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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第十一章 竜の住み処と世界樹
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実際に起きない人って居るんだろうか?

 世界樹の根本でスヤスヤ眠っているのが、ドラーグさんの息子で、大魔王に匹敵する力を持つと言われている竜。

 確か……ドラロスさん。


 というか、気持ちよさそうに寝ているけど、今は起きてくれないと困る。

 それは全員わかっている事なので、番であるミアさんが起こしに向かう。


「ほら、あなた。お客様ですよ。起きてください」

「……ムニャ」


 体を揺すっているが、起きる気配は一切見えない。


「起きてください」


 段々激しくなっていくが……やっぱり起きない。

 普通はこれで起きるもんだけど。


「どれ、久方ぶりにワシが起こしてやろうかの」


 父親の出番。

 ドラーグさんが大きく振りかぶる。


「ふんっ!」


 ビンタだった。

 小気味良い音が響くが、起きない。


 しかも、腫れてもいないし、ビンタ跡すら付いていないって、どれっだけ頑丈なんだろう。

 いや、頑丈って言葉だけで片付けて良いのかな?


 ………………鈍感?


「ふぅんっ!」


 今度はフルスイングビンタ。

 先ほどよりも更に警戒な音が周囲に響くが……それでも起きない。


 寧ろ、ドラーグさんの方が痛そうにしている。

 骨だけなので、骨伝導率が100%だしね。


「ヒビが入ると大変ですし、もうこれ以上は」

「むぅ」


 やんわりとドラーグさんをとめる。

 インジャオさんも俺と同意見なのか、強く賛同してくれた。

 骨仲間認定しているのかな?


 ただ、ドラーグさんが下がると同時に、前に出る人が居る。


「強い攻撃が欲しいなら、私に任せてもらおうか!」


 シャインさんである。


「私がやっても構わないだろ?」

「ええ、構いませんよ。私も必要な時は全力で殴って起こしていましたから。ただ、かなりの強度ですので、逆に傷付かないように注意してくださいね」


 ミアさんが簡単に許可を出す。

 というか、逆にこっちの心配をするくらいなの?


 ……でも、心配ではあるが、期待は出来る。

 シャインさんの一発なら――。


「……ふんっ!」


 衝撃が空気に伝わって弾ける。

 なんか風圧が凄い! 葉が舞っていれば、ぶわっと飛んでいきそうだ!

 これなら! とドラロスさんを見るが……馬鹿なっ! 起きていない、だと!


 シャインさんは殴った姿勢のまま動かない。

 と思ったらゆっくりと拳を引き、続けてもう一発かな? と思ったが、シャインさんはそのまま拳を下ろして自主的に戻ってきた。


「あれ? もう良いんですか? それとも注意されたように拳を痛めたとか?」

「確かに大した強度だったが、あれぐらいで痛める訳ないだろ。……が、もう良い。やってみてわかったが……反撃がないとつまらん。やっぱりアキミチくらい抵抗してくれないと面白くない」


 なるほど。

 シャインさんのお好みは、一方的なのではなく、殴り合いって事ね。

 いや、それを理解するのもなんだけど、シャインさんらしい理由だと思う。


 まぁ、怪我をしなかったようなので、そこはホッと安堵。

 ただ、俺を引き合いに出さないで欲しい。

 基準のように扱われても困る。


 しかし、良い情報を聞けた。

 つまり、シャインさんに襲われても抵抗しなければ……いや、駄目だろうな。

 理性ではなく、本能で抵抗している感じなので。


 ……それにしても、ドラロスさんの方もなんでもないのは凄い。

 俺もあれくらい頑丈だったら。

 ……でも、シャインさんの一発でも起きないとか……どうすれば良いの?


 俺はお手上げなので、視線でミアさんの様子を窺うと……。


「今のでも起きないとなると、今日はかなり深く眠っているようね」


 冷静な反応。

 でも、確かにドラロスさんはまだ起きていない。


「何か起こす方法はないんですか?」

「昔から寝付きがよく、中々起きなかったからの。こうなると自然に起きるのを待つしかないかの」

「そうなんですよね。年に一、二回はこうなるんですけど、本当に起きないのよ」


 ドラーグさんとミアさんの冷静な意見。

 これはもう自然に起きるまで待つしかないようだ。


 ……というか、起きるのをそのまま待つ必要ってあるのかな?

 何も今直ぐ、ドラーグさんをドラロスさんと会わせる必要性はない。

 ドラロスさんが起きてからでも問題ないのだ。


 先にこちらの用事を行いつつ、起きたら挨拶。

 もしくは、用事が済んでも起きてなかったら、そこで改めて起きるのを待てば良いだけ。


「……というか、どれくらいで自然に起きるんですか?」


 まずはそれを知ってから、今後の行動を考えよう。

 俺の問いに、ミアさんが考えながら答えてくれる。


「そうですね……これまでの経験を踏まえると、大体一週間以内にはご飯のために一度起きるかしら?」


 ……なんだろう。

 世界樹を守るために、ここに居るんじゃなかったんだろうか?

 なのに、こうして俺たちが来ても寝ているとか、どうなんだろう。

 いや、俺たちに世界樹をどうこうする気はないけどさ。


 それに、普通の手段で来るのは普通に無理だから、訪れる者はほぼ皆無だろう。

 でも、実際に来た訳だから、せめて起きて出迎えるくらいはして欲しい、と思わなくもない。


⦅なんでしたら、起こしますか?⦆


 起こせるんですか?

 ……なんでしたら?


⦅別に起こす事は必須ではありませんので。それと、起こすのは可能です。ただ、残念と言いますか、悔しいと言いますか、私の力の干渉外の存在のようです⦆


 必須じゃないんだ。

 というか、干渉外ってどういう事?


⦅大魔王に匹敵する力を有していると言われているだけはありますね。どうやら大魔王、魔王同様に、強制的に起こしたあとの事態の予測が定まりません。確かに起こす事は出来ますが、私の提案する方法で起こした場合、最悪寝惚けて周辺破壊もあり得ます⦆


 何それ怖い。

 これだから、下手に強過ぎる存在は。


 やっぱり無理に起こすのはやめておこう。


「それじゃあ、このまま自然に起きるのを待って、起きたら挨拶するって事にします」

「そうしていただけると助かるわ」


 ミアさんは異論なし。

 他の皆も……異論はないようだ。


「でも、起きるまでの間はどうするの?」


 詩夕が尋ねてくる。

 そこら辺は大丈夫。


 もちろん、何かやる事があるんだよね?

 確か、詩夕たちの装備に関する事だったかな?


⦅はい。それだけではありませんが、メインの一つではあります。何しろ、下手な戦力では、大魔王、魔王に通じませんので⦆


 手厳しい。


⦅という訳で、作業効率など色々考察した結果、班分けを行いたいと思います⦆


 ……はい?


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