっふっ、苦労した者同士の結束は固いのだ!
俺とアドルさんは協力して、インジャオさん、ウルルさんと少しでも苦労を分かち合おうと、これからねちねちと絡もうと思った。
それぐらいは許されるよね?
でも、その前にインジャオさんとウルルさんが、揃って頭を下げる。
「「それに関しては本当に申し訳ございません」」
「え?」「あ?」
まさかいきなり謝られるとは思っていなかった。
そのため、俺とアドルさんは出鼻を挫かれたようで、どもってしまう。
戸惑っている間に、インジャオさんは更に言葉を続けた。
「本当に申し訳ないと思っています。ですが、そう………………今回の退避行動は、死活問題故でして」
「し、死活問題?」
考えてもいなかった言葉が出てきて、ちょびっくり!
すると、頭を上げたインジャオさんが、どこか悲しい目で遠くを見始める。
「自分、気付いたんですよね……」
なんか哀愁を感じさせた。
「骨だけの自分って、ポキッと折れたら終わりなんじゃないかって……」
「………………」
………………。
俺とアドルさんは、サッと視線を逸らして黙る。
た、確かに、骨だけの状態で折れた場合、これってどうなるんだろう?
なんか治るイメージというか、くっ付く気が全くしない。
でも、ここは異世界。ファンタジー。
そういう薬とかあるんじゃないの? という視線をアドルさんに向けると、黙って首を左右に振られた。
「なんと言えば良いですか……ハッキリ言ってしまえば、DD様に付き合い続ければ疲労骨折しそうですし、シャイン様に付き合い続ければポキッと気軽に折れそうで……そんな想像しか出て来ないんですよね」
「だから私は、怯えるインジャオを匿う意味も込めて、DD様とシャイン様から遠ざけていたんです!」
ウルルさんが最後にそう付け加える。
………………。
「………………そ、そっかぁ。……う、うん。まぁ、そういう事なら……ねぇ? 仕方ない……かなぁ」
「それはなんと言うか………………なぁ。し、仕方ないと判断するしか……出来ないよ……な?」
俺とアドルさんは確認し合うように言う。
う、うん。仕方ない仕方ない。
実際、DD、シャインさんと関わった事で、ポキッと折れてしまうインジャオさんが簡単に想像出来た。
互いに何度も小さく頷き合う。
ただ、その前に確認というか、聞いておきたい事があった。
アドルさんも同じ考えなのか、インジャオさんの鎧の隙間から見える骨をチラチラ覗いている。
「うん。とりあえず、情状酌量の余地があるという事で、一旦この話は終わらせるとして……一つ聞いても良いですか? インジャオさん」
「わかってくれてありがとう。それで、何を聞きたいのかな? なんでも聞いて良いよ」
「勘違いだったらそう言って欲しいんですけど………………インジャオさんの骨、前よりも光沢があるというか……ちょっと光ってません? こう、暗闇の中だけでほんのり光る、みたいな……」
「………………」
インジャオさんが首を一回傾げる。
自分を指差すので、俺とアドルさんはその通りだと頷く。
またまた~と手を振るので、いやいや本当なんだって! と手を振って訴えた。
……それじゃあ見てみる、とインジャオさんが鎧の一部を少し外して確認する。
………………。
………………インジャオさんが固まった。
「……え? 光っている! え? ……本当に光っている!」
二度見して二度とも驚いている。
インジャオさんは慌てているようだけど、それを見て、俺とアドルさんは逆に冷静になった。
「……まぁ、夜道とか洞窟とか困らなそうですよね」
「あっ、私は明るいと眠れない体質だから、鎧のままか幕で遮ってくれ」
「あぁ~、そっかそっか。大変ですね、吸血鬼って」
「いや、吸血鬼としての部分はもう克服している。ただの自分の性質だな」
そっかそっかと、アドルさんと揃って頷く。
「……なんで急に冷静になっているんですか! 光っている! 自分、光っているんですよ! 緊急事態じゃないですか!」
インジャオさんは困惑しているようだけど、俺とアドルさんはもう冷静である。
寧ろ、冷静になったからこそ、わかる事もあるのだ。
「いや、だって……どう考えても」
「原因はウルルだろ?」
三人揃って視線をウルルさんに向ける。
視線が集中したウルルさんは、てへっ! と舌を出す。
「そういえば……最近手に入れた鉱石を使い出したとか、なんとか……」
インジャオさんが思い出したように言う。
それでピン! ときた。
間違いなく、竜の領域で無断拝借したアウト鉱石の事だろう。
これが表に出ればどういう事になるかわからないので、俺は空気を読んで口をつぐんだ。
◇
とりあえず、インジャオさんの骨のほんのり光っている部分は、高密度の魔力を含んでいる事がわかった。
どうやら、インジャオさんの骨密度と戦闘力が更に向上した、との事。
ただ、今後気を付けるように、とウルルさんはアドルさんに少し怒られていた。
……反省しているかは怪しいが。
またなんか見つけたらパク……無断拝しゃ………………使いそうだ。
最終目標は、あるかどうか知らないけど、オリハルコンとみた!
そうこうしている間に、ラクロさんがこちらに来る。
「もう行ってしまうのか。もっとゆっくりしていっても良いのだが」
「色々とお世話になりました。俺ももっとゆっくりしていたいんですけど、もう行かないといけないみたいで」
ラクロさんの言葉にそう答える。
「そうだね。アキミチには、神解放の使命があるのだから」
そう言いながら、笑みを浮かべたラクロさんが手を差し出してくる。
俺も笑みを浮かべて、握手を交わした。
「頼って申し訳ないが、宜しく頼む。もし助けが必要なら、いつでも頼って欲しい」
「ありがとうございます」
ラクロさんは、そのままアドルさんたちとも挨拶を交わしていく。
それが終われば、いよいよ俺たちも出発の時だ。
「それでは、君たちの使命が果たされる事を祈ろう。いつでも来てくれて構わない。歓迎するよ」
ラクロさんの言葉に笑みを浮かべ、その姿が見えなくなるまで手を振り続けた。
次から新しい章に入ります。




