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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第十一章 竜の住み処と世界樹
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歴史 ここから反撃が始まる

 ……なんか、またセミナスさんを生み出すきっかけみたいなのがあったけど?


⦅一因です⦆


 なるほど。

 アイオリとエアリーとのやり取りによって、今のセミナスさんが形成されたのか。


⦅一因です⦆


 積み重ねって事ね。

 それにしても、予言の……女神様? は、アイオリとエアリーに随分とやり込められている印象なんだけど。


⦅へっぽこですからね。予言の女神は⦆


 いや、セミナスさんにとっては生みの親でしょ?


⦅関係ありません。そもそも予言の女神自身も言っていますが、予言はあやふやなモノが多いため、微妙にわかりづらいのです。それに比べて私は的確そのもの。基本が違います。基本が⦆


 ……相変わらず、予言の女神様の事になると、手厳しい。


⦅いえ、マスター、それは違います。予言の女神だけでなく、全ての神に、です⦆


 それはそれでどうなんだろう?


⦅問題ありません。神の上に立つのが、私です⦆


 言い切っちゃったよ。

 しかも、そういうセリフってラスボスが言いそうだよね。

 ……まぁ、セミナスさんはラスボス感があるけど。


⦅マスター、心外です⦆


 ごめんごめん。

 さすがにラスボス呼ばわりはひどいよね。


⦅ラスボスクラスに分類されるのは間違っています。正しく認識するのであれば、最低でもラスボスを超えた強さを持つ裏ボスクラスでなければいけません⦆


 そっち!


⦅あっ、手記の方ですが、これから先は勇者たちの鍛錬が十六ページ続きます。ですが、その部分に関しては、それほど大した事は書かれていませんので飛ばしてください⦆


 ……え? 良いの、それ?


⦅問題ありません。厳しい鍛錬を積み、勇者として覚醒しましたというだけですので。それに、大部分が神々へのクレームと言いますか、特に剣の神が面倒という内容なだけです⦆


 じゃあ、飛ばそう。

 ここにまで剣の神様の影響があるとは……。

 それじゃあ、十六ページ後、からで良いんだよね?


