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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第十一章 竜の住み処と世界樹
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別章 第三班

 詩夕たち、天乃たち、エイトたちの採掘が終わって洞窟から出て行っても、インジャオとウルルは採掘を行っていた。


 インジャオの強化にオリハルコンがどれだけ必要なのかは、セミナスから教えられている。

 ここに来るまでの間にも採掘を行っているので、総量は相当だろう。


 それに、インジャオ自身の強化だけではなく、装備の強化にも使用出来るのだから、あり過ぎて困るような事はないので、二人は採掘を続けているのだ。


 といっても、ずっと採掘し続けている訳ではない。

 きちんと休憩を取り、体と頭を休ませて、より質の高い採掘を行っている。


 今はその休憩中。

 洞窟の外に出て、二人並ぶように座ってのんびりとしていた。


「良い天気ね」

「そうだね。太陽光が骨身に染みるよ」

「いや、全身鎧なのに?」

「意外と隙間があるんだよ? これ。それに、ピッタリだと逆に動きづらくなるし」

「それもそっか」


 穏やかな時間が二人の間に流れる。


「……それにしても、どう考えてる?」

「何を?」

「どの班が最初に世界樹のところに戻るのかを」

「それか。うーん……それって自分たち以外で、だよね?」

「それはもちろん。だって、勇者たちとはそもそもの強さが違うし、それに、私たちは採掘が終わればそれで終了だしね。島中を駆け巡る必要がないもの」


 だから私たちは除外して、と最後に付け加える。


「そうなると……」


 う~ん……と、腕を組んで考えるインジャオ。

 緩やかな風が緑の香りを運び、再び穏やかな時間が流れる。


「やっぱり、シユウたちのところじゃないかな? あそこにはシャインが一緒に付いていっているから」

「それは甘い考えだと思うよ。あれでシャインはなんだかんだと面倒見が良いからね。この島の魔物の強さを考えると……今の勇者たちには丁度良い相手なんじゃないかな? だから、口では早く戻るぞと言いつつも、勇者たちを鍛える事を優先しそうな気がする」

「……そうかな? そんな感じはしないけど」

「女の勘は当たるんだよ?」


 そうかなぁ? とインジャオは首を傾げる。

 自身の中で、イメージが出来ないようだ。


「それじゃあ、ウルルはどこが最初だと考えているの? シユウたちのところではないって事だよね?」

「そうだね。私の予想だと……エイトちゃんたちのところかな」

「エイトたちのところか……」

「納得出来ない感じ?」

「なんというか、あそこは未知数過ぎて、きちんと判断出来ない部分が多過ぎて」

「それはわかる」


 うんうん、と二人揃って頷く。


「でも、エイトちゃんたちはアキミチの装備品に必要な分だけ、つまり一人分を集めるだけだから」

「そうだね。集める人数は確かに重要な部分……」


 インジャオは納得するが、どこか腑に落ちない様子を見せる。

 それに気付かないウルルではなかった。


「どうかした?」

「いや、確かにウルルの言う通りだと思うんだけど……あのセミナスさんが、そんな簡単に済ませるかな? と」

「それは……ないとは言えない」


 悩み出す二人。


「……となると、案外、アマノたちが最初だったり?」

「寧ろ、こうなってくると、その可能性が一番高いような気が……」


 思考のドツボに嵌る二人。

 そこで、インジャオが別の可能性を見出す。


「……あっ!」

「何々? なんか判断出来そうな事があった?」

「いや、そういう訳ではないんだけど、なんとなく……そう、なんとなくだけど、同着になりそうだなって。セミナスさんなら、その辺りまで計算していそうだから」

「………………あり得る。寧ろ、一度それが頭の中に浮かんでしまうと、もうそれしかないって気になってきた」


 あー! とウルルが頭を抱える。


「……本当に凄いスキルね。セミナスさんは」

「今、自分たちがこういう会話をしているって事も筒抜けなのかな?」

「……本当に超凄いスキルです。セミナスさんは」


 その可能性はあると思ったのか、ウルルは言い直した。

 そんなウルルにインジャオは苦笑を浮かべたような雰囲気を醸し出す。


「でも、ありがたいよね。同時に感謝したい」

「感謝?」

「凄いスキルだからこそ、希望が持てる。……完全に私怨が入り混じっているけど、復讐が果たせる、と」

「それは……間違いないわね」


 どこか遠いところを見つめるように、二人は空を見上げた。


「あの時から随分と時間がかかったけど……あともう少し」

「まだ強さは及ばない……けれど、それは今の自分だから。でも、明日の自分は……魔王ヘルアト・ディダークと再び対峙した時の自分の強さなら……必ず……」

「うん。きっと……それはアドル様も同様に」


 過去の出来事を思い出し、感傷的な雰囲気が流れる。

 それを崩したのは、ウルルの一言。


「でも今、アドル様は竜を相手にしているのよね? ……大丈夫かな?」


 その問いには、インジャオも答えに詰まる。


「うーん……大丈夫、だと信じたい。いや、信じよう」

「どうか戻った時に、無事な姿が見れますように……」

「祈らないと駄目な事かな? いや、気持ちはわかるけども」


 ウルルと共に、インジャオもアドルの無事を祈っておく。

 すると、洞窟の奥からドシンドシンと何かが移動していく音が響き、同時に地響きも起こる。


「漸く来たようね。移動速度が遅過ぎて待ちくたびれるところだった」

「まぁ、仕方ないよ。あの体積と重量だから、移動速度は遅くても不思議ではない」


 ウルルとインジャオは立ち上がって、洞窟に視線を向ける。

 洞窟からは、シャインが倒したのと同サイズのオリハルコンゴーレムが出て来ていた。


「……まさか、奥にもう一体居るなんてね」

「自分としては、願ってもない相手だよ」


 大剣を手に取り、インジャオが前に出る。


「魔王ヘルアト・ディダークを斬ろうとするのなら、オリハルコンくらい斬れないとね。自分の剣技の技量を更に高めるため……練習台になってもらうよ」

「頑張って!」


 インジャオによる、オリハルコン斬りが試される。


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