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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第十一章 竜の住み処と世界樹
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歴史 失敗しても挽回する事が大切

 ……あれ? もしかしてだけど、攻と守それぞれに優れたエルフの夫婦と、特殊な強さを持つ吸血鬼の男女って……。


⦅深く考える必要はありません⦆


 いや、でも、アイオリさんとエアリーさんが居た時って、結構前だよね?

 そうなると……今二人って……。


⦅マスター。この世界では長命種は普通に存在しています⦆


 それもそっか。それがこの世界の常識だもんね。

 郷に入っては郷に従え、とも言うし、そういうのを気にしないのがこの世界の普通。


⦅納得が早い!⦆


 でもそうなると、確かシャインさんの旦那さんって……。


⦅わかっているとは思いますが、人に歴史あり、です。今読んでいる出来事は既に過去の出来事であり、その結末は変わりません。マスターが気に病む必要はないのです⦆


 ……それはわかっているんだけどね。

 でも、そうなると、アドルさんの奥さんは除外して、あと一人出会った事がない人というか、これまで話にも出てこなかった、当代最強と言われている虎獣人の冒険者ってのも……。


⦅マスターはあれですか? あとがきから読む派ですか? ネタばれOK派なのですか?⦆


 いえ、最初から読みます。

 あとがきも読みます。

 ネタばれされても楽しめる派です。


⦅なら結構です。続きをどうぞ⦆


 はい。続きを読みます。


     ―――


 アイオリたちは秘密裏に竜の住処へと向かい、そこで竜王ドラロスと対峙する。


「……わかっているとは思うが、此度の竜の協力は神々からの要望があればこそ。竜が常に人の味方であると考えぬように」


 ドラロスが迫力を前面に出してそう言う。

 素のドラロスを知っているアイオリとエアリーは、真面目な雰囲気のドラロスを見て笑いそうになるのを堪えているが、初対面であるエルフ夫婦、男女の吸血鬼、虎獣人の冒険者は、戦々恐々としている。


 それはそうだろう。

 竜はこの世界における最強種族であり、今話しているのはその中の頂点に位置する竜王なのだから。


 実際、アイオリとエアリー、予言の女神は普段と変わらぬ様子だが、他の者たちは己と竜との格の違い、内包している力の差を感じていた。

 竜の王とは、これほどまでに差があるのか、と。


「事前の取り決めによって、我ら竜の協力は最小限だ。我がお前たちを魔王の城まで運び、そのあとも多少手伝うのみ。それだけである事を忘れぬように」


 そう締めくくるが、実際は少し違う。

 ドラロスはアイオリたちと行動を共にするが、他の竜たちはEB同盟側から見えない位置に居る魔王軍を相手取る予定なのだ。


「もちろん、忘れておりません。竜の協力を感謝します」


 事情を知っている予言の女神が恭しく一礼する。

 多少芝居がかっているのは仕方ないだろう。


 予言の女神の一礼に合わせて、アイオリたちも一礼をする。

 アイオリとエアリーだけは笑いを堪えるためか若干震えているが、他の者たちは気付かない。


 だが、そもそもアイオリとエアリーたちは堪えなくてもよかったかもしれない。

 何故なら、そう言っている者自体が、こういう堅苦しいのを苦手としているのだから。


「……まぁ、わかってくれてんなら良いよ。それに、今から気を張っても仕方ないしね。楽に楽に。我はもう楽にするから。そういう肩こりそうな空気感は、魔王と相対してからでも遅くないでしょ」


 はぁ~、こういうのめんどい、とでも言うように、ドラロスから一気に力が抜ける。


「だよな」

「そんな訳にいきません」


 アイオリもドラロスの行動に追随しようするが、予言の女神から待ったが入る。

 実はエアリーもそうしようとしていたが、予言の女神の行動を見て咄嗟にやめた。

 他の者たちもドラロスの雰囲気の突然の変化に戸惑っている。


 それに、これは最強の中の最強である竜王だからこそ、このような態度でも許されるのだ。

 といっても、たしなめない者が居ないという訳でもない。


「……あなた?」


 ドラロスの背後にゆらりと現れるミア。

 その雰囲気は、若干だが怒りが感じられる。


「こういう場面では、もう少し真面目にしてください」

「これが我の真面目だから」

「そうですか。では、ミレナを連れてきます」

「ちょっと待って。それはあれかな? だらしない父親の姿を見せようって事かな?」

「ええ。これでミレナの尊敬は私だけが受ける事になりますね」

「それはちょっと、父親として看過出来ないかな」

「でしたら、さっさと片付けてきなさい」


 そう言って、ミアは出口の方を指差す。


「……なんだろう。休日に邪魔だからと家から追い出される気分」


 肩を落としつつ、ドラロスはアイオリたちに声をかける。


「それじゃ、さっさと行こうか。お前たちで言うところの、上大陸の北部にある城が目的地でしょ」


 言ってから、ドラロスはハッとする。

 アイオリ、エアリー、予言の女神もそうだ。

 何故その事を知っているのか、という事に気付いたからだ。


 四者が四者とも露骨に反応してしまっているため、この事がきっかけで、ドラロスとアイオリたちの関係がバレてもおかしくない。


 だが、ドラロスはこう見えても竜王。絶対強者。

 頭も相応に切れる。


 故に――。


「そ、それで合っているだろ? 何故なら、そこから強い力を感じるからだ」


 嘘ではない。

 ドラロスは実際に魔王の力を感じてはいる。

 だからこそ、こう言い訳したのだ。


 四者以外の者たちが、なるほどと肯定を示す。

 ドラロス、アイオリ、エアリー、予言の女神は、納得しているような雰囲気を察して、心の中でホッと胸を撫で下ろす。


 ただ、ミアは笑みを浮かべているが、内心ではこれから先きちんと隠し通せるのかしら? と不安で心配だった。

 何故なら、これからドラロスはアイオリたちと行動を共にするからだ。


「い、行くぞ!」


 ドラロスを先頭にして、アイオリたちがあとをついて行く。

 その様子を見るミア。


「……まぁ、もしバレても大丈夫そうな方たちに見えたから、そこまで気にしなくても良いかしら。それに、どこかでバレて迷惑がかかっても、竜総出で襲いかかって相手を滅ぼせば良いだけですしね。……でもそうなると帰ってくるまで暇だから……ミレナに新しい技でも教えておきましょうか。……逆エビ固め」


 そう判断して、ミアはこの場をあとにする。

 魔王にやられるかもと考える素振りがないのは、それだけドラロスの力を信用しているからだろう。


 そして、ドラロスはその背にアイオリたちを乗せて、魔王の城に向けて飛んで行く。


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