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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第十一章 竜の住み処と世界樹
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超戦士じゃないので、それは無理です

 登る。登る。木を登っていく。

 思っていた以上に表面がボコボコしているので、登るのはそれほど難しくはないかもしれない。


 慣れたクライマーとかなら、いくつもルートを見つけ出して、極悪難易度とかで挑戦しそうだ。

 まぁ、俺は簡単なので登っている、と思う。


 何しろ、今登っているのはただの木じゃない。

 世界樹だ。


 ………………。

 ………………。


 あの、これどこまで登るんですかね?

 世界樹の上の方、雲よりも上なんですけど?


⦅そこまで行く必要はありません。そもそも、そこまで登る事が出来ますか?⦆


 いや、出来るかどうかで問われれば、道具とかきちんと揃えて、常に万全の状態で時間をかければ……いけるんじゃない?


⦅確かに可能でしょう。ですが、今回はそこまで登る必要はありません。それと、休めそうな場所は既に把握していますので、私の指示通りに進んでいただければ問題ありません⦆


 あっ、ちゃんと休憩場所もあるのね。

 ずっとこのまま登っていくのかと思っていた。


⦅私はそれでも構いませんが? ……夜通し、木登りしますか?⦆


 いえ、大丈夫です。

 ほら、夜は見通しが悪くて手元が見えないから危ないでしょ?

 空振ると落ちるし、危険だから。


⦅問題ありません。私がミリ単位で調整しますので⦆


 ……夜通しさせたいの?


⦅まさか。ただの提案です。夜通しでしたら時間の短縮になりますし、吸血鬼が行っている模擬戦にマスターが交ざれば、良い鍛錬にもなりますので。体力が向上しているマスターなら可能だと判断しての提案です⦆


 いえ、当初の予定通りでお願いします。


⦅………………⦆


 あれ? 聞こえていない?

 当初の予定通りで……もしかしてだけど、そっちの方が良いかもしれないとか考え始めてない?


⦅……ちょっと試してみませんか?⦆


 それ、ちょっとで終わらないパターンだよね?

 気が付けば最後までやっていた結果になるよね?


⦅ちょっとだけ。本当にちょっとだけ⦆


 というか、次の指示が欲しいんですけど!


 指示がないから、次どう進めば良いのかわからないし、このままだと腕がプルプル振るえてきそうですが?


⦅つーん⦆


 なんか芸が細かくなってきたね、セミナスさん。


⦅日々、マスターと会話していますので。その成果だと誇ってください⦆


 あっ、誇る事なのね、それ。

 うん。それはわかったけど、次の指示を。


⦅会話のバリエーションもそうですが、流れるように会話する私はAIにすら負けていません。そう思いませんか?⦆


 思います。

 思いますから、指示を……。


 そろそろ本気でヤバいので。


⦅……ファイト!⦆


 うん。応援ありがとう。

 じゃなくて!


⦅マスター。世の中にはタイミングというモノが存在しています。この時、この瞬間でなければ駄目だというのがあります⦆


 ……なんで今そんな話を?


⦅それと、慣れというモノも存在しています。確かに、初回でもクリアする者は居るでしょう。しかし、慣れたからこそ攻略出来るというモノもあります。何度も何度も繰り返す事自体が鍛錬となり、より動きが鋭敏に……効率的に動く事が出来るようになり、初回でクリアするよりもより強くなるのです⦆


 ……えっと、どういう事?


⦅マスターの世界の話だと、よくある話ではありませんか? 最終的には、『早熟』よりも『晩成』の方が強くなる、というような話は⦆


 なるほど。漸くわかった。

 セミナスさんが何を言いたいのかを。


 つまり、落ちるんですね? ここから。


⦅はい⦆


 確かに、もう腕は限界のため、更に登るのは難しい。

 一度落ちて、仕切り直す……つまり、今は引き際なのだ。

 セミナスさんがそう見極めたのなら、それで間違いはない。


 で、休憩を挟んで、また登る時はもっと上まで登っている事だろう。

 何度も繰り返して……努力する事で成長するのだから。

 でも……。


 チラッと下を確認。

 世界樹の見えている部分の、大体三分の一くらいは登っただろうか?

 セミナスさんの指示で、サクサク登ったからね。


 ……たっけぇ。

 高いじゃなくて、たっけぇよ。


 え? これを落ちるの?

 トラウマものだと思うんだけど?


 というか、今更な事を言っていい?

 命綱なしってどういう事?


⦅本当に今更ですが、そもそも私が居る時点で、命綱は必要ありません。駄目な時は、命綱をした方が良いですよ、と注意しますので⦆


 うん。注意で済ませて良い問題じゃないから、そこは強く言おうか。

 でも、気にして欲しいのは現状だから。

 このまま命綱もなしに落ちると死ぬよ?


⦅そうですね。地面までまっしぐら。いや、マスターの防御力なら、あるいは……⦆


 ちょっと待って。

 俺の防御はどちらかというと回避主体だから。

 耐えられる訳がないでしょ。


⦅そこは体全体を回転されて飛ぶとか、一気に息を吐きだして落下速度を緩めるとか、落下途中で世界樹を蹴って横に跳んで難を逃れるとか⦆


 どれも出来ません。

 どこの超戦士ですか、それ。


⦅私もマスターにそこまでの事は求めていません。それに、そもそもお忘れですか? 私は落ちる時の対処法を伝えたはずですが⦆


 ………………。

 ………………。

 あ、あぁ! そうだった!

 ドラーグさんを召喚するんだっけ。


 納得……したのがいけなかった。

 それで気が抜けたんだろう。

 引っかかりを掴んでいた手がつるりと離れ、そのまま落下。


 まずい!


「召喚! ドラーグさん!」


 思わず声を出してしまったが、それぐらい切羽詰まっているというか緊急事態だ。

 空中に魔法陣が出現し、ドラーグさんがその姿を現す。


「おおー! ……ん? 主?」


 俺よりも上空で。

 ドラーグさんが俺の姿を捜しているのか、頭を左右に動かしているのが見えた。


 なるほど。確かにその通りだ。

 俺は落下中な訳だし、召喚位置に居る訳がない。


⦅召喚は落下して直ぐ行うのが望ましく、召喚位置からどんどん離れていきますので、直ぐに声をかけて呼ぶ事を推奨します⦆


 そういう大事な事は早く言って!


「ド、ドラーグさぁーん!」

「………………下かっ!」


 ドラーグさんが気付いてくれてよかった。

 もう少しで地面というところで、ドラーグさんに回収される。

 セーフ。


 ジェットコースターやバンジージャンプを経験していたからこそわかる。

 命綱、大事。


⦅それで済む辺り、マスターの精神はたくましいと思います⦆


 ……なんか褒められている気がしない。

 地上に下りて、ドラーグさんと入念な打ち合わせを行う。

 多分、またあると思うから。


 というか、アドルさんとDDの模擬戦で発する音が大きくて、こちらも声を張るのが大変。

 それでも眠るドラロスさんは……大物っぽく見えるから不思議。


 打ち合わせが終われば、体と心をしっかりと休ませ、再度世界樹登りに挑む。


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