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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第十一章 竜の住み処と世界樹
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どんな名前でも良いじゃない

 女王竜がドラーグさんの家系……というか、孫だとわかった。

 ドラーグさんの骨化はそれなりに長い年月が経っている案件だと思うんだけど……まぁ、竜が長命なんてよくある話だ。


「まさか、ここで祖父の名を聞くことになるとは……父から何度も聞いていました。どれだけ強い竜王であったかを」


 女王竜が過去を懐かしむように言う。

 あれ? なんかその口ぶりだと……。


「ドラーグさんは祖父なんですよね?」

「そうです」

「なんか今の言い方だと、一度も会った事がないように聞こえますけど?」

「その通りです」


 ……え? どういう事?


「私が生まれる前の事です。邪神を討伐した際に受けた傷を癒しにどこかへ行ったきり、そのまま戻ってこなかったのです」


 ……えっと、下に居ますけど?

 知らずに住処を構えたのかな?


「一目だけでも、私を見て欲しかったのですが。父と母も、その事だけは残念だと」


 儚げな笑みっぽいのを浮かべて、女王竜がそう言う。

 なんか重苦しい感じになりそうなんだけど、俺の立場としてはどうすれば良いんだろうか?


 いや、会わせる事に問題はない。

 会わせ方の問題だ。


 ここに召喚しちゃう? 今召喚しちゃって大丈夫なの?


「それにしても、こうして人から祖父の名を聞く事になるとは……嬉しいモノです。人の中にも、祖父の存在は知れ渡っているのですね」


 いえ、先ほど会ったからです、とは言えない。

 それに、そういう事を聞かされると、更にタイミングが……。

 もうここまでくると、さっさと会わせた方が良いんじゃないかって思えてくる。


 何しろ、あのDDが、うんうんと女王竜の言葉に相槌を打っているのだから。

 DDがコートとか羽織っていれば、優しい表情で女王竜にかけるような雰囲気だ。


 ハンカチ……いります?

 ……もう召喚しちゃうか。

 これ以上はなんかいたたまれない。


 なので、まずは召喚して良いかのお伺い。

 いきなり召喚して、入浴中だったとか、変な事になったら困るしね。


 えっと……どうしればドラーグさんと連絡が取れるんだろう?

 わからないし、やっぱりいきなり召喚しちゃう?


⦅仕方ありませんね。今、チャンネルを合わせますので、少々お待ちください⦆


 ありがとう、セミナスさん。

 というか、チャンネル?

 一から十二番とかの?


⦅お待たせしました。どうぞ。普段、私に話しかけるような感じとは少し違いますが、その辺りは感覚の違いでしかありませんので、慣れてください⦆


 わかった。

 それじゃ、えっと……。


(もしもし? ドラーグさん?)

(んお? 急に頭の中に主の声が)

(セミナスさんに、声が届けられるように繋いでもらいました)

(未来を読むだけではなく、そんな事まで。ほんに優秀なスキルだの。ワシが知っているスキルの中で、一番優秀ではないだろうか)


 ベタ褒めだな。


⦅骨竜は正しい審美眼を持っているようですね。マスターの召喚獣なのですから、そうでなければいけませんが⦆


 相変わらず簡単なのか厳しいのか。

 でも、俺だってこれまで苦楽を共にしてきたんだ。

 セミナスさんが一番優秀なスキルだって思っているよ。


⦅マスター。そこは一番優秀な女性、もしくは異性と言うべきところです⦆


 ……なんで俺は注意されるの?


(それで、召喚はまだかの? 主よ。今か今かと待ちわびているのだが、まだ地上に着いておらんのかの?)

