悪いと思ったら謝りましょう
女王竜と対峙する。
近くで見るとわかる事がった。
純白な姿も目に付くが、その佇まいにも怖さだけじゃなく、どことなく気品が感じられる。
イメージ的に、ヒールを履いていればカツカツと音を立てるのが似合っていそうだ。
あと多分だけど、竜姿のDDよりも大きいんじゃないだろうか?
威圧感が半端ない。
ジースくんたちが、姉貴と呼びたくなる気持ちもわかる。
だからだろうか?
隣に居るジースくんが畏まっているように見えるのは。
……俺もそうした方が良い?
答えが欲しい。
誰か教えて欲しいが、周囲に頼れる竜が居ない。
女王竜と最も関係が深いであろうDDが既に倒されているので、俺一人で挑むしかないようだ。
「……アナタがアキミチですか?」
女王竜が俺に視線を向けて尋ねてきた。
当然のように喋ってくる。
まぁ、DDやジースくんたちもそうだったし、今更驚くような事じゃないか。
「はい。そうです。というか、俺の事を?」
「そこの、漸く帰ってきたダーリンとの会話の中で聞きました。どういった存在であるかも」
物理的な会話だけじゃなく、きちんと口での会話もしていたのか。
一方的だったとは思うけど。
………………。
………………いやいや、ちょっと待って。
「……ダーリン?」
「ダーリン」
無言でDDを指し示す。
女王竜はその通りだと頷いた。
……いや、確かに立場的にはそうだけど……DDのDには、そういう意味もあったの?
ダーリンドラゴン? ドラゴンダーリン?
……くっ。反応しそうだ。
でも、今はそういう場面じゃないから我慢。
聞こえていたシャインさんは笑いそうになっているけど、皆が取り押さえようと頑張っている。
俺も頑張れ。
一旦、心の中で大きく深呼吸。
……よし。これで大丈夫。
ダーリンと呼ばれている件はもう良いとして、今問題はDDが俺の事をどう伝えたのかだ。
まさかとは思うけど……俺のせいにしてないよね?
「ダーリンが言うには、アナタに唆されて、今まで各地を回る事になったと言っていましたが……事実ですか?」
ガッツリ俺のせいにしたようだ。
こいつ……とDDを見ると、目が合った。
バチコーン! とウインクの合図が。
随分と余裕そうだ。
まさか……やられたフリをしているのか?
勝手に俺のせいにして……告げ口してやろうかな?
⦅ですが、マスターに責任がないとは言えません⦆
え? セミナスさん?
⦅よく思い出してください。そこのダンス馬鹿竜は、本来ならエルフの里からここに戻っていたところを、マスターが興行を勧めたために、各地を回る事になったのです⦆
………………確かに。
あれ? でもそれって、セミナスさんが引きとめろと言ったからだよね?
なら、セミナスも原因の一端を担っている事に――。
⦅私はマスターのスキルでしかありません。スキルに責任を取れと? そもそも、スキルの身でどうやって責任を取れば良いのですか?⦆
それはそうだけど……でもまぁ、俺が言った事に変わりはないんだよね。
……仕方ない。
「俺が興行を提案しました」
捕まえてください、と両手を前に出す。
「よく自首しました。正直でよろしい。許します」
なんか許してくれた。
しかし、それに納得いかないのが居る。
「何故それで許される! 私の時と違う!」
DDが体を起こして心の叫び。
……起きてよかったのだろうか?
「なるほど。どうやら、やられたフリをしていたという訳ですか。前はこれで充分だったのですが、随分と耐久力が上がったようで」
「………………あっ」
DDが気付いた時には、もう遅かった。
大人しくあのままやられたフリをしていればよかったのに……DDは自ら墓穴を掘ったと言えるだろう。
「………………」
女王竜の鋭い眼光に対して、DDが助けて……と懇願するように俺を見てくる。
いや、さすがにこの状況では無理……と頭を振った。
というか、俺の責任にあたる部分は既に許されている。
これ以上の介入は、野暮というモノだろう。
その事をわかりやすく告げる。
「所詮、俺は観客でしかないから」
「……これまで踊る側でなかった事を気にしているのか? それは仕方ないだろう。アキミチのダンスは壊滅的なのだから」
「はい! アウト! DDは全然反省していません! もっとやっちゃってください!」
思っていても口に出してはいけない事を言ったな!
そこはせめて、前衛的と言って欲しい。
時代がまだ俺に辿り着いていないのだ。
DDとやいのやいの言い合っていると、頭上を白い鞭のようなモノが通り過ぎる。
……どうやら、女王竜が黙らせるために尻尾を振ったようだ。
その意図を即座に察して、俺とDDは黙る。
「わかっていただけて何より。ですが、今は私がアキミチと話しているのです。ダーリンは黙っていなさい」
「はい」
DDは女王竜に弱いようだ。
「ですが、ダーリンへの話が終わった訳ではないので、そこで待っていなさい」
「はい」
DDが即座に起き上がり、女王竜の横で正座する。
その動きに一切淀みがない辺り、何度も経験しているのかもしれない。
「さて、アキミチ」
「はい」
背筋を伸ばす。
「先に来た者たちから話を聞きましたが、どうやらここに来たのはアナタの指示です。どのような目的でここに来たのですか?」
俺の指示じゃなくてセミナスさんの指示です。
「もし、大魔王に匹敵するといわれている竜王を求めて来られたのでしたら、残念ですがそれは私ではありません。先代竜王である父の事で、ここには居ません」
「そうだったんですか」
まぁ、竜とこれまで関わりをもっていなかったようだし、そういう情報も伝わっていなかったんだろう。
………………ん? もしかして。
なるほど。ここに繋がってくる訳か。
「確認したい事があるんですけど、良いですか?」
「なんですか?」
「その先代竜王の名って、もしかして『ドラーグ』ですか?」
「いえ、違います。父の名は『ドラロス』。私に竜王の座を渡したあと、母と共にある場所を守りに向かいました」
……恥ずかしい。
ここに誰も居なければ、顔を覆いたいレベルだ。
なるほど、とか思った先ほどの自分を殴ってでもとめたい。
「ですが、『ドラーグ』という名は歴代最強と謳われた先々代竜王、つまり私の祖父の名です。どこでその名を?」
あっ、でも家系ではあるのね。
というか、ドラーグさんを召喚するの……忘れてた。




