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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第十一章 竜の住み処と世界樹
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別章 貢献度は彼女が一番です

 発掘は順調に進んでいる。

 洞窟内は、オリハルコンゴーレムが居たというだけの事はあってか、精製すればオリハルコンになる鉱石が豊富に存在していた。


 ただ、豊富にあるからといって、そこらを掘れば出てくるとまではいかない。

 発掘素人である詩夕たちが豊富に入手出来ているのは、彼女のおかげである。


「ここと……ここと……ここからも匂いがするね! あっ、でも、あそことそこは、これまでと違って少し掘り進めないといけないかも」


 そう。ウルルだ。

 ウルルが居の一番に洞窟に入り、目的の鉱石を発掘。

 その掘り出した鉱石を他の者たちへの見本として提供し、あとは掘る場所を指定しつつ、自分の分――インジャオに与える分を掘り進めていた。


「……普通に凄いね」


 詩夕は素直に反応した。

 他も大体同じような感じである。


「負けていられません。エイトも……といきたいですが、ここにエイトの出番はありません。エイトは出来るメイドというだけではなく、優秀な妹でもあります。姉の活躍を奪うような真似はしません」


 エイトは当初対抗しようとしたが、ここで一番活躍した、というか、一番早く鉱石を必要量手に入れたのは、エイトでもウルルでもなく――。


「それ、イチ、ニ! イチ、ニ!」


 スリーである。

 何しろ、スリーは土属性の特化型。


 土に関する事なら大抵の事が容易に可能であり、鉱石を掘り出すなど余裕。

 魔法で土の中の特定の鉱石を操って、鉱石自体が飛び出すようにして自分の下に集合するようにも出来るのだ。


 というか、今は正にそのような状況だった。


「……負けられない」


 ウルルが対抗意識を燃やすが、結果は直ぐに出た。

 そもそも、スリーにそのような意識はないので、無欲の勝利とも言える。


「これで……終わり! お兄ちゃんの分は集め終わったけど……どこに入れれば良いの? このまま連れてく?」

「スリー。アキミチ様からアイテム袋を預かっていますので、こちらに」

「うん。わかった!」


 ツゥがアイテム袋を開き、スリーが先ほどまでの要領で、鉱石自体がアイテム袋の中に飛び込んでいく。

 ただ、これにはある問題があった。


「何故、ご主人様はエイトにアイテム袋を持たせようとしなかったのでしょうか?」

「長女はあたいなんだけどな……」


 エイトとワンが、若干嫉妬の籠もった目をツゥに向けていた。

 ツゥがアイテム袋を持っているのは……明道が誰に自分のアイテム袋を持たせるか考えた時、エイトは余計な事をしそう、ワンはなくしたり放り投げたりしそう、スリーはまだ未知数過ぎる……と結論を出し、一番何も起こらない可能性が高かったのが、ツゥだったのである。


 そんな感じでエイトたちの班が即座に必要量を回収している時、詩夕はある事に気付く。


「……常水」

「どうした? 詩夕」

「……なんか、静かじゃない?」

「いや、ところ構わずガンガンと掘る音が響いているが?」

「それはそうなんだけど、洞窟の外から響いてくる音がしなくなったというか……」

「確かにそう言われてみれば……それに、同じように外から伝わる振動もなくなっているな」


 顔を見合わせる詩夕と常水。

 洞窟の外から響いていた衝撃音や振動が届かなくなったという事は、その原因が取り除かれたという事。


 その洞窟の外で、シャインとオリハルコンゴーレムが戦闘中だった事を踏まえれば、戦闘が終了した事を意味している。


 もちろん、シャインが負ける事など、詩夕たちは考えていない。

 いや、考えられないといった方が正しいだろう。


 しかし、相手はシャインの拳を受けても、実際はどうかわからないが見た目はノーダメージに見えたオリハルコンゴーレム。


 万が一の可能性が脳裏に浮かび……詩夕と常水は周囲の様子を見る。

 ウルルとインジャオは、慣れた手付きで採掘中。

 天乃たち女性陣は、衣服が汚れようが気にする様子もなく、素人ながら奮闘中。

 エイトたちは、もうそろそろ回収が終わりそうだった。


 これは、自分たちで確認するしかないと洞窟の外に向けて駆けるが、樹も同じ行動を取っていた。


「あれ? 樹さん?」

「どうやら二人も気付いたようだな、外の変化に」

「はい。なので、念のために確認をしようかと」

「そうだな。そんな事はないと思うが……万が一に備えないとな。出入口があのゴーレムに遮られるのは避けたい」


 確かに、と詩夕は思う。

 何より、その場合で最も危険なのは、恐らくこの中で最強であるシャインがオリハルコンゴーレムに負けたという事実である。


 もしそうなら、ここに居るメンバーでは誰も勝てない、と詩夕は考えた。

 常水と樹も同じ事を考え、確認しなければと駆り立てられての行動だ。


 そして、三人が洞窟の外に出て見た光景は――。


「「「………………」」」


 激しい戦闘跡が残る森の中に、体中の至るところに拳跡が残ってボッコボコに凹みまくって倒れているオリハルコンゴーレムと、そのオリハルコンゴーレムの近くでペカーッと輝く笑みを浮かべるシャインの姿だった。


 あんな楽しそうな笑みを、これまで見た事ない、と三人は思う。

 そこで、シャインが三人に気付く。


「……ん? なんだ? もう掘り終わったのか? ちゃんと私の分も掘ってきたんだろうな?」


 その問いに、最初に気を持ち直した詩夕が答える。


「いえ、まだ途中ですけど、戦闘音と衝撃が届かなくなったので、念のために確認に来たんです」

「確認? ……なんだ、私がたかが石ころ如きに負けると思っていたのか? まぁ、確かに相当硬く、反撃の拳もかなりの威力だったが、もう少し動きが素早くないと、私にまともな一発を食らわせる事は出来ないな」


 オリハルコンゴーレムとの戦いを思い出して、満足そうに頷くシャイン。

 多分、反撃もあったし、オリハルコンゴーレムの硬さに対して殴り甲斐があったんだろうな、と察する詩夕。


 常水と樹も、同じように頷いていた。

 もしここに明道が居れば、やっぱり武器いらないでしょ? とオリハルコンゴーレムの姿を見て言っていたが、詩夕たちは言わない。


 代わりに、シャインが声をかける。


「ところで、いつまでそこで休んでいるつもりだ! 途中なんだったら、さっさと掘ってこい!」


 シャインが檄を飛ばすが、そこに洞窟内から新たなに現れるのは……エイトたち。


「お先に失礼させていただきます」

「よぉーし! あたいたちが一番だ!」

「アキミチ様のためにも、私たちの優秀さを示さなければいけません」

「お兄ちゃん、直ぐ戻るから待っててね!」


 詩夕たちとシャインに向かって一礼し、エイトたちはスタスタと洞窟から離れていく。

 その姿を見て、シャインは詩夕たちに向けて握り拳と酷薄な笑みを浮かべる。


「私たちが一番じゃなかったら……わかっているだろうな?」

「「「はいっ!」」」


 詩夕たちは急いで洞窟内に戻り、採掘作業の続きを行う。


 ちなみにだが、倒されたオリハルコンゴーレムは、詩夕たちが必要量の鉱石を得たあとに戻ると、ねじ切るようにして解体されており、そのまま回収されて、のちにドワーフたちに提供されて喜ばれた。


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