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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第十一章 竜の住み処と世界樹
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歴史 始まりの始まり

これから少しだけ歴史が続きます。

 というか、今更だけど、インジャオさんとウルルさんがまだ戻ってないけど、大丈夫なんだよね?


⦅もう少し……といったところでしょうか? マスターが手記を読み終える頃には戻ってくるでしょう⦆


 なら良いけど。

 という訳で、鍵が開いて読めるようになったので、前戦争においてEB同盟の中心人物となり、勇者であるアイオリの手記を読む。

 ……今更ながらだけど、実在の人物だったのか。


⦅なんだと思っていたのですか?⦆


 いや、なんというか、架空の人物的な存在の可能性もあるかな? って。


⦅考え過ぎです⦆


 ですよね。

 じゃあ、読みます。


 ………………。

 ………………。

 あの、セミナスさん。


⦅はい。なんでしょうか?⦆


 ところどころ、この世界の人じゃないとわからない単語みたいなのが出てくるようなんですけど……。


⦅仕方ありませんね。わからない部分は、私がその都度補足しましょう⦆


 助かります。


⦅では、マスター。

 1。エロい体付き大学生家庭教師との甘いお勉強風

 2。色々と隙が多い幼馴染と楽しくお勉強風

 3。ツンデレ同級生の愛ある勉強風

 の、どれを希望されますか?⦆


 え? 選択制なの?

 ……眼鏡装備なのは?


⦅ご希望とあらば、どれでも可、です⦆


 ……じゃあ、セミナスさんで。

 そのままで良いです。


⦅っ! ……マスターは偶に私のツボを的確に突いてきますね⦆


 じゃあ、よろしくお願いします。


⦅お任せください。マスター⦆


     ―――


 歴史における年号の始まりは、基準となるモノがある。

 それが誰か特定の人であったり、転換期となる出来事であったり、法則性はない。

 ただ、共通しているのは、大きな影響があったという事だろう。


 この世界・ファースリィルにおける歴史の年号の一つ。


 ――「黒歴」


 その元年となる年に、魔王と魔物の大群が世界に向けて侵攻を開始した。

 それは互いに存亡をかけた大きな戦争となり、世界全土に黒い帳が下りたという印象から、黒歴と呼ばれるようになったのである。


 その戦争において、EB同盟と呼ばれる全種族間同盟における中心人物となった二人の人物。

 アイオリとエアリー。

 兄と妹。


 ――黒歴元年より二十年前。


 その年、アイオリがこの世界に誕生し、翌年、エアリーが誕生する。

 二人は裕福な商家の息子と娘として生まれたが、その商家ですくすくと健やかに育つ事はなかった。


 エアリーが生まれた翌年。

 二人の両親は非常に優秀で人格者であったが、だからといって、それが長生きに繋がる訳ではない。

 不幸は、いつだって突然なのだ。


 二人の両親は行商によく出ていた。

 といっても、突発的なものではなく、これまでも行ってきた事。

 初心を忘れないためにと、商家がない田舎の小さな村に行商としてよく行っていた。


 そんなある日の事。

 両親は二人を連れて行商に出ていた。


 その結果――アイオリとエアリーは両親を失う。

 行商の途中。両親は盗賊に襲われ、二人を守って死んだのだ。


 二人もそのまま盗賊に殺されてもおかしくなかったが、偶然か必然か、冒険者のパーティが通りかかった事で救われる。


 だが、貴族であれば家紋といった身元を証明するようなモノは当然なく、また、遠出していたという事もあってか、二人の身元は判明せず、孤児院に預けられる。


 そこは、大陸南部。

 当時、ルベラ地方と呼ばれる地域にある、ライノトと呼ばれる町にある孤児院。


 のちに、世界統一国「ルベライノト」の王都となる場所であり、更に現在まで時計の針を進めれば、「ラメゼリア王国」の王都がある場所であった。


 明道が読む手記に、アイオリはこう記している。


「私たちの生まれた場所はわからない。だが、物心がついた時から、私たちはこの孤児院に居た。ならば、この孤児院も生家と言えるのではないか。私たちはそう思っている。」と。


