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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第十一章 竜の住み処と世界樹
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歴史 当人たちにしかわからない世界がある

 えっと……アイオリさんとドラロスさんがいきなり友達になったとか、DDとミレナさんの関係性が子供の頃からとか、そこら辺は納得出来る。

 俺もドラロスさんとは初対面で仲良くなれそうな気がしたし。


⦅見た目は似ていませんが、精神が似通っているのでしょう⦆


 そうかな?

 いや、全然似てないよ。


⦅当人たちはわからないモノです⦆


 まぁ、それは良いよ。

 なんか最後の方で、エアリーさんがミアさんから関節技を教わった、と書いてあったけど?


⦅ええ。このあとも会う度に新たな技を教わり、正式に弟子となります⦆


 ……エアリーさんも、勇者なんだよね?


⦅はい。アイオリは近距離武器系、エアリーは遠距離魔法系の勇者です⦆


 なのに、関節技?


⦅全てにおいて有効な攻撃手段、と知識にありますが?⦆


 まぁ、間違ってはいない、と思うけど、勇者としてそれは良いのだろうか?


⦅使用した際は喜々として使用していた、と知識にあります⦆


 本人が納得しているのなら……まぁ、良いか。

 ところで、もう一つ良いかな?


⦅はい。なんでしょうか?⦆


 なんかここまで、予言の女神様があんまり活躍していないように思えるんだけど?


⦅事実です。それが予言の女神の基本スペックなので⦆


 いや、でも、これはアイオリの手記だけじゃなく、セミナスさんからの補足もあって、その補足によって誘導されているような気が……。


⦅気のせいです⦆


 ………………。


⦅気のせいです⦆


 ………………はい。

 手記の続きを読む。


     ―――


 アイオリとエアリー、予言の女神の次なる目的地は、ドワーフの国だった。

 その目的はもちろん、アイオリとエアリー、二人の勇者の専用装備を製作するためだ。


 何しろ、専用装備となると、そこらの量産品で済むような話ではなく、一から製作する以上、それ相応の時間が必要である。


 魔王軍との戦いがいつ終わるか、それこそ時間がどれだけかかるかわからない以上、早い内から依頼しておいて損はないのだ。

 専用装備ともなれば、それは尚更だろう。

 早く入手すればするだけ、魔王軍に対する取れる行動も増え、安全性も増すのだから。


 そうしてドワーフの国に辿り着いたアイオリ一行は、早々に武骨な謁見の間でドワーフの王と会う事になった。

 ドワーフの特徴的な低身長だが、ボサボサ頭にひげもじゃの顔と筋肉質な体付きで、作業着姿が非常に似合っている。


「お主たちが勇者、だと?」

「ああ。これから魔王軍と戦うのにドワーフたちの力が必要だ! 協力してくれ!」


 そう言って、アイオリはお願いしますと頭を下げる。

 その姿をドワーフの王は、不機嫌そうな表情で見る。


 といっても、実際に不機嫌という訳ではない。

 元々そういう風に見える顔立ちなのだ。


「と言ってもな、既にある程度は協力しているぞ。何しろ、大陸中の鍛冶を請け負っていると言っても過言ではないからな」


 ドワーフの王の言葉は過言でもなんでもない。

 実際に、そう言えるだけの依頼が各国から届けられ、正しく国を挙げてフル稼働中なのだ。

 そこにいきなり自分たち専用の装備を製作して欲しい、と言ってくる者が現れた。


 はい、製作します、と簡単に承諾する訳にはいかないのである。

 それに――。


「そもそも、勇者と名乗っているが、それが本当だという証明はどうする? それこそ、そのように名乗る者は、そこいらにいくらでも居るぞ。……そっちの、神性を感じさせる女が証明でもするつもりか?」

