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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第十一章 竜の住み処と世界樹
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壊れているんじゃなくて、そういう機能

 とりあえず、一旦話が終わったという事で、シャインさんとドラロスさんが早速模擬戦を始めた。


 シャインさんが殴りかかり、ドラロスさんがなんでもないように受けとめる。

 で、偶に思い出したかのようにドラロスさんがカウンターを放つが、シャインさんもそれを受けとめていた。


 ただ、その規模が凄まじいというか、二人がぶつかる事で発生する衝撃波がきつい。

 それなりに距離を取っているつもりなのだが、吹き飛ばされそうになる。


 ……まぁ、きつそうにしているのは、俺と詩夕たちだけ。

 アドルさんやエイトたち、DDを始めとした竜たちはなんでもなさそうだ。


 なんというか、体格差とかそういうのは関係なく、無差別級の地上最強戦みたいな戦いが目の前で繰り広げられている感じ。

 そう感じていると、詩夕が声をかけてくる。


「……あれ、どう思う?」

「どう思うって?」

「お互い、どれくらいの本気でやり合っているのかな?」

「どうだろ。まぁ、100%じゃないのだけはわかる」

「だよね」


 何故なら、シャインさんとドラーグさんは、どちらも全く汗を掻いてないし。


 多分、詩夕は、あんなに強くなれるんだろうか? と思っているんだと思う。

 でも、俺からすれば、詩夕たちも同じくらい強く見えるんだけどな。


⦅どれぐらいの力でやり合っているのか、知りたいのであればお教え出来ますが?⦆


 いえ、大丈夫です。

 言われてもピンと来ないだろうし。


 ……というか、いつ終わるんだろう?

 このまま見ておいた方が良いのだろうか?


 そう思って眺めていると、動く者たちが居た。


「……はぅあっ! な、何やら滾ってきた! ア、アドルよ! 偶には私と模擬戦でもしようではないか!」

「そ、そうですな! よろしく頼みます! DD!」


 DDの誘いにアドルさんが応じる。

 普段ならDDはそんな事を言わないだろうし、アドルさんも応じる訳がないので……怪しい。


 というか、なんとなくだけど察した。

 DDがアドルさんを模擬戦に誘う前に、DDに情熱的な視線を向けている者が居た。

 ミレナさんである。


 多分……というか、間違いないだろうけど、DDは滾ったと言っていたけど、本当に滾っていたのはミレナさんの方なんだろう。

 このままだと自分がミレナさんに模擬戦に誘われ、当然断る事も出来ずにボッコボコにされる未来が見えたに違いない。


 で、そうなる前にアドルさんを誘って回避した、という事なんだろう。

 アドルさんも、そんなDDに気付いて応じたんだと思う。


 でも……時間の問題だと思うのは俺だけだろうか?

 アドルさんとの模擬戦が終わった時が、ミレナさんとの始まりだと思う。

 ……さすがにずっと模擬戦はしないよね?


 チラッと視線を外せば、ジースくんたちの姿がない。

 巻き込まれる訳にはいかないと、森の中に逃げたんだろう。

 随分と行動が速くなったな。

 危機管理能力が上がったのは間違いない。


 ……でも、気持ちはわかる。

 俺も気付かれないように、一歩分離れた。


 というか、なんだろう。

 何かを忘れているような気がする。


 ……あれ? なんだっけ?


 詩夕たちに頼む事があったかのような……。


⦅世界樹で手に入れた手記の鍵開けです⦆


 ……あぁ! そっかそっか。

 それを忘れていた。


 という訳で、丁度隣に居るし、詩夕にその事を説明する。


「『勇者』スキル持ちじゃないと駄目とか、そんなのがあるんだね」

「そう。俺にそんな大層なスキルはないから、詩夕にお願いしたいんだけど」

「それは構わないけど……『勇者』スキルより、『セミナス』さんの方が凄いと思うのは僕だけなのかな?」


 ……ん? なんか言った?

 アイテム袋の中から鍵を取り出していたので聞こえなかったんだけど……まぁ、いっか。

 手記は……あっ、ポケットの中にしまっていたので取り出す。


 そのまま詩夕に鍵と手記を渡そうとすると、エイトから待ったが入る。


「よろしいでしょうか? ご主人様」


 何が? と思うが、エイトはただ両の手のひらを俺に見せてくるだけ。

 ……なるほど。

 試したいのね。


 詩夕に一旦断りを入れて、エイトに鍵と手記を渡す。

 エイトは手記の鍵穴に鍵を入れ、まわ……せなかった。


「馬鹿な! エイトは勇者ではないという事ですか!」


 うん。俺の説明聞いてた?

「勇者」スキルがないと駄目って。


「この島での経験を経て、エイトも『勇者』として覚醒したと思ったのですが」


 どんな経験をしたっていうのか。


「現に、こうして力にも溢れているというのに」


 それは、この島特有の現象だと思う。

 魔法使い系は強くなるっていう。


 エイトは鍵と手記をワンに渡し、ワンも同じように試すが……開かない。

 ツゥ、スリーも同じ。


 そして、エイトは結論を出した。


「これは不良品ですね」

「違うわっ!」


 壊れているんじゃなくて、機能しているから開かないんだよ。

 という訳で、鍵と手記を返してもらい、詩夕へ――。


「……どういう事?」


 詩夕たちが横一列で並んでいた。


「さぁ、選んで」

「……明道にとっての勇者を」


 天乃と水連がそう言う。

 詩夕と常水は苦笑を浮かべ、樹さんはやれやれって感じ。

 天乃と水連は自信満々で、刀璃と咲穂は申し訳なさそうにしている。


 ……意味がわからないけど、選べば良いのかな?


「じゃあ、詩夕で」

「「何故!」」


 天乃と水連が崩れ落ちた。

 いや、何故と言われても、「勇者」って言葉が一番似合うのは、やっぱり詩夕だと思うから。

 としか言えない。


 改めて、詩夕に鍵と手記を渡す。

 詩夕が鍵を鍵穴に入れ、まわ……した。

 その瞬間、鍵穴を中心とした小さな魔法陣が展開し、砕け散る。


 カチャン……と開いた音が小さく鳴り、手記が開いて読めるようになった。


「………………」

「………………」

「えっと、詩夕? なんでそれで俺に渡そうとするの?」

「いや、僕の役目は鍵を開けるところまで、中身の確認は明道がするべきかな? と、不思議とそんな気がして。あっ、あとで内容は教えてね」

「……読むのが面倒だからじゃないよね?」

「違うよ。実は……ちょっとうずうずしているんだ。シャインさんとドラロスさんの戦いを見ていると……もっと強くならなきゃいけないって」


 ……それってつまり。


「詩夕もあそこに参加したいって事?」

「僕だけじゃないけどね」


 常水、樹さん、天乃、刀璃、咲穂、水連……皆、詩夕と同じ考えだと頷く。

 ……まぁ、言いたい事はわかるけど。


「それじゃ、僕が読むから、代わりに明道が向こうへ」

「読書は任せな! 俺の速読を見せてやるよ!」


 手記は俺が読んで、詩夕たちに内容を伝える事になった。

 もう俺はアドルさんとDDとの模擬戦でお腹一杯です。


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