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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第十一章 竜の住み処と世界樹
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誰にだって苦手なモノはあるはず

 ダンジョン内を問題なく進む。

 ……なのだが、一回も階段を上り下りしていないのが気になる。


⦅ここは最下層ですので⦆


 どうやら、元々最下層だったようだ。

 というか、いきなり最下層に着くような罠ってどうなんだろう?

 ラッキー……なのかな?


 もしくは、ここの主が横着で、なんらかの用事で外に出た際、最下層に戻るのが面倒で……いや、そんな訳ないか。

 行き来可能な技を持っているはずだ。多分。


 それにしても、いきなり最下層に着くって事は、魔物の強さとか罠の質とか色々増しているだろうし、それらに対応出来る力がないと、一気に破滅してもおかしくない。

 ……やっぱり危険な罠って事か。


 俺の場合は、一緒に行動してくれる人たちの強さが、そういう枠を超えているから大丈夫なだけ。

 本来なら、もっと厳しいダンジョン……のはず。


 何しろ竜の住処のお膝元な訳だし、ラストダンジョン……いや、裏ダンジョン的な位置付けであってもおかしくない。

 そんな事を考えている目的の場所っぽいところに辿り着いた。


 禍々しいが、どこか荘厳な造りの巨大な門。


「この先に、ここの主が……」


 天乃が、ごくり……と喉を鳴らして、俺の服を掴んでくる。

 その表情は、どこか不安そうだ。


 考えてみれば、今ここにはいつも天乃と一緒に居た刀璃が居ない。

 詩夕、常水、咲穂だけじゃなく、今は樹さんもそうだ。

 きっと、心細いんだろう。


「大丈夫だよ、天乃。こう見えて、俺だってこれまで色々経験してきているんだ。頼りにしてくれて構わないよ」

「ありが」

「……騙されちゃ駄目だよ、明道。天乃のそれは怯えているフリだから」


 水連が見た目からは想像出来ないような強い力で、俺と天乃を引き離す。


「え? フリ?」

「水連! 何も今バラさなくても!」

「……駄目。今の行いは抜け駆けに該当する」


 エイトたちは水連の味方なのか、うんうんと頷いていた。

 ……えっと、なんか事態に付いていけないんだけど。

 どういう事か、誰か説明を……。


「……よく考えて、明道。天乃は、こんな事で臆するような女性だった?」

「………………まぁ、どちらかといえば、俺たちの中で一番度胸があったような気がする。お化け屋敷とか全然物怖じしなかったはず。寧ろ、そういう類は詩夕の方が苦」

「そ、そんな事ないよ! 私にだって苦手なモノはあるから!」


 天乃が必死に弁明する。

 でも、天乃に苦手なモノあったっけ?

 食べ物に好き嫌いはなかったと思うし、皆が苦手な黒い物体も、怯える前にコロスと、黒即斬だったし……。


 何かあったかな? と考えていると、水連が天乃に尋ねる。


「……たとえば?」

「た、たとえば? ………………饅頭怖い?」


 真剣に悩んだ天乃がそう答える。

 それ、逆に好きってヤツだよね。


「ちょっと待って! 時間を……そう、考える時間をちょうだい!」


 多分、答えは出ないような気がする。

 そこに、エイトが助け舟を出した。


「ゴーストなどはどうでしょうか?」


 一体何を? と思ったが、直ぐ気付く。

 なるほど。

 この世界だと幽霊は見る事も出来るし、確かなモノとして存在している。


 怖がってもおかしくない。


「ゴースト……幽霊……見えても直接触れないんじゃ……別に怖くないかな」


 ……そうくるか。

 次は、ワン。


「なら、ゴブリンとかオークとかはどうだ?」


 なるほど。物語とかでよく語られる、女性の敵イメージが強い魔物か。


「う~ん……黒いのと一緒で、即殺せば問題ない、かな」


 腕を組んで少しだけ考えた天乃は、そう答える。

 そこと一緒のカテゴリーなのか。


 次は、ツゥ。


「虫系統はいかがですか?」


 ツゥの問いかけで思い出すのは、この世界に来た当初の出来事。

 人サイズのバッタの魔物……怖い。


 脳裏に思い出される出来事に……自然と俺は自分で自分を抱き締める。


「んん~……別に? 特に嫌悪感はないかな。食べろと言われても食べれるだろうし。あっ、もちろん、きちんと調理したモノだけだけど……明道どうしたの?」

「いえ、なんでもないです」


 俺はどうだろうか?

 試した事ないからわからん。

 いけそうな気もするし……いけなそうな気もするし……。

 その時が来ないとわからないな。


「でも、このままだと、天乃に苦手なモノはないって事になるな」

「そ、そんな事ないから! あ、あるから! 苦手なモノがあるか弱い女の子だから! ちょっと待って! 捻り出すから!」


 捻り出そうとする時点で、それはないって事と同義だと思うんだけど。

 天乃が真剣に悩み始める。


「……水連は、確か大きい音が苦手だったよね?」

「……そう。憶えてて嬉しい」


 水連に確認すると、ニッコリと微笑みが返ってきた。

 映画館とか特にだけど、偶にボリューム調節間違えてない? みたいな大音量になった時、水連がビクッと逆立つような反応をしていたのを思い出す。


 同じような理由で、雷が苦手なのも思い出した。

 天乃は同じような状況の時……普通だったな。


 少し昔を懐かしんでいると、ワンが恥ずかしそうに言う。


「そういう事なら、あたいはその……虫がちょっと。いや、平気っちゃ平気だが……その、知らぬ内にくっついていて、それに気付いた時なんかに、な」

「あぁ……」


 思わず「キャー」って可愛らしい悲鳴を上げちゃうんですね。

 わかります……と言いたいけど、なんだろう。

 ここでわかってしまうと、エイトたちを造った神様たちと同じ趣向になってしまうような感じがして、なんか嫌だ。


 次いで、ツゥ。


「私は、頑強過ぎる方はちょっと……偶に居るんですよね。何を施しても折れない方が」


 頬に手を当てながらそう言う。

 えっと、それはもしかしてだけど、体じゃなくて精神の話かな?

 もしそうなら、ちょっと背筋が寒くなるんだけど。


 ただ、この話に、天乃、エイト、シャインさんの三人は加わる事が出来なかった。


 天乃は……先ほどから考え中。

 未だ見つかっていない。


 エイトは……ピンと来ていない感じ。

 ……なんとなくわかる。


 シャインさんは……意味がわからないと首を傾げていた。

 そもそもシャインさんを怖がらせるような出来事なんてあるんだろうか?


 まぁ、この三人はね……と思っていると、その三人から声がかけられる。


「もうちょっと待って! 出てくるから! きっと出てくるから!」


 天乃はもう諦めた方が良いと思うよ?


「ここはやはり、メイドという事で、エイトは駄目駄目なご主人様と言っておきます」


 ……遠回しに俺の事を言っている訳じゃないよね?


「なるほど。そういう話か。なら私は……殴れないヤツかな」


 いや、シャインさんはさっき幽体も殴っていましたよね?


 そうしてワイワイ話していると、扉の向こう側から声がかけられる。


「あの~……扉の前で長々と話されると、逆に気になるんじゃが?」

「あっ、なんかすみません」


 謝って、中に入る。


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