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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第十一章 竜の住み処と世界樹
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歴史 一つの歴史の終わり

 ……そっか。ここで予言の女神様は、アイオリとエアリーの傍から居なくなるのか。

 でもまぁ、仕方ない、か?


 のちに復活する魔王と戦うために、色々と準備が必要になるんだろうし。

 何十年も先となると、アイオリとエアリーも戦える年齢ではない可能性はある。


 そのためにも色々準備しないといけないんだろう。

 次、勝つために。


⦅マスター?⦆


 いや、きっと勝つはずだ!


⦅マスター? これは過去の話ですよ?⦆


 うん。だから、未来に向けての………………あっ。


⦅気付いていただけたようで何より。残念ですが、負けてしまいます。そして、様々な手を打って、今に至る訳です⦆


 ……そうだよね。

 その結果が出るのは、まだこれからなんだ。

 アイオリとエアリーの思いも、繋がっているのかな。


⦅それが繋がるかどうかは、マスター次第……いえ、手記を読んだ者がどう思うか、でしょう。繋ぐ意思を持ったなら、それはもう繋がっているのです⦆


 ……うん……うん。そうだね。

 ところで、アイオリとエアリーは、またいつか予言の女神様と会えるの?


⦅頻繁に会っていますが?⦆


 ………………。

 ………………。

 え? いやいや、え?


 いや、だって、また会えるかどうか、いつになるかどうか、そんなのが一切わからないような別れ方だったじゃない。


⦅想像以上に寂しかったのでしょう……耐えきれず、予言の女神の方から頻繁に会いに行っていたようです⦆


 う~ん……容易に想像出来るだけに、なんとも言えない。

 だろうね、と言わせる力が、予言の女神様にはあるな。


 でも、きっとアイオリとエアリーは喜んでいただろうから、それで良いんだと思う。

 なので、手記の続きを読む。


 といっても、もう僅か。

 国を興すようだし、忙しくなっていったんだろう。


     ―――


 予言の女神が道を指し示した事が現実となっていく。

 周囲の協力と後押しもあり、アイオリとエアリーは国を興す事になった。


 その裏にあるのは、やはりアイオリとエアリーが魔王を封印したから、ではなく、人類が一つになった事の証明であるEB同盟の中心であり、立役者だからである。


 もちろん、妬みなどの感情による敵は居るが、それ以上の味方が付いているのだ。

 その味方の中に、その時代の強国、大国と呼ばれる国々があったのは、強力な後押しとなった。


 そうして様々な話し合いが行われ、一つの形が定められる。


 ――世界統一国「ルベライノト」。


 アイオリが下大陸を治める国王、エアリーが上大陸を治める女王となり、元々あった各国は領地持ち貴族のような立場となる。

 日本で言えば、アイオリとエアリーが総理大臣のような立場で、各国が県となるような形だろうか。


 国を一つにするのは、魔王軍による影響が甚大であり、全ての国が疲弊しきっていたため、復興などの物事を円滑に進めるため、という部分が大きい。


 ただ、この世界統一国に関しては、一代限り――アイオリとエアリーが存命である場合に限り、もしくは、本人たちの意思による退位などが起これば、それで終わりという条件が付けられた。


 この出来事は驚くほどスムーズに進められ、魔王が封印された翌年。

 世界統一国「ルベライノト」は正式に興され、その年から年号は「黒歴」から「大陸歴」へと変わる。


 世界各地の復興が進められ、平和な時代の訪れとなった。


     ―――


 アイオリとエアリーは忙しい日々を過ごす。

 それは当然だろう。

 大陸全土を見なければいけなかったのだから。


 それでも世界統一国「ルベライノト」が上手く機能したのは、アイオリとエアリーの頑張りだけではなく、協力してくれる者たちが多く、優秀であるからだろう。


 そんな中、二人が思い出すのは、魔王が居た廃城に共に挑んだ者たち。


 女性エルフは男性エルフの死体を引き取って、エルフの里へと戻っていった。

 娘と共に生き、娘と共に更に強くなると、亡き男性エルフに固く誓って。


 吸血鬼の男性は吸血鬼の女性と結ばれ、魔族が集まる場所へと向かった。

 アイオリ、エアリーとは、強い友情で結び付いている。


 虎獣人の冒険者は、魔王から受けた傷が原因で冒険者を引退した。

 冒険者ギルドに勤め、後進の育成に尽力を尽くすようになる。


 予言の女神に関しては、時折アイオリとエアリーの下を訪れ、神々の愚痴を言うようになっていった。


 また、竜に関しては約束の通り、その関わりは当人たちだけしか知らない秘密となる。

 ただ、アイオリとエアリーは時折城を抜け出して、秘密裏に会いに行っていた。


 そうして共に挑んだ者たちの事を思い出すと、アイオリはいつも気になる事があった。

 それは、魔王。

 正確には、魔王の口調や雰囲気が変わった事だ。


 もしそこに意思が二つ存在していると仮定した場合、特に口調が変わる前。

 アイオリは、そちらの方だと、まだ話が通じそうな感じがしているのだ。


 故に、その逆。

 変わったあとの方は目に確かな意思が宿ってはいるのだが、話が通じる感じではなかったと、アイオリは思っていた。


 アイオリは、その仮定がどうしても気になっていたため、エアリーにも協力してもらい、時間を作っては魔王の事を調べるようになっていった。


 それに、魔王はいずれ復活する可能性が高い。

 大人しく封印されているとは思えなかったため、魔王に対する調査は、いずれ誰かの役に立つだろう、という考えもあった。


     ―――


 魔王が封印され、世界が少しずつ、本当に少しずつ平和へと進み始めてから、長い……長い月日が流れ……世界統一国「ルベライノト」の終わりの時が来る。


 ――大陸歴・五十五年。


 昨年、大病を患ったアイオリが、最期の時を迎える。

 世界統一国「ルベライノト」。下大陸側の王都にある王城のアイオリの私室。


 そこにエアリーを始め、多くの人が集まり、ベッドで横たわっているアイオリに、最期の挨拶を交わしていく。

 死期はもう直ぐそこだと、アイオリは理解していた。


 それでも私室内居る者たち全員と挨拶を交わし、アイオリは窓から見える青空に視線を向ける。


「……あとは、未来に生きる者たちに任せよう……」


 アイオリはそう呟いて、その生涯を終えた。

 それから間もなく、アイオリのあとを追うように、エアリーも多くの人に見守られながら逝く。


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