「そうですね。そうしても構いませんよ」


 答えた予言の女神が、一歩前に出て優雅に一礼する。


「初めまして、ドワーフの王よ。私は予言の女神。彼らは予言によって見出された、この世界を救う勇者です」

「………………それだと、予言の女神であるという証明はどうする? 確かに神性は感じるが、言ってしまえばその程度の事でしかない」

「神に対して不敬です……と言いたいですが、ここは予言の女神らしく、予言で証明しましょう。……直ぐにでも、あなたは私たちを認める事になるでしょう」

「ほう。面白い事を言うではないか。ホラでない事を願う」


 ドワーフの王は笑みを浮かべ、待ちの構えを取る。


 ………………。

 ………………。


「………………何も起きんが?」

「あれぇ? ちょ、ちょっと待って! ………………繋がった。ちょっとどういう事!」


 ドワーフの王に断りを入れて、何やら空中に向かって話し始める予言の女神。

 ドワーフの王は呆気に取られているが、アイオリとエアリーはいつもの事かと特に気にしていない。


「……はぁ? 酒場巡りって何? ちゃんと時間通りに来いって言ったでしょ! ………………酒が美味いのが悪い? そんなもん、吐いて捨てろ! ……もったいない? 知るか!」

「今回はかなり憤っているな」

「そりゃそうでしょ。見せ場を潰されたようなモノだし」


 冷静に分析するエアリーに、アイオリはなるほどと頷きを返す。


「いいからさっさと来い! 話が進まないから! わかった?」


 そう怒鳴って一方的に何かを切り、予言の女神はドワーフの王に視線を向ける。


「ほほほ。ごめんなさいね。直ぐ来ますので、少々お待ちを」

「う、うむ」


 そうして少しだけ待ったあと、この謁見の間に新たな者が現れる。

 現れたのは、髭もじゃの小さなおっさん。

 見た目は完全にドワーフだが、その身からは神性が感じられる。


「遅い!」

「すまんすまん。酒の誘惑には抗いがたいのだ」

「言い訳になるか! ……はぁ。神相手には予言が効きづらくて困る。ここから辺もどうにかした方が良いかしら」


 これでここでの自分の役目は終わりと判断したのか、予言の女神は何やらぶつぶつと考え始める。

 実際、そうだった。


 新たに現れたドワーフに対して、ドワーフの王が大きく目を見開く。


「その姿で、神性を感じさせる……まさか、鍛冶の神、様……」

「ワシが鍛冶の神だとわかるのか?」

「神性もそうですが、隠し切れずに溢れている鍛冶力。間違えようもありません」

「良い審美眼を持っているようだの」


 鍛冶力とは、鍛冶の腕が優れていればいるほど、その身から溢れ出るオーラである。

 注意:このオーラはドワーフにしか見えません。


 なので、アイオリ、エアリー、予言の女神は、相変わらずわからない世界だと思っていた。

 それでも、やるべき事はやっておかないと、と予言の女神は鍛冶の神に事情を説明する。


「……なるほどの。こやつらが勇者なのはワシが保証しよう。なので、これからこやつらの武具を製作するのだが、さすがにワシ一人では時間がかかり過ぎる。この世界のため、協力してくれるな?」

「もちろんです! 鍛冶の神に協力出来るなど、正しく誉れ! 喜んで!」


 話早いな、とアイオリたちは思った。


「あぁ、必要な素材はもう集めておるから安心しろ。それと、名を聞いておらんかったな、ドワーフの王よ」

「『スラス』と申します」

「うむ。では、早速鍛冶にといきたいが、まずはワシらの力の源である美味い酒を確保しに行くぞ! ついでに、まだ数人足りんから、そこら辺も確保だ!」

「ははっ!」


 こうして、アイオリとエアリーの専用装備製作が始まる。


「……これで良いんだよな?」

「……きちんと出来るのか心配」

「大丈夫よ。なんだかんだと、鍛冶はきっちりとする神だから。……まぁ、酒に関してもだけど。ほら、次に行くわよ」


 アイオリとエアリーは、予言の女神に背中を押されながら次へと向かう。


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[気になる点] 最後アイオリとエアリーではなく、アイオリ"ちお"エアリーになってます
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