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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第十一章 竜の住み処と世界樹
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より心が繋がった気がする

 アドルさん、DDと何度も模擬戦を行った。

 結果、わかったのは――。


 アドルさん。強い。

 DD。強い。


 そんな簡単な事しかわからなかったくらい、フルボッコにされた。

 どうやら、負けっ放しで色々と鬱憤が溜まっていたようだ。


 ……俺に当たらないで欲しい。


「というか、アドルさんは強くなるために強いのとやり合った方が良いんじゃないですか? 俺はその強い部類に入らないと思うんですけど?」

「そこは……まぁ……ほら、な。自信を取り戻したかったからで」


 それで俺に当たるのは違うと思う。


「DDにも、同じ事が言える。というか、色々溜まっているのなら、踊れば発散出来るんじゃないの?」

「確かに、踊れば問題ない。踊れればな」


 DDが言うのは、お義母ミアさんの前で踊るのはちょっと……らしい。

 恥ずかしいのかな?


 なら、見えないところで踊れば良いと思うのだが、そうしようとすると、「……どこに行くのですか? まさか、別の女のところへ?」と、笑顔だけど怖い雰囲気を発したミレナさんに捕まり、強制的に模擬戦をさせられるそうだ。


 物理的な話し合いですね。

 ……DDも大変なんだな。

 趣味に生きるって……こういう事だろうか?


 でもやっぱり。それでも。


「アドルさんとDDの行動は駄目だと思う。カッコ悪い」


 ペコペコ謝ってきたので、自覚症状はあるようだ。

 俺と模擬戦をしている時は、めっちゃ笑顔だったけど。


 なので、俺は心を鬼にして言う。


「じゃあ、反省してきてください」


 ある方向を指差す。

 アドルさんとDDが、俺の指差す方向を見る。


 ミレナさんとミアさんが、こっちにいらっしゃいと手招きしていた。


「……生きて、また踊ろう。DD」

「……そうだな。約束だぞ。アドル」


 拳を打ち付け合い、アドルさんとDDは肩を落としてトボトボとミレナさんとミアさんの下へ向かう。


「「ダッシュ」」

「「はい」」


 駆け足になった。

 フルボッコにされたけど、その姿を見ると、頑張れと応援したくなった。


 それに、俺がフルボッコにされたのには、俺にも原因がある。

 俺が戦闘能力に関しては、所詮回避防御特化の大した事ないというのもあるが、セミナスさんがこれも良い勉強になると、致命的なモノ以外は全く指示しなかったという事だ。


 本当に攻撃を食らいまくった。

 回避防御特化と言ったけど、それが恥ずかしくなるくらいに。


 本当に強い者を相手には、まだまだ通用しないという事を理解させられる。

 セミナスさんの言ったように、良い勉強になった。


 あの魔王がどれだけ手を抜いていたか、よくわかったよ。

 結果。


 俺の自信がバッキバキに折れて、粉々に砕け散って、吹き飛んでいきましたけど?

 いや、元々そんなに自信なんてなかったけど、そのなけなしの自信がなくなりました。


 もう俺に戦う力はない。

 心がもたない。


⦅左を見てください⦆


 セミナスさんの言う通り、左を見る。

 ミレナさんにボッコボコにされたジースくんたちの姿があった。

 どうやら、本当に鈍っているかどうかを確認された模様。


 実際、俺がアドルさんやDDと模擬戦をしている時、その隣で蹂躙されていた。

 ………………。

 ………………。


 でもなんだろう。

 不思議と、見ているとやる気が出てくる。

 あっ、俺でもやれるんじゃないかな? と思えた。


 そんなジースくんたちに向けて、ありがとう、と祈っておく。


「いや、まだ死んでないから!」

「「「「生きてる! 生きてる!」」」」


 うん。知ってる。

 別に死んだなんて言ってないから。


 ただ、ジースくんたちとは似たような状況だったので、より心が繋がったような気がする。


「頑張って、共に生きていこう」


 ジースくんたちと強く誓い合った。


     ―――


 数日後。

 いつものように模擬戦でボコられ、同じくボコられたジースくんたちと共に、今日も頑張ったと慰め合っていると、森の中から飛び出して、猛烈な勢いでこちらに駆けてくる者たちが現れた。


 あれは……詩夕たちとシャインさん、と天乃たち?

 第一班と第二班だ。

 シャインさんと天乃が先頭を争っている。


 漸く戻ってきたような感じがした。

 それじゃ、出迎えないとな、と思うのだが……なんか勢いがおかしい。


 なんかとまりそうにないというか、競っているような雰囲気がする。

 それに……なんか俺を目標にしてない?


 試しに、ちょっと横に移動。

 詩夕たちとシャインさん、天乃たちも、同じように横に移動。


 うん。なんか俺が目標にされているっぽい。

 あと、雰囲気が真剣そのものというか……鬼気迫るモノがあって怖い。


 なので、俺も走る。逃げるように。


「待てっ!」

「待ちなさい!」


 先頭のシャインさんと天乃が俺の行動をとめようと声を飛ばしてきた。

 しかし、俺の本能は逃げろと強く訴えているので、体がそれに反応している。

 だから無理。


 追いかけてくる詩夕たちとシャインさん、天乃たちに、追いつかれまいと逃げ続ける俺。


「……どういう状況!」

「ごめんよ! 明道! 戻る途中で天乃たちと出会ったんだけど、こちらはシャインさんが、天乃たちは天乃と水連が先に戻る事にこだわって駆け出して……で、気付いたんだ! どうやったら先に戻った事になるのかって! ゴールがないから! それで、明道に触れたらゴールって事になって!」


 詩夕が簡潔に説明してくれる。

 というか、シャインさんならぶっちぎれそうだけど、それなら楽しくないと、天乃たちに合わせて走っているのは間違いないと思う。


「なるほど! いい迷惑です!」


 勝手にゴールにされた身になって欲しい。


「どっちも一番じゃ駄目ですかね!」

「駄目だ!」

「駄目よ!」

「……駄目!」


 普段声を張らない水連まで否定してきた。

 と、そこに、俺の行く手を遮るように――。


「話は承知しました。少し出遅れてしまいましたが、まだチャンスはあるという事ですね」


 エイトたちが現れた。

 しかも、ここから先は通さないという布陣を即座に組んでくる。


 これには足をとめるしかない。


「よし! もらった!」

「それはこちらの」

「……セリフ!」


 シャインさん、天乃、水連が突っ込んでくる……が、俺はそれを回避。

 続いて、詩夕たちと刀璃と咲穂も来るが……華麗に回避。

 チャンスとばかりにエイトたちも突っ込んでくるが……優雅に回避。


『当たらない!』

「今の俺は度重なる模擬戦で感覚が鋭敏だから……簡単に触れさせると思うなよ」


 俺の回避防御が火を噴いた。


 それから一時間くらい逃げ切り、皆同着でケリがつけた。


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