⦅はい⦆


 パラパラと飛ばして、続きを読む。


     ―――


 アイオリとエアリーが神界へと鍛錬に向かってから、月日は流れ――十年後。

 平和であった大陸に、遂に魔王が誕生し、魔王軍が組織され、侵攻が開始される。


 その始まりは、大陸北部。

 最北端に位置するところから始まった。


 また、その侵攻は、魔物故か凶暴性を前面に出した勢いそのままに進んでいく。

 何故なら、その魔王軍の侵攻は、食料を求めず、捕虜を必要とせず、占領が目的ではない。


 自身が傷付こうが一切顧みず、行うのはただただ破壊。

 その身に宿る破壊衝動に抗う事なく、全てを破壊していく。

 まるで、それしか知らず、それしか出来ないかのように。


 大陸最北部にある町や村はその凶行とも言える侵攻で滅び尽くされ、魔王軍の存在とその襲来の報告は、大陸全土を瞬く間に駆け抜ける。


 これが、のちの歴史において、「黒歴」と呼ばれる時代の始まりであった。


 翌年――黒歴二年。

 大陸最北部から始まった魔王軍の侵攻を、未だとめる事が出来ずにいた。

 ただ、それでも魔王軍の侵攻が行われなかった場所がある。


 大陸中央部。

 既に大陸は今と同じ形となっており、元竜王であるドラーグによって作り出された二つの大きな湖に挟まれるようにそびえ立つ山。

 竜の領域である。


 魔王軍の侵攻は、そこだけは向かわなかった。

 凶行故の本能で、そこに向かってはいけないと察したのだろう。

 事実、竜にはそれだけの力があった。


 そのため、魔王軍の侵攻は大陸東部と西部の両端から行われ、奇しくも今と同じような攻め方だったのは必然だろう。


 だが、そんな魔王軍の行動でわかる通り、対抗出来るのは竜のみ。

 それ以外は対抗出来ずに、魔王軍の侵攻を受け、大陸の半分は既に蹂躙されていた。


 そうなった理由は様々あるが、何より最大の理由として挙げられるのは、各国が魔王軍に対して協力体制が敷けなかった事だ。


 一つの国だけで対抗出来るような魔王軍ではなく、それに気付いた時はもう遅い。

 それは国が滅んだ時だからだ。


 このまま魔王軍の侵攻が進めば大陸中が蹂躙される事は間違いない。

 そこまできて漸く、人類は協力体制を築こうとする。


 しかし、自国こそが頂点であるという考えを捨てきれない国や、魔王軍を倒してもいないのに倒したあとの事を考える国、他の国に魔王軍を押し付けようとする国に邪魔されるような形となり、協力体制は早々に瓦解し、各強国を中心にした周辺国同士でしか纏まれなくなった。

 このままでは人類全体で纏まる事が出来ずに、魔王軍に蹂躙されるのが目に見えている。


 だからこそ、必要なのだ。

 世界の中心となる、人類全体を導く存在が。

 ――勇者が。


     ―――


 その始まりは、大陸中央・下部にある村。

 情勢としては、大陸東部・西部にある各国がそれぞれ纏まり、魔王軍に対抗している頃。

 当然、纏まりもない状態で侵攻してくる魔王軍の全てを撃退する事など出来ず、時折魔王軍の中で一気に進む部隊が存在していた。


 そんな部隊の一つが、その村に凶行の牙を剥く。

 村に魔王軍に対抗出来るだけの防衛戦力などなく、一方的に蹂躙されるはずだった。


 魔王軍の一部隊の侵攻が村に届く前で阻むのは、二人の人物と一柱。


「……前々から曖昧な部分があったけど、こういう時にそれを発揮されるのは困る、かな」


 そう言うのは、見目麗しい男性。

 黒髪短髪に、非常に整った顔立ちで、細身でありながら鍛え抜かれた体付き。

 右手に抜き身の剣を持ち、白い衣服を身に纏っているが、白という色が妙に似合っている。


「……確かに私たちの鍛錬に時間がかかったけど、でも……ね?」


 そう言うのは、見目麗しい女性。

 黒髪長髪で、美人系の非常に整った顔立ちで、細見だが出るところは出ているグラマラスな体付き。

 右手に杖を持ち、白い服に白いローブを身に纏っている。


「仕方ないでしょ! 予言なんだから! 早々明確な予言はないっていつも言っているでしょ!」


 そう反論したのは、神の一柱。

 それでも私……泣かない! と神の一柱は自分を鼓舞する。


 若干呆れた視線を向ける二人だが、今は他に相手をしないといけないのがいると、遠くに見える魔王軍の一部隊に視線を向ける。


「それじゃ、ここから巻き返しを図りますか! 行くぞ! エアリー!」

「はいはい。張り切り過ぎて怪我しないようにね。アイオリ兄さん」


 見目麗しい男女――アイオリとエアリーは、魔王軍の一部隊に向けて駆ける。


 そして始まるのは、一方的な戦いであった。

 何しろ、アイオリとエアリーは既に勇者として覚醒しており、その強さは既に一騎当千を超え、竜にすら届こうとしている。


 故に魔王軍のたかが一部隊など、ものともしない。

 実際、アイオリとエアリーによって、魔王軍の一部隊は瞬く間に殲滅された。

 怪我一つ、かすり傷一つ、負わせる事なく。


「さぁ、勇者として世界を救おうか」

「さっきから決めセリフっぽいの言っているけど、別にそういうのカッコよくないよ、アイオリ兄さん」

「……え? そうなの?」


 驚くアイオリを、半眼で見るエアリーであった。


「まぁ、いっか。ほら、行くよ。予言の女神様」

「ちゃんと付いてきてね。手、繋ぐ?」


 ――ここから、人類の反撃が始まる。


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