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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第十一章 竜の住み処と世界樹
341/590

歴史 出会いから始まる友情もある

 ………………。

 ………………。


 確か、ミレナさんは密かに「姉貴」って呼ばれていた。

 それで、ミアさんは「姉御」か。

 なんだろう。そういう家系の強い血を感じる。


 さすがは母娘という事か。

 ……これ、間違っても言っちゃ駄目なワードだよね?


⦅そうですね。言った場合……⦆


 ……言った場合?


⦅前方をご覧ください⦆


 言われた通り、顔を上げて前方を見る。

 DDがミアさんに関節技を極められていた。

 悲鳴が上がっているので、マジで痛そう。


⦅あれよりも酷い目に遭います⦆


 絶対言いません。

 ぽろっと言わないように、姉御というワードを記憶の中から消し去っておこう。


⦅それがよろしいかと⦆


 ところで、関節技を見て気になったけど、予言の女神様は関節技が得意なの?


⦅そうですね。腕ひしぎ十字固めを得意としています⦆


 なんというか、女神らしくない。


⦅まぁ、所詮は予言の女神ですので⦆


 ……うん。それで通用するのって、神様たちだけじゃないだろうか?

 少なくとも、面識のない俺には通用しない。


⦅ちなみにですが、あそこの純白竜は、関節技なら吊り天井固めを得意としています⦆


 吊り天井固め……確か、ロメロ・スペシャルだっけ?

 両手足を使って相手を持ち上げるような形だったはずだけど……うん。合ってるっぽい。


 実際に、ミアさんがDDにそれを極めている。

 ……頑張れ、DD。


 心の中で応援し、手記へと視線を戻す。


     ―――


 ミアの案内で、アイオリとエアリー、予言の女神は竜の住処で、竜王ドラロスと相対する。


「やあ、よく来たね。我はドラロス。竜王だ。よろしくね」

「ああ、俺はアイオリ。んで、こっちはエアリーと予言の女神様だ。よろしくな」


 軽快な挨拶を交わすドラロスとアイオリ。

 そんな二人に、エアリーと予言の女神、ミアが半眼を向ける。

 どうしていきなりこんな通じ合っているのか、と。


 そんな事は知らないとばかりに、アイオリとドラロスの会話は続く。


「それで、ここには何をしに来たの?」

「実は、俺とエアリーは勇者なんだ!」

「おぉ! 勇者! 初めて見るな」


 へぇ~、とドラロスがアイオリ、だけではなく、エアリーにも観察するような視線を向ける。


「ふぅ~ん。確かに、そう名乗るだけの力はあるみたいだけど……そっちにはなんか神性がある人も居るし」

「いやいや、この人は人じゃなくて、予言の女神様」

「予言? ……あぁ、そういう事。つまり、魔王軍をどうにかしたいから、我たちの協力を得にきた、で合ってる?」


 ドラロスの言葉に、アイオリはその通りだと頷く。


「確かに協力ってのはそうだけど……まずは友達になるところからだな! だから、お前、俺の友達だからな!」


 わかったな、と胸を張るアイオリ。

 エアリー、予言の女神、ミアは、アイオリに向けて増々きつい半眼を向ける。

 それこそ、いきなり何言ってんだ、こいつ? のような。


 けれど、対するドラロスは、大きく笑う。


「あはははははっ! 面白いね、勇者……いや、アイオリ、だっけ? 友達だったら、名前で呼ばないとね」

「そうだぜ、ドラロス!」


 わはははははっ! と笑い合うアイオリとドラロス。

 そんなドラロスに向けて、ミアが声をかける。


「……良いの?」

「良いの良いの。なんか波長が合うんだよね」

「まぁ、それは見てわかりますが……それに、魔王軍とやり合う事になるわよ?」

「それも良いんじゃない? そもそも、魔王軍が我たち竜を避けるのは、向こうが勝手に避けていて、我たち竜も特に手出ししなかっただけの、暗黙の了解のような状態でしかない。このまま人の方が滅びれば、魔王軍の狙いが我たちに向けてもおかしくないのは、わかるよね?」

「当たり前です」

「もしその時が来たら、まあやられないとは思うけど相応の被害は出る。なら、ここは協力した方が結果的に被害を抑えられるでしょ?」


 ドラロスの問いに、ミアはその通りですが、と不承不承ながら頷く。

 何故なら――。


「言いたい事はわかりますが……普段のあなたっぽくないわね」

「いやぁ、だって、このままだと我の安眠が邪魔されそうだし」

「その方が納得出来るわ」

「それに……」


 ドラロスはそこで言葉を区切って、視線を自身の後方に向ける。

 ミアも同じくそちらに視線を向けると、小さな白い竜が、同じく小さな黒い竜にロメロ・スペシャルを極めていた。


「おかあしゃん直伝~!」

「ギ、ギブギブ!」


 将来を予見するような悲しい光景だが、その小さな白い竜を見るドラロスとミアの目は優しい。


「こんなんでも父親だからね。早く竜王の地位を渡したいけど……荒れた世界を渡すのは、さすがに駄目な気がする」

「当たり前です」

「だから、協力するんだよ」


 そう言って、ドラロスはアイオリに視線を戻す。

 ただし、その視線は相手を試すようなモノに変わっていた。


「といっても、友達だからといって、無条件でという訳じゃない。言った通り、こちらとしては、確かに被害は出るがやれない訳じゃないからね」

「当たり前だろ! 友情とそこら辺は別だ!」

「そう言うと思ったよ。まぁ、アイオリと……」

「……エアリー」

「エアリーくらいなら、友達として匿っても良いけどね」


 アイオリはニカッと笑みを浮かべる。


「匿う必要なんかねぇよ! 世界は救ってみせる!」

「そうそう、その意気。で、条件だけど、我たち以外、つまり人類を一つに纏める事が出来たなら、我たちも協力しよう」

「それなら大丈夫だ! 元々そのつもりだったからな!」

「もちろん、我たちが協力する事は誰にも言わないようにね。それと、我たちが協力するのは、あくまでもアイオリとエアリーに、だから。もし、よからぬ事を行うヤツが居たら……」

「そんなヤツがぶっ飛ばしちまえ!」


 アイオリとドラロスは笑い合う。

 エアリーはやれやれと肩をすくめ、予言の女神は話が上手くいきそうでホッとしている。

 ミアは、小さな白い竜にそれでは駄目だと更なる関節技を教えていた。


 だが、これである程度の話が纏まったのは確か。

 人類を一つに纏める事が出来れば、竜の協力を得る事が出来る。


 実際、そういう約束を結べただけでも奇跡に近いのだ。

 本体であれば、竜を相手にして、そこまでの事は出来ないのだから。


 勇者だからこそ……いや、アイオリだからこそ出来た事なのである。

 アイオリたちはこのまま竜の住処で一泊した。


 アイオリはドラロスと存分に語り合い、エアリーはミアから関節技を教えてもらい、予言の女神はビクビクしながら過ごす。


 そして翌日。

 アイオリ、エアリー、予言の女神は、人類を一つに纏めるため、次なる目的地に向けて出発する。


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