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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第十一章 竜の住み処と世界樹
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気が付くと状況が変わっていたという事がある

 関連、あった。

 色々話をしている内に判明した。


 まず、骨竜さんにはきちんと名前がありました。

「ドラーグ」さん。


 そのドラーグさんの話によると、なんでも基本的に竜たちには個別の名がないらしい。

 名がなくても気にしないそうだ。

 相手を呼ぶ時は、おい! とか、そこの! みたいな感じらしい。


 ……確かに、思い返してみると、DDとジースくん以外の竜たちに名はなかったな。

 それに、DDは通称みたいなもんだし、ジースくんだって元々は名がなくて、俺が名付けたようなモノだ。


 なくても不便ではなかったのだろうと思う。

 けれど、目の前のドラーグさんには名前がある、と。


「……どういう事? 特別って事ですか?」

「王になった者は、他とは違うという意味も含めて、自ら名付けて名乗るようになるのだ」


 王だけは違う、という区別化を図った訳か。


 ………………。

 ………………。


 つまり、ドラーグさんは竜の王様って事?

 ……交代お願いします、と皆の方を見ると、おかまいなく、と視線で返される。

 いや、シャインさんだけは、ん? 出番か? とこっちに来ようとしたので、皆に押しとどめておいてもらった。


「その視線だけで会話する感じ……」


 しまった!

 王様かもしれないドラーグさんの逆鱗に触れて――。


「良いのぉ……その視線だけで会話する感じ……ワシもそれやりたい。やれる相手が欲しい」


 なんか羨ましがられているような気がした。

 いや、やりたいと言われても……そういう相手が欲しいと言われても……困る。

 上の竜の住処にたくさん居ませんかね?


 なので、別の事を尋ねる……というか、こういうのには時間をかけない主義なので、直球で。


「それじゃあ、ドラーグ……さん? 様? は、竜の王様って事ですか?」

「さん付けで構わんよ。どれくらい年月が経ったかは知らんが、地上に居た頃はそうであったというだけだからの。既に新たな竜王が何代も続いておるだろうし。だから、言葉遣いも気にせん」


 元だけど王様確定、と。

 確かに今は、DDの奥さんの女王竜らしいけど、それよりも前の竜王である事はわかった。


「でも、その……なんで竜の王様がこんなところに? それに、その姿はなんだったそんな事に?」

「これか? ここには元々傷の療養で来ておったのだが……」


 ドラーグさんの話によると、なんでもこの部屋の奥に温泉があるそうで、過去に受けた傷を癒すために常駐していたそうだ。


 温泉! と反応する。

 俺だけじゃなく、天乃と水連も。

 しかし、世の中そんな都合よくは出来ていない。


 奥にあるという温泉なのだが……およそ人の身で入れるような温度じゃなかった。

 近付くのすら躊躇うような超高温である。


「これぐらい熱くないと、熱さを感じなくての。肩こりや神経痛によく効くぞ」


 いや、効能を説明されても入れないから。


 それとわかった事は、ドラーグさんの言う過去っていうのが、相当前っぽいという事である。

 少なくとも、前回魔王と戦った戦争よりも前は確定で、シャインさんが言うには、自分が生まれるよりも前、らしい。


 ……そうなってくると。


「なんだ?」


 シャインさんっていくつ? と、自然と目が向いてしまう。

 俺だけじゃなく、天乃、水連、エイトたちも。


「何か聞きたそうだな?」


 シャインさんが酷薄な笑みを浮かべるので、一斉に視線を逸らした。

 ……あっ、ドラーグさんも視線を逸らしている。


 と思ったら、ドラーグさんがこそっと話しかけてきた。


「なんなの、あの娘。すっごい怖いんだけど。なんか怖くて、思わず目を逸らしちゃったんだけど」


 いや、元竜王がビビるって。

 ちょっと呆れた感じで見ていると、ドラーグさんが焦る。


「い、いや、ほら、ここしばらくワシだけだったから!」


 コミュニケーション不足期間が長過ぎて、口下手になった感じだろうか?


「でもそういう事であれば、外に出てしまえば……あっ、まだ傷が治っていないとか?」

「いや、傷は治っておる……というか、既に傷を負うような箇所はない」


 まぁ、全身骨だもんね。

 寧ろ、今はインジャオさんと同じく、骨が折れないかどうかを気にしていると思う。

 ……かなり堅そうな骨なので、中々折れないとは思うけど。


 あとで、インジャオさんの相談とかに乗ってくれないだろうか?


「それと、外に出る事は出来ん」

「え? 出てないんですか?」

「うむ。傷が治るまで寝ていたのだが、それがいけなかった。いつの間にかワシを主としたダンジョンが形成されていたのじゃ」


 うん。意味がわからない。

 寝ていたらダンジョンが出来ていたとか、どういう事?


 でも、複雑な仕組みを考える必要はないかもしれない。

 だってここは異世界。

 そういう世界だっていう認識で充分だろう。


⦅説明しましょうか?⦆


 いえ、大丈夫ですよ。セミナスさん。

 どうせアレでしょ?


 寝ていた時に魔力垂れ流しで、その魔力に反応して地形が変わり、ダンジョンになったとかでしょ?


⦅大方当たっています。あとは、膨大な竜の魔力であった事と、数百年単位の時間が経過している事が大きく関わっています⦆


 なんだろう。

 竜って部分には納得出来るけど、数百年単位ってのがピンとこない。

 規模がでか過ぎて、ちょっと。


 けど、コミュニケーション不足には納得。


「……となると、話の内容から察するに、ダンジョンの主だから出られない?」


 その通りだと、ドラーグさんが頷く。


「うむ。色々脱出を試みたが駄目であった。どうやら、一種の共生関係のようになっていてな。ワシが居るからダンジョンが存在し、ダンジョンが存在している限り、ワシも死なん。いや、殺されれば死ぬか? そこは試した事がないからわからんが、少なくとも寿命では死なん。だからこうなっておるのだし」


 ドラーグさんがマントを広げ、骨だけの体を俺に見せつけてくる。

 リアクションに困るからやめて欲しい。


 長らく話していないからか、コミュニケーション不足を感じさせる行動だ。

 ただ、外に出たいんだろうなぁ……という思いは、なんとなく伝わってきた。


「……やはり、ここから出るにはやられて、死んでからになるのだろうか? ……いや、逆にこの場で消滅するかもしれん」

「それは最終手段でお願いしたい」

「だが、ワシが出るとこのダンジョンも壊れてしまうかもしれん。ここまで共に居ると愛着が……」

「出たいのか出たくないのか、決めて欲しいのですが?」

「しかし、こうして誰かと話すと……余計に外に出たくなるの。陽の光を全身で浴びたい」

「その体で陽の光を浴びて効果があるのだろうか?」

「あっ、竜は今も生存しとるか?」

「あっ、生存してますよ」


 このダンジョンの上で。


 こうして話していると、なんとなく悪い骨竜ではない事がわかる。

 セミナスさんが警鐘を鳴らさないのがその証拠だ。


 となると……どうにか外に出してあげられないかな? セミナスさん。


⦅出来ますが?⦆


 そうだよね。

 さすがのセミナスさんでも、なんか理っぽいのを変える事は………………出来るの?


⦅はい。出来ます⦆


 ……さすがですね。


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