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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第二章 竜とエルフ
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お元気で。また会う日まで

 早速、グロリアさんが用意してくれたペンと紙を借り、この場で親友たちへ向けて手紙を書く。

 ………………。

 ………………。

 何も思い付きません。

 あれ? おかしいな。

 これまでの状況とか、色々と伝えなきゃいけない事はあるんだけど、上手く文章で言い表せない。

 纏まらないといっても良い。


 これはアレだね。

 俺に文才はない、という事だね。


 思い返せば、小学生の頃に日記を書こうとして、次の日にはもう忘れてしまっていた。

 思い出しても、纏めて書けば良いと思って結局書かないで終わる。

 ………………。

 ………………。

 全てを伝えようとするのは止めておこう。

 そういうのは、会った時に口頭で説明すれば良いや。


 とりあえず、俺がこの世界に来た時の事と、頑張って生きている事に加えて、一緒に居るアドルさんたちの事と、DDとジースくんたち、シャインさんとグロリアさんの事を簡単に書いて、あとは激励の言葉くらいで……。


 ………………。

 ………………。


 よし、これで良いや。

 シンプル・イズ・ベスト!

 やっぱコレだね。うんうん。


 満足した俺は、手紙を封筒に……封筒がない!


 え? 素のままで渡すの、これ?

 それはなんか恥ずかしい。

 それに、誰が見るかわからないし。

 そもそも、親友たちは勇者として王国に居るのだ。

 ……検閲が入ってもおかしくない。

 という事は、確実に見られるよね? これ?


 ………………一気に恥ずかしくなってきた。

 両手で顔を覆って、指の隙間からチラッと手紙を確認する。

 ここはやっぱり暗号が無難ではないだろうか?

 でも、そんな難しい暗号なんか出来ない。


 これはアレか?

 本当に伝えたい事は、頭文字だけを抜粋すればわかるとか、たぬきの絵を描いて「た」を抜けばわかるようにするとか……。


 と、そこで気付く。

 日本語で書いてるな、これ。

 親友たち以外には読めないわ。


 大丈夫だと頷くと、グロリアさんが手を叩く。


「あっ、封筒を忘れていました。それに糊も」

「そういうのは早く思い出してよ!」


 書き上げた手紙を、グロリアさんから受け取った封筒に入れて糊付けしようとすると、セミナスさんから声がかかった。


⦅これであとは、竜たちです⦆


 DDやジースくんたちの事?

 あぁ、そういえば引き止めていたんだっけ。

 ……え? もしかして?


⦅はい。もう引き止めておく必要はありません。ですので、エルフと色気エルフの足として使います。竜たちに乗せていって貰うよう説得をお願いします⦆


 え? 乗せていって貰うの?

 でも、そう上手くいくかな?

 俺たちを乗せてくれたのも特例みたいなようなモノだし、大丈夫なの?


⦅問題ありません。こちらは竜たちの欲する情報を握っているのですから、それを使えば良いのです⦆


 あっ、そういう事ね。

 それならまぁ、大丈夫かな。

 ふふふ、悪くない案だよ、セミナスさん。

 ……お主も悪よのぅ。


⦅マスターへの好感度が上がりました⦆


 なんで! それで!

 もう上がる条件がわからないよ!


⦅そういう気分なので⦆


 気分次第かよっ!


 シャインさんとグロリアさんには、移動は竜っぽいです、と伝えたが、何故か信じてくれなかった。


     ◇


 準備が終わり、シャインさんとグロリアさんが、ビットル王国に向かう日の朝。

 DDとジースくんたちには既に話を通しているので問題ない。

 竜たちが送ってくれる事をシャインさんとグロリアさんに伝えると、かなり驚いていたが、その理由を教えると楽しそうな表情になった。

 ………………エルフ村にダンス文化が着実に根付きつつあるな。


 そして、村の広場に多くのエルフたちが見送りに集まっていた。

 シャインさんとグロリアさんに、一時の別れの挨拶をしているようだ。

 その割合は、意外と半々。

 そんな様子を見ながら、俺は隣に立つアドルさんへ声をかける。


「シャインさんって、思っていた以上に人気者だったんですね」

「そうだな。信じられない事に。だが、私がこれまで見た中でも最強のエルフだからな。憧憬を抱いている者が多いのは間違いない」

「………………ど、憧憬?」

「真実として受け止めろ。実際、なんだかんだと慕われているのだ……アレで……アレで?」


 アドルさんは、自分からそう言い出しておきながら、あれ? 間違った事言ってないよね? と困惑していた。

 このままだと自己不信に陥りそうに見えたので、別の話題を口にする。


「そういえば、エルフ最強ってわりには、シャインさんが弓を使っているところを見た事ないような……この世界のエルフは弓が得意じゃないとか?」

「いや、普通にそこいらのヤツ等よりも圧倒的に上手い。ただ、シャインの場合は、拳の方が性に合っているそうだ。別に不得意という訳ではなく、超一流の腕前なのだが……恐らく、弓術よりも拳術の方が、習熟度合いは上だろう」