(あっ、実はその事なんだけど……)


 ドラーグさんに、今の状況を簡単に伝える。


(……ふむふむ。なるほどの。そういう状況でしたか。しかし、まだ見ぬ孫が現王とは。まぁ、ドラロスが大丈夫と判断したのなら、ワシも異論はありません)

(……なんか変な戦いとかにならない? 竜王と名乗りたければ、ワシに勝ってみせろ? とか)

(ほっほっほっ。既にこの身は骨だけ。この身に肉があった頃ならまだしも、骨だけとなった今では、結果は見えておる)


 まぁ、女王竜曰く、歴代最強らしいけど、その頃の力はもうないって感じかな?


(じゃあ、召喚するけど、孫と対面するって事で)

(地上に出る事が出来るだけでなく、孫とも対面出来るとは。主と会えて本当によかった)


 いやぁ~。

 ただ、問題は……女王竜。


「えっと……」

「ん? もうスキルとの会話は終わったのですか?」


 どうやら、DDはセミナスさんの事も教えたようだ。

 それとも詩夕たちの方かな?


 でも、わざわざ説明しなくて済んだのは助かる。

 今回は違ったけど。


「そうですね。そうであり、そうじゃない、というか。とりあえず、女王竜……様?」

「あぁ。そういえば名乗っていませんでした。私の名は『ミレナ』です。ダーリンたちとも仲が良いようですし、アキミチは特別に名を呼ぶ事を許します」

「ありがとうございます。それでですね……」


 ちょっと待って。

 いや、気になる事が出来てしまった。

 ドラーグさんには、もう少し待ってもらおう。

 俺も気持ちが万全じゃないと展開についていけない可能性があるので。


「まず二つ聞きたい事があります」

「なんですか?」

「俺の隣に居る竜をジースくんって勝手に呼び始めたんですけど、大丈夫ですか? 竜の名乗りは王族とか特別の者にだけと聞いたのですが?」


 女王竜――ミレナさんが、DDを見る。

 いいや、言ってない言ってない、と顔を横に振る。

 情報源はそこじゃありません。


「……構いませんよ。今更でしょうし。それに、その竜……ジースでしたか? その竜は人の営みの中で言えば、ダーリンの近衛のような立場。特別にその名を名乗る事を許可します」

「ありがとうございます。姉……女王竜様」


 感謝の言葉を言ったジースくんが、ミレナさんを姉貴と呼ぼうとした瞬間、鋭い視線が飛んでいた。

 今回はとまったけど、何度もそのまま言い切ってきたんだろうな。

 ジースくんのうっかりさん。


 でも、とりあえず、名付けた者としてホッと安堵。


「それで、もう一つはなんですか?」

「……ミレナさんのダーリンさんはDDと呼ばれていますが、本当の名は?」

「ちょおっと待ったぁ!」


 DDが即座に立ち上がって俺に駆け寄る。


「アキミチ~! 何を聞いている?」

「いや、知りたいから」

「わざわざ聞く事ではないだろう?」

「でも、気になったし」

「気になるような事ではないと思うが?」

「今のDDの態度でより気になった」


 過剰反応だよね、それ。


「ダーリンの名は『デスドラ』。自ら死を司る竜だと名乗り出したのが由来です」

「ぬあああああっ! 何故そう簡単に話す! ハニー!」


 中二っぽく、若かりし頃の過ち的な感じがしますね。

 略してDDになるのは変わらないけど。

 あと、ダーリンて呼ばれているから、やっぱりハニー呼びなんですね。


「アキミチィ……わかっているとは思うが?」


 デスド……DDがドスの効いた声で尋ねてくる。


「これからもDDと呼ばせていただきます」

「わかっているならよろしい」


 納得したDDはこの場から去ろうとしたが、ミレナさんにとめられて、先ほどと同じように正座した。

 そう簡単に逃げられないよ?


「先ほど、まず二つと言いましたが、この他に聞きたい事があるのですか?」

「はい。といっても、正確には会わせたい方が居ます」

「どなたです?」


 ミレナさんが詩夕たちの方を見る。

 残念ながらそこには居ません。


「ドラーグさんです」

「……え?」


 ミレナさんと一緒に、DDも首を傾げた。


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