いつもの流れってのがあるから
扉の前で話すのは迷惑だったようなので、扉を開けて中に入る。
開けた先にあったのは、謁見の間のような造りの部屋。
ただ、その造りは荘厳で、どこか神聖性を感じさせる。
あと、全体的に置かれている物とかがでっかい……それに、広い。
こういう時、いつも思うんだけど……大抵、というか、もう必ずと言ってよいほど、埃一つないよね?
掃除とか、どうしているのだろうか?
誰かがやっているのか……それとも、主が自らやっているのか……。
出来れば、主がやっていて欲しい。
なんか親近感を抱くから。
……でも、親近感を抱いてしまうと、逆に倒しづらくなるかもしれない。
やっぱり、誰かがやっている説を推しておこう。
うんうんと頷きながら、先ほど声をかけてきたであろう存在を見る。
部屋のサイズに合わせて、巨大だった。
いや、巨大なサイズに合わせて、この部屋が造られたのかもしれない。
扉を開けた時は、奥にある玉座に戻るところだった。
わざわざ聞こえるように扉の前まで来てくれたんだろう。
……良い人かもしれない。
いや、人ではないかもしれない。
ローブというか、マントのようなモノを羽織っているのでなんというか、人体でいうところの肩甲骨辺りが不自然に盛り上がっている。
人ではない可能性に、自然とごくりと喉が鳴る。
天乃と水連も、俺と同じように緊張していた。
エイトたちとシャインさんにそういった様子は見られないので、頼もしさを感じる。
それに、シャインさんなら勝てる、とセミナスさんが言っていたので、幾分か冷静になれる要素もあった。
大きく深呼吸して、改めて相手を確認。
玉座に腰を下ろし、こちらを見ていた。
それは……竜。巨大な竜。
ただし、全身が骨だけの竜。
ボーンドラゴン……ドラゴンボーンとでも呼べば良いのだろうか?
そんな骨だけの巨大な竜が、器用に玉座に腰かけていた。
王冠はないけど王様っぽいから、ローブじゃなくてマントだろうな。
そう見える一因に、玉座の傍らには、巨大な紫色に輝く宝石を中心に、いくつもの宝石を散りばめた杖が置かれている。
「さて……折角ここまで来たのだから、色々と話を聞きたいが……その前に一つだけ言っておこう」
インジャオさんと同じく、どうやって喋っているのかよくわからない。
ただ、その巨大さ故か、腹に響く重低音で、どこか威厳を感じさせる。
「……そんなに話好きなら、ワシを混ぜてくれても良いんだからね。こう見えても、長く生きている分、それなりの数の話題持ちなんだから」
『………………』
………………。
「集合」
集まったのは、エイトたちだけだった。
どうやら、天乃、水連、シャインさんはこの事態に付いていけていない。
「集合」
もう少し大きい声を上げて、三人を呼ぶ。
困惑しながらも三人が集まったので、円陣を組む。
「なんか言われる通りに円陣を組んだけど……あれに対応しなくていいの?」
天乃が不安そうに尋ねてきた。
多分、大丈夫じゃないかな?
念のため、確認する。
「すみませ~ん! ちょっと話し合いたいので、ちょっと待ってもらっても良いですか?」
「いいけど……なるべく早くでお願いしたい。この状況で待たされると……のけ者にされているようでの……」
「あっ、大丈夫。そういうんじゃなくて……ほんと、直ぐ終わるから」
巨大な存在からの許可はもらった。
「これで大丈夫」
「えっと……なんか慣れてない?」
「え? この世界ってこんな感じでしょ?」
「「え?」」
天乃と水連から驚きの声が漏れる。
「え? 違うの? 大体いつもこんな感じだったけど?」
「……まぁ、明道だから、ね」
「……こんな感じになる訳ね」
なんかよくわからないけど、天乃と水連は納得してくれたようなので何より。
あとはシャインさんだけど……。
「……とりあえず、殴って黙らせれば良いのか?」
「うん。違う」
シャインさんなら勝てるらしいけど、今はそうじゃない。
「まずは話し合いからです」
「まどろっこしい」
「なんでも直ぐ戦いに持ち込もうとしないでください」
「こういう時は、まずは話し合いからなんで」
まぁまぁ、とシャインさんを宥める。
いざって時の切り札ですよ、と伝える事も忘れない。
エイトたちは……まぁ、慣れたモノだ。
お任せします。と笑みを浮かべて俺を見るだけ。
そこについては一言。
「いや、別に俺じゃなくても良いと思うけど?」
「いいえ。ああいう方を相手した場合、ご主人様に敵うモノは存在しません」
「あたいたちでも構わないかもしれない。でもな、確実性が段違いだ。主に任せるのが一番」
「アキミチ様にしか出来ない事なのです」
「そ、そう?」
いやぁ~、なんていうか、ここまで言われると仕方ないよね。
円陣から抜け出し、骨竜さんの近くに向かう。
「えっと……頑張って?」
「……応援してる?」
天乃と水連から応援されたので、拳を上げる。
……あれ? 今、語尾が変じゃなかった?
……いや、気のせいか。
「殴りたくなったらいつでも呼べ! 殴ってやる!」
シャインさん。
えっと、聞こえていると思うので、そういう事を大声で言うのはやめようか。
なんかちょっと、骨竜さんもビクついているように見えたからさ。
そうして、骨竜さんと相対する。
「ど、どうも。話し合いの時間をいただき、ありがとうございます」
「いやいや、誰かが来るなど久しいからの。こんな僅かな時間くらいなら待てる。どうって事はない。ただ、お主、ワシのこんな姿を見ても臆さないのだな」
まぁ、全身骨なのはインジャオさんで慣れているので。
……ただ、重低音が強過ぎて逆にキツイ。
お腹に響き過ぎるというか。
そう思っていると、それが伝わったのか、骨竜さんが反応する。
「どこか苦しそう……おお! すまんすまん! このサイズ差だと届く声量が違い過ぎるか。どれ、少し待っておれ」
骨竜さんが杖を持ってゴニョゴニョ言ったかと思うと、ぺかーっ! と光る。
すると、杖ともども骨竜さんがどんどん小さくなっていき、大体俺の倍くらいのサイズになった。
「これで大丈夫か?」
「あっ、はい。大丈夫です」
なるほど。なんでもあり系の存在か。
「それで、えっと……あなたがこのダンジョンの主って事で良いんですか?」
「ふむ……まぁ、そういう事になるか?」
なんか疑問形で答えられたように見える。
何やら事情がありそうだけど……そもそも気になるのは、相手が骨竜だという事。
DDの話によると、元々あったダンジョンの上に竜の住処が出来た。
で、その元々あったダンジョンの主が、骨竜さん。
……上の竜の住処と、絶対関係あるよね、これ。




