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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第十一章 竜の住み処と世界樹
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クッションは偉大だと思う

 出発……出来なかった。

 いざ出発って時に、予期せぬ問題が起こったのだ。


 まず、出発という事で、竜の住処から出る。

 行くメンバーは、俺、詩夕たち、エイトたち、アドルさんたち、シャインさん、ドラーグさんに、竜の方からはDD、ジースくんたち、ミレナさん。


 といっても、こちらとしてはスリーとドラーグさんが増えただけなので、竜の背に乗るのはスリーが増えただけなので問題は特になかった。

 適度にバラけて乗っていく。


 DD、ジースくん、ドラーグさん、ミレナさん以外の竜たちが、天乃たち女性陣とエイトたちの前で、俺の背中に乗ってけよアピールするのはいつもの事。

 ただ、今回はミレナさんの見ている前だったという事もあって、あとで物理的説教を食らわないか心配だ。


 あとはまぁ、シャインさんは謎理論によって、ミレナさんに乗っていくようだ。

 ミレナさんも特に気にしていない。

 てっきり謎理論でいくと、ドラーグさんだと思っていたけど。


「骨だけだと乗り心地がな」


 という理由。

 謎理論に快適性も加わったようだ。


 そういうのも必要だよね、とうんうん頷いていると、シャインさんに叩かれた。


「なんかイラッとする感じだった」


 あとはその手癖の悪さが……。


「まだ何かありそうだな?」

「いいえ、何も」


 即否定したのに、何故かまた叩かれた。

 まさか、心が読まれているのだろうか?


 とまぁ、そんな事もありつつも、皆思い思いに竜の背に乗り、いざ出発という時に……待ったが入ったのだ。

 待ったとかけたのは、ドラーグさん。


 ちなみにこのドラーグさんは、この出発までの数日間で、この世界を何周かするくらい飛びまくって、外に出れた事を満喫していた。

 よほど嬉しかったんだろう。


 それで、そのドラーグさんが何故待ったをかけたかというと――。


「いやいや、ちょっと待ってくれんかの。あれ? おかしくないかの。ワシの背……誰も乗っておらんよ? 誰も乗っておらんから、スースーする。いや、骨なんで元からスースーしているけども」


 その言葉に、竜の背に乗る俺たちは顔を見合わせて……苦笑い。


「いや、おかしくないって言われても……」


 理由は既にシャインさんが言ってくれている。

 骨だけだと乗り心地が……ほら、長時間となる場合、柔らかくないと……その、お尻が……ね。


 やんわりとそう伝えるが、ドラーグさんは納得してくれない。


「そこは、元竜王でもありますし、祖父の背に人を乗せるのは……」


 ミレナさんが説得。


「いや、現王が乗せておるのに、元の方が駄目って」


 失敗。ドラーグさんの意思は固い。

 これはどうしたものかと思っていると、ドラーグさんから提案。


「というか、そもそも……なんで主がワシの背に乗らずに、他の竜の背に乗っておるのだ?」


 ドラーグさんがビシッと指差すのは、ジースくんの背に乗る俺。


「それはまぁ、なんつうか……ジースくんとはダチだから」


 イエーイ、とピースすると、ジースくんも同じようにピースをする。

 まぁ、俺の中でまず間違いなく、この世界の一番仲良くなったと思うのは、ジースくんだ。

 アドルさんたちは、どちらかと言えば恩人の方なので、友達だとジースくんである。


「ずるい! ずるいぞ! ワシだって主を乗せたいのに!」


 ドラーグさんが駄々っ子のように抗議をしてくる。


「主よ。老い先短いワシの願いを叶えてくれんかの?」


 いや、ダンジョンがある限り、多分不滅の存在だよね?

 そう思うのだが、ドラーグさんは乗らないと動かない、とでもいうように、てこでも動かない構え。


⦅面倒ですね。送還しますか? 世界樹のところで再び召喚すれば良いだけですし⦆


 辛辣!

 外に出れた興奮がまだ続いているだけだろうし、もう少し優しくしてあげようよ。


⦅調子に乗せるだけです。それに、マスターに迷惑をかける存在を、私は許しません⦆


 まぁまぁ。

 セミナスさんを宥めつつ、ジースくんに断りを入れる。


「悪いけど、今回はドラーグさんの方に乗るよ」

「是非、そうしてくれ」


 ジースくんも申し訳なさそうに……ちょっと待って。

 どうぞどうぞ、とジースくんに背中を押される。


「なんでそんな率先するような言葉と行動なの?」

「相手は史上最強と言われた先々代竜王様。目を付けられたくない」

「いや、もうその頃の力はないみたいだよ? 案外、ジースくんでも勝てるんじゃない?」

「無茶言う……ひっ! なんかめっちゃ睨まれている気がするんだけど」


 ジースくんが俺を盾にするように更に前へ。

 ドラーグさんに視線を向ければ、どれ? やってみるか? とポキポキ体を鳴らしている。

 ……やる気満々ですね。


「戦闘の勘も取り戻しておきたいし……どれ、やってみるかの。最近の竜の力も知っておきたいしの」


 きっと、骨じゃなかったら、凶悪な顔付きを浮かべていたんじゃないかと思う。

 今の骨だけでも、なんか迫力があるし。


 ただ、これ以上出発を遅らせるのもなんなので。


「はいはい。そういうのは良いから。ほら、出発するよ」


 ドラーグさんの背に乗る。


「でないと……送還する」

「よぉし! では行こうかの!」


 漸く出発となった。


     ―――


 空の旅を満喫する。

 それは特に問題ない。

 でも、気になる事がない訳でもない。


 心の内でドラーグさんに問いかける。


(ドラーグさん)

(ん? どうしたのだ? 主よ)

(骨だけなのに、なんで飛ぶ事が出来ているの?)

(ほっほっほっ。そんなモノ、魔力を上手く使えば簡単な事での……)


 そこからドラーグさんの魔力講義が始まる。

 でも、なんというか難し過ぎてついていけない。


 それに、俺の魔力……乏しいから。

 ゼロに近い乏しさなので、大抵の事は……というか、魔力関連に対して何も出来ないんだけど。


 ただ、ドラーグさんの魔力講義が聞こえているのか、セミナスさんが時折ふんふんと頷いている。

 何やら勉強しているっぽいけど……変な事にならないよね?


 それとも、セミナスさんが勉強になるくらい、ドラーグさんの知識が凄いと言うべきなのか。

 でも、一つだけ確かな事がある。


 ……お尻、痛い。

 骨が硬くてゴツゴツしているから、痛い。

 クッションとか欲しい。


(……ドラーグさん。あとどれくらいで着きそう?)

(そうじゃの……もう少し、か?)


 ドラーグさんの言葉を信じるのなら、もうあってもなくても同じかもしれない。

 本当にもう少しかはわからないけど。


 ただ、念のため、立ち上がっておく。

 そこで気付いた。


 そこまでの具体的な距離はわからない。

 けれど、雲よりも高い巨大な木を、視界に捉えた。


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