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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第十一章 竜の住み処と世界樹
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別章 第二班

 エイトたちよりは遅れてしまったが、天乃たち女性陣も早々に採掘は終わらしていた。

 早々に終わった理由としては、採掘量が詩夕たちよりも少なくて済んだというのもあるが、一番の理由は手際がよかったという事だろう。


 魔力で自身の肉体強化をした天乃と、卓越した才能による掘り技術を開花させた刀璃によって鉱石が掘り出され、咲穂と水連が回収していくという図式が早々に完了したのだ。

 採掘に関して、天乃たちは非常に効率的に動いていた。


 効率的に動いた理由は一つ。

 エイトたちやシャインだけではなく、天乃たちも狙っているのだ。

 自分たちが一番早く戻る事を。


 正確には、天乃と水連が、だが。

 二人が一番早く戻ろうとするのには、当然理由がある。


「早く戻れば、その分、明道と一緒に居られる」

「……エイトちゃんたちを出し抜くチャンス」


 欲に塗れた理由である。

 けれど、天乃たちは四人組であり、二人が同意見なら、それは半数の意見という事。


 そこに天乃と水連の勢いが加わったために、刀璃と咲穂は、まぁ仕方ないかと押し切られたのだ。

 けれど、言うべき事はきちんと言っておくのがこの二人。

 リーダーを任された咲穂は早々に刀璃に協力を求め、天乃と水連に注意を促しておく。


「急ぐのは構わないが、焦らず落ち着いて行動するように」

「急がば回れって言葉があるんだから、冷静にね」


 素直に頷く天乃と水連に、逆に不安を覚える刀璃と咲穂であったが、実際に言われた通り、天乃と水連は落ち着いて冷静な行動を取っていた。


 その結果が、効率的な行動だっただけである。


     ―――


「闇属性に耐性がある! 水連!」

「……任せて! 『魔力を糧に 我願うは 刺し貫く幾重の槍 水重槍』」


 水連の水属性魔法が発動。

 水連の周囲に全てが水で圧縮形成された槍が十数出現し、大きな蝙蝠の魔物に向けて放たれる。


 蝙蝠の魔物は水槍を避けようと縦横無尽に飛び回ってアクロバットな飛行を披露するが、水槍は追跡し続け、水槍の一つが羽を貫くと、残る水槍が蝙蝠の魔物の体全体を次々と刺し貫いていき、あっという間に撃墜する。


 勝利を得た天乃と水連は、パチンとハイタッチを交わす。


「やったね、水連」

「……この調子でいこう」


 天乃と水連は絶好調であった。

 詩夕たちが大変さを感じているように、確かにこの島の野良魔物のレベルは全体的に高い。


 だが、この二人はものともしていなかった。

 的確に魔物の位置を割り出し、遠距離から魔法を放ち続けて一方的に倒しているのだ。


 偶に属性的に不利であった場合は、天乃は水連に、水連は天乃に託してやり過ごしている。

 元々の仲の良さも相まって、抜群のコンビネーションを発揮していた。


 天乃と水連が絶好調なのには、もちろん理由がある。

 一番に戻るというモチベーションの高さもあるが、一番はこの島の環境にある。


 島全体に流れる豊富な魔力によって魔物は強くなっているが、その豊富な魔力は主に魔法を使う者にも影響していた。


 どう影響しているかと言うと、魔法の威力が上昇し、回復量が通常よりも桁違いなのだ。

 威力上昇は魔法に精通していればしているほどに顕著であり、回復量も同様である。


 つまり、この島の豊富な魔力は魔物も強くしたが、魔法使いにも大きな恩恵があった。

 故に、魔法主体の天乃と水連は、絶好調なのである。


「……私たち、出番あるのだろうか?」

「……あるよ、きっと」


 超近距離主体の刀璃と、遠距離主体だが魔力はあまり関係ない弓使いの咲穂がそう呟く。

 実際は、刀璃と咲穂が注意して見ているからこそ、天乃と水連はこれで済んでいるのだ。

 二人が居なければ、調子に乗って暴走していたのは間違いない。


 こういうのは、当人は気付かないものだ。


「それじゃ、次の目的地に向けて、レッツゴー!」

「ほら、天乃。きちんと自分の位置を把握して動かないと迷うぞ」

「……今なら私も前衛が出来る」

「強くなっているのは魔力だけっぽいから、前には立たないようにね」


 それに、なんだかんだとこの四人の場合、引っ張っていっているのは刀璃と咲穂であった。

 きちんと陣形を形成しながら移動を開始する天乃たち。


 天乃たちの今の狙いは、黒いトラ。

 どこをどのように進めば狙いの魔物と遭遇するのかは、セミナスによって明らかにされているので問題はない。


 実際、天乃たちは迷う事なく、黒いトラと遭遇する。

 吸い込まれるような艶々とした黒い体毛は目立つが、大きさはそれほどでもない。

 だが、前足から見える爪はなんでも裂けると思えるくらいに鋭く見える。


 その黒いトラは、森の中にある大岩の上で、そこが自分の場所だと寝そべっていた。

 天乃たちに気付いた様子は見えない。


 ただ、それが本当に気付いていないのか、それとも自分たちを脅威ではないと判断してなのか――木々に紛れるように隠れて黒いトラを見ている天乃たちは、どちらが正解かは判断出来なかった。