 また、アイオリとエアリーの名は、赤子の二人を包んでいた布に生年月日と共に記されていた。

 両親が二人に遺す事が出来たのは……それだけだった。


     ―――


 だが、二人にとってよかったのは、預けられた孤児院がまともな孤児院であったという事だろう。

 世の中には、非道で悪質な孤児院も存在しているが、二人が預けられた孤児院はそうではなく、優しい院長から惜しみない愛情を持って育てられる。


 だからといって、裕福な孤児院というのは中々存在しない。

 二人が預けられた孤児院は、その例には漏れなかった。


 どの日も満足出来るといった生活は送れなかったが、それでも二人の性根は曲がる事なく成長していく。

 また、アイオリとエアリーの兄妹仲は非常によかった。


 この世に残された親類は互いに目の前にいる人物だけなのだ。

 それを理解していたかどうかはわからないが、本能的な部分での結びつきが強かったのだろう。


 そんな二人が運命の時を迎えたのは、アイオリが十歳、エアリーが九歳の時。

 神の啓示を受ける。


 その時、二人は孤児院の資金と小遣いを稼ぐため、近くの飲食店の下働きとして働いたあとの帰り道。


 アイオリとエアリーは同時に気付く。

 動いているのが自分たちだけで、周囲の人や物が、まるで時がとまったかのように一切身動きしていないという事に。


「あまり公にするモノではありませんので、時の神に頼み、少しだけ時間をとめさせていただきました」


 突然かけられた声に驚いた二人は、直ぐに周囲を窺って気付く。

 陽光のように空から降り注ぐ光の柱が眼前にあった。

 その中に、大人の女性が浮いていたのだ。


 その女性は、青空のような透き通る青い髪に、およそ人とは思えない整い過ぎている顔立ちで、真っ白いローブで身を包んでいた。

 空中でありながら水中であるかのように青髪がたなびき、二人に向けて優しい笑みが浮かべている。


 自分たちに声をかけてきたのはその女性だろうかと、疑問符が二人の頭の中に浮かぶ。


「驚かせて申し訳ありません。ですが、私はあなたたちに予言を伝え、迎えに……て、あれ?」


 二人は動けるという事もあって、逃げ出していた。


「ちょっ! ちょっと待って! 待ちなさい!」


 もちろん、女性は二人を追いかける。


「「追いかけて来ないでください! 不審者さん!」」

「ちょっ! 誰が不審者ですか! 誰しもが魅了される私の微笑みを見て、何故そのような事を!」

「「………………」」

「二人揃って、そういうところが不審ですって目を向けない! というか、足をとめて話を聞きなさい!」


 却下します、と二人は足をとめない。

 女性は二人を捕まえようと速度を上げるが、二人も同じように加速していく。


「くっ。追いつけない! たとえ子供でも勇者は勇者という事ですか! 仕方ありません。多少無茶をするしか」

「「………………」」

「……今、おばさんは無理しない方が良いとか思いませんでしたか?」

「「いいえ、思っていません」」

「即否定してくるところが怪しい!」

「「怪しいのはそっちです。不審人物さん」」

「……大人の恐ろしさを教えてあげます!」


 本気で走り始める女性。

 そこはやはり基礎となる能力が違うため、二人が捕まるのは時間の問題だった。


 そうして捕まった二人は、女性から改めて話を聞かされる。


「ぜぇ~、はぁ~……良いで、すか……ぜぇ~……あなたたちは………………この世界を救う、勇者、なのです……」

「「はぁ……とりあえず、大丈夫ですか?」」


 この日。この時。

 アイオリとエアリーは、自分が何者なのかを知る。


 ちなみにだが、この女性は予言の女神であり、この出来事を経て――。


「まさか会話でてこずるとは……今後のために、全体だけではなく、会話すらも先読みして操り、相手を掌握するようなスキルでも作っておいた方が良いかしら」


 と言ったとか、言っていないとか。

 思ったとか、思わなかったとか。


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