相手が同じ事を考えていると、なんとなくわかるよね
「……言っている事の意味がわかりませんが?」
ミレナさんが困惑している。
「どういう事なのだ? アキミチよ」
DDの問いに、俺は地下での出来事を説明する。
………………。
………………。
「という訳で、ドラーグさんは骨だけになったけど生きていて、召喚する事で地上に出れるようになりました」
「……つまり、祖父をこの場に呼べると?」
「簡単に言えば、そういう事です」
俺の答えに、ミレナさんが少しだけ考える。
「………………しかし、その骨だけの竜が、私の祖父の名を騙っているだけの可能性はありませんか?」
「ないとは思いますけど」
まぁ、そもそもの話というか、もし騙りだった場合はセミナスさんが黙っちゃいないと思う。
そのセミナスさんが何も言わないのだから、その可能性はない。
ただ、こればっかりは、自分で確認してもらうしかないと思う。
そうしないと本当の意味で納得しないだろうし。
「いえ、会ってみればわかる事です。……呼んでいただけますか?」
「はい。もちろん」
という訳で、早速召喚する。
確か、思うだけで良いんだっけ?
⦅はい。それで大丈夫です⦆
……よし。
(いくよ、ドラーグさん)
(よしきた!)
ドラーグさん。召喚。
雰囲気的に右手を前に出す。
すると、俺を中心にした大きな魔法陣が地面に出現。
俺の背後にドラーグさんがその姿を……頭部から現していく。
しかも、その姿はこちらに合わせたサイズではなく、元の竜サイズだった。
……やっぱりデカい。
それと、マント装備はそのままだったが、玉座の横にあった杖も持ってきている。
迫力というか、威厳を感じさせるのは良いんだけど、やっぱり良い者には見えないんだよね。
初見である詩夕たちとアドルさんが驚いている。
あっ、そういえば説明していなかったよね。ごめん。
天乃や水連、エイトたちから聞いておいて。
……ウルルさんのドラーグさんを見る目が怖い。
あの目はどっちだろう。
インジャオさんのために骨を欲するのか、それとも自分の欲のためか。
あとでドラーグさんに気を付けるように言っておこう。
あと、隣のジースくんも知らなかったね。
自分は空気……自分は空気……と呟いている。
……近衛的立場じゃなかったっけ?
「ふむ。ここが今の竜の住処か」
ドラーグさんがキョロキョロと周囲を確認して、ミレナさんを見る。
「それで、お主がワシの孫かの?」
「……そう伺っています」
「純白の鱗……なるほど。どうやら、『ドラロス』ではなく『ミア』の方の血が強く出たか」
ミレナさんがハッとする。
こそっとジースくんに確認。
「……ミアって誰?」
「姉k……女王竜様の母だよ」
解説ありがとう。
でも、油断していたのかな?
また姉貴呼びしそうになったね。
ミレナさんがドラーグさんに話しかける。
「ミアは確かに私の母の名。ですが、それだけで判断する訳にはいきません。もう一つ確認しても構いませんか?」
「構わんよ。いくらでも付き合おう」
「母から聞いたのですが、父は竜王になってから、よく口にしていた事があります。それがわかりますか?」
「ふむ……」
ドラーグさんが思い出すように顎に手を当てる。
ちょっと質問がピンポイント過ぎないだろうか?
それとも、そんなに口にしていたの?
なんだろう……世界平和とか?
「色々言っておったと思うが、ドラロスに竜王の座を渡してからで、今回の場合に当てはめるとなると……アレかの。『竜王……もう面倒くさい』かの? それとも、『子が出来たら、即座に竜王の座を渡したい』かの? あやつは他の者たちには上手く隠していたようだが、身内には結構愚痴を漏らしていたものだ」
駄目な親父臭がするな。
しっかりと働けと言いたくなる感じだ。
いやいや、仮にも竜王がそんな事を言うだろうか?
もしかして間違え――。
「本当に……祖父なのですね」
「おじいちゃんだよ」
ミレナさんが駆け寄り、ドラーグさんが受けとめる。
どれぐらいの年月が経っているかはわからないけど、感動の再会……だと思う。
同時に、これはチャンスだと捉えた者が居た。
DDである。
「いやぁ~、よかったよかった、感動の再会だな」
うんうんと頷きつつ、その表情はどこか嬉しそうにしている。
だが、俺にはわかる。わかってしまった。
あれはフェイクだ。
正確には、喜んでいるのは間違いないだろうが、表面に出し過ぎている。
まるで、これが自分の正直な気持ちであるかのように。
その裏に隠している、邪な思いを覆い隠すかのように。
DDの狙いは明確である。
このまま、なあなあで自分の事を終わらせようとしているのだ。
謝るなら機嫌の良い今しかないとか、そんな思いがチラッと過ったのかもしれない。
DDのその思いと行動に気付けたのには、もちろん理由があった。
俺も今がチャンスだと思ったからだ。
この場から離れる事の。
具体的には、詩夕たちのところまで戻りたい。
……いや、ほら。ドラーグさんの事とか、やっぱり俺からも説明した方が良いかな? と。
自分で自分に言い訳をし、移動開始……しようとした時に気付いた。
既に出遅れていた事に。
俺の隣に居たはずのジースくんが居なくなっていた。
馬鹿なっ! 一体いつの間に!
あとはジースくんに任せようと思っていたのに!
どこに行ったのかと周囲を窺えば、詩夕たちのところに居た。
ミレナさんにやられた傷の治療を受けているようだ。
……くっ。俺以上の正当な理由。
仕方ない。なら、あとの事はジースくんじゃなく、DDに……目が合う。
DDも俺を見ていた。
……あの目はわかる。
こちらに押し付けようとしている目だ。
同時に場を去ろうと動き出すが、行く手を遮るようにドラーグさんの尻尾が俺の前に振り下ろされて去る事は出来なかった。
見れば、DDの方はミレナさんの尻尾が同じように行く手を遮っている。
ただ、DDが頬を押さえているので、振り下ろされた時に当たったのかもしれない。
……それは俺のせいじゃないと思う。
ドラーグさんとミレナさんが落ち着くまで大人しく待つ事にした。
―――
ドラーグさんとミレナさんが落ち着いたので、もう一度話を始める。
「えっと……ドラーグさんは向こう側でなくて良いんですか?」
対面の、DDとミレナさんが居る方を指し示す。
「ワシは既に竜王ではなく、主の召喚獣でしかない。さすれば、居る場所は主の隣が相応の場所というもの」
「……外、出ます?」
「もういつでも見る事が出来るしの。今は主の目的の方が気になる」
ドラーグさんは動かないようだ。
なんか、従えているようで落ち着かないんだよね。
「それは私も気になるところです。祖父と会えたのもアキミチのおかげ。可能な事であれば望みを叶えたいと思いますが、ここに来たのは何か他の目的があっての事ですか? やはり、大魔王軍に対する、竜の完全なる参加ですか?」
「いや、その……」
そういえば、そもそもここに来た目的を聞いていない。
というか、スリーとドラーグさんの件で完結しているんじゃないの?
⦅いえ、まだ終わっていません。そこの女王竜に、『世界樹』に連れて行って欲しいと告げてください⦆
……世界樹?




