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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第十一章 竜の住み処と世界樹
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歴史 そこで笑えるから強い

 ちなみにだけど、俺がドラロスさんのブレスを受けたら?


⦅骨も残りません⦆


 だよね。


⦅まぁ、私が居る限り、そうはなりませんが。いえ、そうなる前に、前竜王を無力化します⦆


 無力化?

 倒すんじゃないんだ。


⦅残念ですが、前竜王も私の力に対抗出来るようで、未来を、先を読む事が困難です。故に無力化を選択せざるを得ません⦆


 あぁ、魔王……今は大魔王か。

 タメ張ってるんだもんね。


 でも、無力化も難しい気がするんだけど?


⦅造作もありません。つがいを味方にすれば良いだけですので⦆


 ……味方に出来るの?


⦅造作もありません⦆


 言い切る辺りに自信を感じる。

 まぁ、そもそもドラロスさんと敵対するような事にはならないと思うけど。


⦅そうですね。マスターと気が合っているようでしたし、そうはならないでしょう。それに、前竜王はこの地に縛られているようなモノですから、いざとなれば逃げれば良いだけです⦆


 そうだね。安全第一。

 無理に戦う必要なんてどこにもない。


 うんうん。

 そう結論を出して、手記の続きを読む。


     ―――


 アイオリたちの足取りはしっかりとしていた。

 迷いなど感じられない。

 まるで、魔王がどこに居るのかをわかっているかのように進んでいく。


 実際、アイオリたちは魔王がどこに居るかがわかっていた。

 いや、廃城に入った瞬間に、わからされたのだ。

 魔王は城の上部に居る、と。


 まだ距離があるというのに、濃密に感じさせられてしまう邪悪な気配。

 まるでこちらに来いと誘っているかのようだ。


 それだけの気配を発せられるのは魔王だけだとアイオリたちには確信があった。

 予言の女神も、それに異論はない。

 己の力がまともに通じないところに、魔王は存在しているのだから。


 ただ、当然のように、廃城の中にも魔物は徘徊している。

 それも、恐らくは外に居る魔物よりも強い高レベルの。

 下手をすれば序盤のボスよりも強い雑魚が、アイオリたちの行く手を遮るように次々と現れる。


 だが、アイオリたちは精鋭。

 予言の女神は戦闘能力がないため戦闘に関われないが、そんなのは関係ないくらいに強い。

 行く手を遮る魔物が強くても、それだけでアイオリたちをとめる事は出来ない。


 一戦闘にかかる時間も少なく、アイオリたちの快進撃は続く。

 また、罠の類がないのも幸いだろう。


 ここはダンジョンではなく、元は一国の城でしかない。

 宝物庫や隠し部屋などの周辺には罠があるかもしれないが、普通に進むだけなら罠の類を気にしなくても良いのだ。


 だからこそ、アイオリたちの進撃速度は速い。

 が、そのまますんなりといかないのは世の常か。


 廃城である以上、階段が破壊されているのなど、その可能性は大いにある。

 今回もそうであり、進んだ先にあった階段部分はまるごと破壊されていて、迂回路を見つけて進む必要があった。


 一通り探索したあと、上に行くための唯一の手段は、広大なダンスホールを抜けた先にある階段だけだと判明する。

 手段があるだけマシだが、問題がない訳ではない。


 ダンスホールには、四体の魔物が居た。


 その体躯にバチバチと電が走る黒い獅子。

 大槍と大盾を持ち、完全武装している巨体のオーク。

 毒々しい紫色の鱗が光る大蛇。

 大剣を携え、筋骨隆々の体と捻じれた二本の角を持つオーガ。


 四体それぞれが邪悪な気配を発し、他の魔物とは一線を画している存在感を放っている。

 アイオリたちが目指していた最も強い邪悪な気配を感じられるのは、その四体を越えた先にある階段の奥。


 ただ、そう易々と通れない事は明白。

 四体の魔物がここは通さないと立ち塞がっているのだから。


 ドラロスが廃城前に陣取っている以上、廃都の方から廃城に入り込んでくる魔物は少ないだろう。

 絶対ではないと言い切れないのは、廃城前以外にも出入り口がある可能性は高いからだ。

 それに、廃城なのだから、入ろうと思えばどこからでも入れる。


 その数は極端に少ないだろうが、ゼロではない以上、いつ後方から新たな魔物が現れてもおかしくはない。

 魔王戦を前に余計な体力を使用するのは得策ではない以上、ダンスホールを抜けるための最適解は――。


「アイオリとエアリー、予言の女神様を先行させて、残る俺たちであの四体の魔物の足止め、もしくは討伐をする、というのが最善じゃないかな?」


 そう提案したのは、エルフの男性。

 エルフの女性もそれが正解だろうと頷き、吸血鬼の男女、虎獣人の冒険者も同意するように頷く。


 アイオリとエアリーはそれぞれ一人ずつ視線を合わせていき、根負けしたかのように息を吐く。


「……意思は固いって訳か。わかった。確かに、そうするのが一番、か。でも、自分たちが犠牲になればとか考えんなよ」


 アイオリの目は、死ぬのは許さないと本気で告げていた。

 答えたのは、エルフの女性。


「そんなの当たり前だろ。誰も犠牲になりたいなんて思ってねぇよ。寧ろ、私たちが助けに行くまで、そっちが死ぬんじゃねぇぞ」

「そうだな。相手にするのが、たかが魔物か、魔王か。どっちが大変なのかは明白。寧ろ危険なのは、アイオリたちの方だな」


 虎獣人の冒険者が追随し、アイオリは苦い表情を浮かべる。


「なら、私たちがあの四体の魔物を倒し、アイオリを助けに向かうという形になる訳か」

「あら、そうなると、勢いに乗っている私たちが、そのまま魔王を倒すかもしれませんね」


 吸血鬼の男女がそう言うと、アイオリは即座に反論する。


「いやいや、そこは逆でしょ。俺たちが魔王を倒して、そっちの救援に駆けつけてやるよ」

「なら、勝負だな」


 エルフの女性がそう言うと、場に笑いが生まれる。

 全員わかっているのだ。


 魔王だけじゃなく、ダンスホールに居る四体の魔物も、そう簡単に倒せるような存在ではないという事を。


 直接魔王と対峙した訳ではないのでそちらはわからないが、少なくとも、五人がこれから相手をする四体の魔物に関しては、五人と同程度、もしくは上かもしれないような力を感じるのだ。


 それでも、ここでこうして笑えるからこそ、選ばれた精鋭であり、強者なのだ。

 既に覚悟は出来ており、ここで迷うような素振りは一切ない。


 そして、五人は四体の魔物に襲いかかり、その隙を突いて、アイオリ、エアリー、予言の女神はダンスホールを一気に駆け抜けて階段を上る。


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