 ただ、黒いトラの方に動く気配が見えない以上、自分たちの方から仕掛けなければならないのは事実。

 分散して逃がさないようにしてから仕留めるという方法もあるが、黒いトラの動きが不確定である以上、それにはある重大な不安があった。


 天乃と水連は完全な後衛であり、防御力が低いのだ。

 下手をすれば、一撃で致命傷を負いかねない。

 なので、前衛である刀璃を先頭に進み、天乃と水連は刀璃から少し離れた位置で付いて行く。


 咲穂は完全に足をとめて、矢をつがえて弓を構える。

 狙いはもちろん黒いトラ。その眉間。


 すると、狙いが自分であると確信したのか、黒いトラは目を開け、体を起こし、天乃たちに向けて唸り声を上げる。


「ウゥ……」

「とまれ。これ以上進むのは危険だ」


 足をとめた刀璃の言葉に反応して、天乃と水連も足をとめる。


「どうするの? 一気にいく?」

「それ、しかないようだ!」


 刀璃が一気に前へ。

 黒いトラの挙動に何を察したのだろう。

 事実、その反応は正しかった。


 大岩の上に居たはずの黒いトラが、一瞬で地上に下り立つ……だけではなく、既に襲いかかろうと牙を剥いていたのだ。

 刀璃が瞬時に抜刀して牽制する事で黒いトラは襲撃を取りやめたが、それがなければ襲われていたのは間違いない。


「え? あれ? 全く動きが見えなかった!」

「……いつの間に」


 天乃と水連が警戒を強める。


「くっ」


 咲穂も狙いを外されたため、再び黒いトラに狙いを定める。


「聞いた情報にあっただろう! 狙いの一体。黒いトラは、瞬間だが時をとめる、と」


 刀璃の言葉で、天乃、水連、咲穂はセミナスから与えられた情報を思い出す。

 黒いトラが有する力は、一瞬だけだが時をとめる能力。

 その力の根源たるモノが、体内にある勾玉。


 刀璃専用装備のために、その勾玉が必要なのだ。


 そこから先の攻防は、どちらも決め手に欠けるモノだった。

 黒いトラにとって最大の武器は、瞬間的にだが時をとめる能力。


 だが、「時属性」を持つ刀璃にはその効果が薄く、刀璃は黒いトラの攻勢を全て防ぎ、これまでその能力で容易に敵を倒してきた黒いトラにとって、刀璃は初めての脅威となる。


 しかし、黒いトラの能力に対応出来る刀璃は、実のところは守勢で手一杯であったため、援護のために天乃と水連は魔法を、咲穂は矢を放つが、黒いトラはその能力で全てを回避し続けていた。


 なので、どちらも決め手に欠けている、膠着状態が続く。

 かに思えたが、今は絶好調な人物が二人居た。


「刀璃ちゃん! 下がって! 一気に決めるから!」


 天乃の声に反応して、刀璃が黒いトラに対して牽制の斬撃を放ったあとに後退する。


「時がとまろうが瞬間的なら、これで決める!」

「……避けられるものなら、避けてみれば?」


 天乃と水連が同時に魔法を放つ。

 それは、前方の周囲一帯を埋め尽くすような超広範囲魔法。

 瞬間的な時だけでは逃れられない範囲であり、また空中に逃げる可能性も踏まえて、魔法の範囲は空中にまで及んでいる。


 魔力に余裕があるからこそ出来る力業であった。


 当然、黒いトラは逃れる事が出来ずに魔法を食らう。

 けれど、魔法は範囲を重視していたために威力はそれほど高くはなかったため、黒いトラにとっても致命傷となるダメージは受けなかったが、致命傷となったのは魔法を食らった事によって出来た隙の方であった。


 その隙を突くように刀璃が前へ。

 黒いトラはこの場から逃走を図ろうとするが、そこに飛来するのは咲穂の放つ矢。


 矢が黒いトラの前足を貫いて地面に刺さり、縫い付ける。

 黒いトラがそこから抜け出す前に、刀璃の一閃が見事に決まり、黒いトラは倒れた。


「ふぅ……」


 刀璃が刀を鞘に納めながら一息吐く。


「いえーい!」

「……私たち、最強!」


 天乃と水連は喜び合い、咲穂も笑みを浮かべる。

 その光景を見て、刀璃は思う。


 この島に居る限り、天乃と水連の魔法無双はまだまだ続きそうだ、と。


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