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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第十一章 竜の住み処と世界樹
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やっぱり業が深いと思います

「なるほど。こんな感じで眠っているんだ」

「……で、明道が目覚めさせてきた、と」

「強ければ、そこら辺は割とどうでも良いな」

「神々はこんなモノをここに置いていったのか」


 大きな箱の中の女性を確認している間に、初見の天乃、水連、シャインさん、ドラーグさんも同じように見ていた。


「……少し上の姉、という感じでしょうか」

「こいつは……見た事あんな」

「私も覚えがありますね」


 エイトたちも同様だった。

 ほらほら、下がった下がった。

 今から目覚めさせるから、興味あるなら本人に聞きなさい。


 皆を下がらせてから、心をビルドアップさせていく。

 寧ろ、本番はここからだ。


 ……どうか、まともな詠唱文でありますように。

 期待はしていないけど、奇跡よ起これ。

 ……大丈夫……大丈夫。


 よし。じゃあ、詠唱文を! セミナスさん!


⦅かしこまりました。ではまず、『我が心に刻み誓うは、紳士淑女のオリハルコンの掟』⦆


 もうその言葉に関して何も思わなくなってきたよ。

 寧ろ、一番まともな文で安心する。

 ……まともではないか。麻痺してるな。


⦅次いで、『ボクっ娘って可愛いよね。いや、寧ろ尊いよね』⦆


 相変わらず、最初からフルスロットルだなぁ。

 ……うし。心をビルドアップしていなかったら、耐えられなかったかもしれない。

 ……一気にお願いします。セミナスさん。


⦅続きは、『ちょっと悲しそうというか寂しそうな顔で、「……私って言った方がいい?」て聞いてきたら全力否定する自信がある。いや、寧ろ自信を持てと言いたい』⦆


 ……長文形式か。

 神様って、ヤバいのが多いのかもしれない。


⦅最後に、『お兄ちゃんって呼ばれたい、お姉ちゃんも可』です⦆


 最後の最後で特大の爆弾を放り込んできたな。

 ちょっと欲望に忠実し過ぎじゃないだろうか?

 ……そもそも、これを詠唱文に設定している時点でおかしいけど。


 一応、最終確認だけど……それで間違いではないんだよね?

 いや、良いんだよ。間違いでも。

 寧ろそうであって欲しいというか。


⦅マスターは、私が間違えると思っているのですか?⦆


 人は偶にどうしようもない間違いを。


⦅私はスキルですが?⦆


 スキルにも適応するかな? って。


⦅他はどうか知りませんが、私はしません⦆


 ですよね。

 はぁ~……仕方ない。どうせ言わなきゃいけないんだ。

 さっさと終わらせよう。


 小声は?


⦅駄目です。それなりの声量でお願いします⦆


 詠唱文もそうだけど、声量も厳しい条件だよね。


⦅マスター。わかっているとは思いますが⦆


 大丈夫。途切れたら、また最初からなんでしょ?


⦅その通りです。では、頑張ってください⦆


 ……よし。一気に言ってしまえば良いんだ。

 もう一度、天乃たちにこれから行う事を説明して、くれぐれも邪魔しないように、という文を付け足す。


 質疑応答は、このあと受け付けるから。

 そして、俺は言う。


「『我が心に刻み誓うは、紳士淑女のオリハルコンの掟』……『ボクっ娘って可愛いよね。いや、寧ろ尊いよね』」


 なんか圧が強くなったというか、空気が重くなったような気がする。


「『ちょっと悲しそうというか寂しそうな顔で、「……私って言った方がいい?」て聞いてきたら全力否定する自信がある。いや、寧ろ自信を持てと言いたい』」


 シャインさんの笑い声が聞こえる。

 いや、寧ろ笑ってくれた方がありがたい気がする。


「『お兄ちゃんって呼ばれたい、お姉ちゃんも可』」


 一気に静かになった。

 怖くて皆の方を見れない。


 早く起きてくれ、と思っていると、大きな箱の中から女性の声が響く。


「起動詠唱を確認しました。声紋によるマスター登録をしました。同時にマスターの魔力波形も登録しました。条件オールクリア。『対大魔王軍戦用殲滅系魔導兵器・特化型』……『スリー』。起動します」


 大きな箱の中で横たわっていた女性が身を起こす。

 両腕を上げて伸びをする。


「あぁ~……よく寝た」


 そう言いながら周囲を確認して俺と目が合い、上から下まで見られる。

 なんというか、大きな目で更に可愛らしい顔立ちになった。


「ボクの中に感じられる魔力波形と一緒。キミが僕のお兄ちゃんだね!」


 いきなりのお兄ちゃん呼び!

 これは不味い予感がする。

 くるりと反転してダッシュ。


 した瞬間に倒され、取り押さえられる。

 もちろん、俺の即座の行動に反応出来たのは、シャインさん。

 押さえつけるように俺の上に座っている。


「面白い趣味じゃないか、アキミチ」

「違う! 俺の趣味じゃない! 神様たちの趣味だ!」

「本当に?」

「……詳しく聞きたい」


 いつの間にか、天乃と水連が俺の前に立ち塞がっていた。

 まさか、俺の動きに反応していたのか!

 さすがは勇者という事か。


「最初に説明したよね! 詠唱文は詠唱文であって、俺の意思じゃないって!」

「でも、お兄ちゃんって呼ばれたいんじゃないの?」

「……そう呼んで欲しいのなら、そう呼ぶよ?」

「だからそうじゃないって!」


 何故皆、説明したのにそのまま俺の意思として受け取るのか。


「お兄ちゃんご主人様と呼んだ方が良いですか?」

「主兄ちゃん? 主兄?」

「寧ろ、私がお姉ちゃん、もしくはお姉様と呼ばれたいような……」


 エイトたちもか。

 体は身動きがとれず、動けるのは口だけ。

 ……説得しか出来ない、か。


 ………………。

 ………………。


 頑張った。頑張って説明、説得した。

 解放されたので、誤解は解けた……と思う。


「呼ばれたくなったら、いつでも呼んであげるからね、明道お兄ちゃん」

「……常水に怒られるかもね、明道お兄ちゃん」


 天乃と水連が、からかうようにそう言ってくる。

 ……誤解は解けたんだよね?


 そう信じて、新たに目覚めた神造生命体ホムンクルスのところへ。


「……えっと、大丈夫? お兄ちゃん」

「ぐっ。……別の呼び方は出来ない?」

「う~ん……出来ないみたい。この設定は誰にも、それこそボクを造った神でもいじれないようにしているみたい」


 無駄な設定を。

 呼び方は諦めて、まずは俺を含めたこちらの紹介を行う。

 ついでに、これまでの事も簡単に。


「ちょっと可愛いかも」

「……妹が出来たみたい」

「強ければ問題ない」


 天乃、水連、シャインさんは特に問題ない。

 ドラーグさんは、大きな箱の方に興味があるようで、珍しそうに物色している。


「エイトです。よろしくお願いします」

「あたいの事は憶えてるか? ワンだ」

「私の次ですから、憶えていますよね? ツゥです」


 エイトたちもそれぞれ挨拶。

 ワンとツゥの事は、憶えているようだ。


 そうして挨拶を交わしていき、再び俺の前に。


「それじゃ、改めて。ボクは『対大魔王軍戦用殲滅系魔導兵器・特化型』。対応している属性は『土』。名は『スリー』。よろしくね、お兄ちゃん」

「うん。こちらこそよろしく」


 こうして、ドラーグさんに続いて新たな仲間が増えた。


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