 なんというか、余りにもシャインさんらしくて苦笑しか浮かばない。

 そうしてアドルさんと話していると、シャインさんとグロリアさんがこちらにやって来る。


「じゃあな、アキミチ」

「お世話になりました、シャインさん」


 シャインさんと握手を交わし、グロリアさんの方へ挨拶しようとすると、アドルさんが少し驚く。


「え? それだけなのか? 随分と仲良くしていたように見えたが……実際は違うのか?」

「いや、実際かなりお世話になりましたよ」

「あぁ、久し振りに楽しい日々だった」


 シャインさんと揃って、うんうんと頷く。


「なら、もう少しこう……挨拶の仕方というか」

「いや~その~……」

「まぁ、なんだ……」

「「また会いそうだから、この場は別に良いか、と」」


 全く同じ事を言い、俺とシャインさんは顔を見合わせて大きく笑い、ハイタッチを交わす。

 エルフの中で誰と一番仲が良いかと問われたら、間違いなくシャインさんだろう。

 うんうん。

 もちろん、グロリアさんとの仲も良好です。


「それじゃ、グロリアさん。お元気で。また必ず会いましょう」

「ふふ。やっぱり母とアキミチさんとの相性は抜群ですね。はい。是非とも、また会って下さい」


 グロリアさんと握手を交わしていると、シャインさんが俺とアドルさんの後ろを不思議そうに見ながら尋ねる。


「アキミチとアドルたちも旅立つのか?」


 その言葉が示すように、俺たちと後ろには旅に必要な荷物が置かれていた。


「そう。これでも色々忙しいんだよ! 予定がつまりまくっているから!」

「訓練以外では、結構だらけていたように見えたが」


 ジト目を向けられたので、サッと逸らす。


「……まぁ、何をするにしても、死なない程度にしっかりとやれよ! 助けが欲しけりゃ、いつでも呼べ」


 シャインさんに背中を叩かれる。

 激励のつもりだろうけど普通に痛い。


「え? シャインさんが普通に励ますとか怖いんですけど?」

「ほぅ。まだまだ訓練が足りないようだな。今は時間がないが、次会った時はもっと厳しくしても問題なさそうだ」


 問題大有りだと思います!

 しかし、撤回は出来なかった。


 ちなみに、インジャオさんとウルルさんは、細々とした足りない物の手に入れるために、エルフの村を駆けずり回っている。

 でもまぁ、きっと今頃、デートと洒落込んでいる事だろう。

 ……チッ。

 ちゃんと手に入れてきてくれれば、俺もアドルさんも文句はない。


 アドルさんに背中を撫でて貰っていると、DDとジースくんたちが空から舞い降りた。


「今度こそ、ではな! アキミチよ! アドルたちも達者でな!」

「あっ、はい。ここまでありがとうございました!」

「こちらこそありがとうございます。DD様たちもお元気で」

「うむ!」


 満足そうにしているDDに、もう一声かける。


「それと、詩夕たちの事、くれぐれも宜しくお願いします!」

「任せておけ! 異世界のダンスを習わないといけないからな。可能な限りは私も協力しよう!」


 そう言いつつ、DDは見るからにそわそわしていた。

 ……待ちきれないんだろうなぁ。

 それか、竜でも緊張するのかもしれない。


 ジースくんとは既に絆が出来ているので互いに、またな! と手を振っただけで終わる。

 ……問題なのは他の竜たちだ。


 何故か、グロリアさんの前で横一列に整列し、自分の背中を見せ付けている。

 乗ってくかい? ……と指差して、漢の顔を浮かべていた。

 ………………なんだろう。

 何故か、竜たちの気持ちが理解出来た。


 きっと、女性を自分の背中に乗せたいんだろう。

 シャインさんじゃなく、グロリアさんを選ぶあたり、危機回避能力はありそうだ。

 間違いなく、シャインさんを乗せたら「飛ばせ! もっと飛ばせ! 風だ! 嵐だ! その身を一体化しろ!」と無茶な要求をされそうだし。


 そのシャインさんは、既にDDの背に乗っていた。

 行動が速い!

 すると、グロリアさんも。


「やっぱり、私も母と一緒に乗りたいのですが、駄目でしょうか?」

「特別に乗せてやる。早くしろ」


 DDが急かして自分の背に乗せる。

 背中を見せていた竜たちは、肩を落として大きく消沈していた。

 ………………う、うん。

 俺は音楽をやっている時の君たちは格好良いと思うよ、うん。

 ファイト! と心の中だけで応援しておく。


 そうしている間にDDが先行して空へと上がり、ジースくん、竜たちと続いていく。

 DDの背からシャインさんとグロリアさんが、こちらに向けて手を振っているのが見えたので、こちらも振り返す。

 姿が見えなくなるまで続けた。

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